何か、バーが色づきました
本当に、本当にありがとうございます
夜通し掛けて竜車は進む。
僕らからすれば十二分に速いのだが、空調の諸々や駆動関係の都合で普通のものよりはかなり遅いらしい。
まあ機関士さんが申し訳なさそうだったので、とやかくいうことも無かろう。
それはさておき。
走行時間が延びれば、その分フィールドへ居座る時間も延びる。
そしてフィールドに居座る時間が伸びると──
「《ウインド・シアー》」
──会敵する回数も、その分増えるのだ。
傷だらけになった【サンドドラグワーム】が、轟音を立てながら地に伏せ、距離が勢いよく離れていく。
遠くで巨体が光の粒子になる姿は、砂地の夜景に映えて美しい。
「まあ、こんなもんよね」
「お疲れ様ですっ。はい、温かい飲み物を!」
「ありがとう、シアちゃん」
日も暮れ気温の下がった砂漠地帯であるが、敵は昼夜を問わず襲い来る。
かといって停車の暇はないので、ドロップ品はそのまま。
ついでに言えば、対処出来るのは遠距離攻撃手段持ちに限られる。
その為、ミスティさんとシエンさんにローテーションで対処して頂くことになった。
かたや【翠風術師】、かたや【投擲王】。どちらも手練れで、心強さはピカイチだろう。
そしてそのサポートをするのが、僕とシアさん。
ポーションを適宜渡し、あるいは回復し、その力を全力で発揮出来る下地を整える。
灰流さんは休みだが、仕事が繁忙期らしく、度々ログアウトしているため仕方ないだろう。
「……流石に冷えるわね」
「そうですね」
車両の上には、こうして乗り上がって対処出来るようなスペースが設けられている。
結界によって風も避けられてはいるが、気温ばかりはどうしようもない。
「サハラにぶん投げられた事があるんですが、大体同じでした」
「さは、え、よく生きてるわね……!?」
「丈夫なもので」
「丈夫どうこうの話なの……?」
ああ、大学の頃が懐かしい。
本当にあの頃はあいつの無茶振り全盛期で、色んな所に連れて行かれた。
「さはら、って何ですか?」
「ここみたいに、かなり目印の少ない、広い砂漠です。そして──」
「──迷うと死ぬ、ですね。がんじす川とおんなじで」
「もう読まれてるじゃないの……え、ガンジス? 泳いだの?」
「酔わされ乗せられ飛び込みました」
「それもう他殺未遂で良いんじゃないかしら」
「生きてますし、あいつも引きずり込みましたので」
「……逞しいわね全く」
◆
■
「ねぇねぇキャンディちゃ〜ん(*´∀`*)」
「……何か用あるのネ? 無いならブッ殺す」
「無理じゃん(;^ω^)」
「でもざんねん、今回はあるんだよ(⌒▽⌒)」
「あらら。珍しいのネ」
「あのさ、ぼくさ、ケンカ売られちゃったんだヽ(`Д´)ノ」
「……で?」
「一緒に殺し行かない?(`・ω・´)」
「行く理由が無いのネ」
「だよね、知ってる(´・ω・`)」
「じゃ、行ってきま〜す(^_^)v」
「もう二度と来るんじゃ無いのネー」
「……あれほぼ用事ないのと一緒じゃないのネ?」
■
◆
今のところ、アクシデントは何もない。
「ミスティのヤツから聞いたが……今回は流石にないんじゃねぇか?」
「そうですかね」
水を飲みながら灰流さんと駄弁る。
尚灰流さんは酒だ。曰く笊であるらしい、羨ましい。
今回の旅も、前の時も、こうして話す機会は多い。
年上だが28とまあまあ近く、結構話も合うのだ。
……余計に前回フレンド登録し忘れてたのが悔やまれる。
「だってよ、そうなるのはお前とマルクスのおっさんが遊ぶ時だろ? なら他人がいる時はそうそう起こらねぇハズだ」
「初めてご一緒した時のことを思い出して下さい」
「ありゃ不可抗力だろ。どれくらい成長してるか調べに行くって話で、観測自体も時間が空いてたしな」
「……それはそうなんですけどね」
実際あれはガチアクシデントであったと、本人の口からも伝わっている。
毎度毎度ああでないのはありがたいが、本当に違うのかどうかだけは教えて欲しい。毎回。
「明言されないのがきついんですよねえ……」
「ハハハッ、やっぱ友達選んだほうが良いんじゃねぇか?」
「いや、選んだ末ですよ」
「世も末かよ」
「……あ、すいませーん」
通路側を見ればシエンさんが居た。
「ボクもご一緒しても?」
「お、飲める口か?」
「いえ、まだ19なんで。雰囲気だけでも」
「おおぅ……何か飲めるヤツ少ねぇな」
「ま、その分沢山飲めると思えば」
「それはそうなんだがなぁ……」
やはり1人のみの呑みは淋しいのか、少ししょぼくれている。
……仕方ない、一肌脱ごう。
一応酒は好きなのだ。弱いだけで。
◆
……頭が痛い。
昨晩は……ええと、確か……ああ?
ああ、灰流さんの呑みに付き合うべく、一肌脱いで……そこから飛んで今だ。
飛んだ期間に何があったのか判らん。判っていればここまで困惑してもいない。
目を覚ました場所は寝台車両の一室。客車部分と連結されていた筈の場所。
となると移動はあまりしていない……のか?
「……ん、ぅ……」
ふと、隣から甘い声が聞こえて固まる。
服は……着ている。下も同様に。よし。良くない。
横を見る。
幸せそうな寝顔を浮かべたシアさんが居た。
「……たか……しゃ……ん……」
“たか”って誰だよ。
……多分僕だよ。知ってるよ。
こういうのってお約束だと思うんですよ
面白いかどうかはさておく
私は楽しかった