かの<超級>との邂逅から、およそ2日。
ゲーム内では5日が経とうとした、天気のいい日。
「…………」
もう3度目にもなる車窓から覗く景色は、今までとは打って変わって砂一色。
見渡せど砂ばかりの大地で、燦々と太陽の照りつける下を、僕たちはまあまあな速度で移動していた。
「いやー、セーブポイントどころか空調までバッチリとか、至れり尽くせり過ぎません?」
ホクホク顔でシートに身を預けるのはシエンさん。
ぐぐぐ、と伸びをして、ゆったりと寛いでいる。
「まあ、あいつは金だけはあるようなので」
「ホントにね。はー、どんだけ儲かってるんだか」
どことなく落ち着きがないのはミスティさん。
「どれもこれもお高そうで、なんか落ち着かないし……」
そう言いながら振り返った先には、いびきを立てて寝ている灰流さん。長椅子型であるシートの1つを大胆に使っている。
それをしばらく眺め、戻ってきた顔は死ぬほど呆れていた。
「あのバカが羨ましいわ」
「あはは……」
苦笑いを返すのはシアさん。
しかし、どことなく楽しそうだった。
◆
何故、車両内に知り合いが勢揃いしているのか。
それを話すには、少し遡る必要がある。
具体的には邂逅の日まで遡り……その日の日没後、言伝を伝えにあいつの所へ赴いた辺りまでだ。
「──何ともまあ、災難でしたね」
「本当にな。全く……お前は何を仕出かしたんだよ」
「まあ、あの女狐とは互いに嫌い合う仲ってだけです」
「質問の答えになってないな」
「答えると思います?」
「全く思わん。はあ……」
自らの恥とか弱みについて、こいつは滅法語らない。
たまたまこちらが知った場合については苦々しく話すし、余程の場合であれば相談もしてくるので、信頼されていない訳では無いのだろうが。
そして今回はこちらもさわりしか知らず、話さない辺りあまり重篤でも無かったのだろう。
なら深堀りすることもあるまい。
「それはそうと、こっちも少し、そちらに用事があるんですよ」
「手短に頼む」
「はいはい……アレクシアさん、【信徒】のレベルは、今幾つですかい?」
「今は……48、ですね」
はあ、あの時自爆せずにいればそのまま上がりきっていただろうに。
「それはそれは。となると、もうすぐ新しいジョブを取りに行く頃合いですね」
「そうなんです。だから次は、【僧侶】にしてみようと思ってます」
「それはまた、信仰の深いことで」
「ここまで来たら、全部そういったものにしたくて」
【僧侶】とは、大陸東側における【司祭】の相互互換職。
回復魔法に秀でた【司祭】とは異なり、浄化や除霊、解呪に秀でている。
要するに寺生まれのTさんである。
「となると、国外に出る必要がありますよね?」
「そう、なんですよね……」
そして相互互換というのは比喩ではない。
西方では【司祭】に、東方では【僧侶】に就けるが、その逆は不可能。
例外的に、その中間に位置するカルディナという国ではどちらとも就けるが、そこもまた国外。
現状では渡航して就きに行く他にないのだ。
「そこでお二方に!」
……おっと、いつものだな?
「ちょうどいいお使いがあるんですが……どうです?」
◆
そして、シアさんが二つ返事で了解したのもいつも通りである。
流石に心配になるぞ、僕だったらもう少しはゴネる。
受けるのは変わらんが。
して。
ミスティさんと灰流さんはマルクスの伝手で。
シエンさんはいつぞやのお詫びに。
それぞれを小旅行がてら、ご招待することとなったのだ。
その途中でシエンさんにも小説家と知られてしまったが、別段問題はない。以前と変わり無く接してくれて、ありがたい限りだ。
何より戦力としても3人は心強いし、不慮の何かがあったとしても対応しやすい。
マルクス主導なせいで、何が起こるかはわからないものの、何かが起こる可能性は多分にあるのだ。
「──ので、まあ気をつけて行きましょう」
そう説明した所、起きている面々から返ってきたのは沈黙である。
「……なんでそんなのと付き合ってんのよアンタ……」
「友達選びは考えたほうがいいとされてますよ?」
そして口を開けばこの始末。
まあロクデナシなのはそうだ。しかしそれ以上の利があるし、何より一緒にいて楽しい。
別段忌避するような奴じゃ無いと思うんだがなあ…………僕が麻痺してるだけか。
「まあでも、それ以上に人付き合いが良いんでしょうね。何気に商人の身で準<超級>2人も従えてますし」
「あー、そうね。<千変万化>と<葬儀屋>だっけ?」
「そうなんですね」
何気に初耳だ。
「知らないの? <千変万化>のジェーン・ドウ」
「……ああ、秘書さんか」
「秘書までやってんのあの人!? 凄いわね……」
「生産も戦闘も出来るって時点で器用貧乏っぽいですけど、いざ戦うとなると面倒臭いでしょう」
となると、あの銃も手製だったのだろうか?
多芸とは聞いていたが凄いものだ。
「んで、そんでもって<葬儀屋>ですよ。かの<屍財工務店>を支える屋台骨。名前をオルワン・ロー・シーリング」
「…………ん?」
「あ、ご存知でした? 流石にこっちは知ってますか」
違う。
オルワン・ロー・シーリング。
総一郎のフルネームは、鳴海総一郎という。
……
「……ローの部分もっとなんかあっただろ……」
「へ?」
「いや、何でもありません」
中々ロマンのあることをしているのは認めてやろう。
さて、いつその姿を見せてくれるのやら。
今後の楽しみが少し増えたな。
総一郎は経営面で天賦の才があります
交渉も一手に担えるぐらいに話術にも長け
ぎりぎりではありますが条件付きでかの魔王から
一部商品を店で販売する権利を貸し与えられています