系統樹に触れた物書きの話   作:ヘッドカノン

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13:くそやろう

 

 

 乱雑に扉が叩かれる。チャイムまで鳴った。

 

『おい! 蒼介っ! 居るんだろ!?』

 

 玄関先からのくぐもった声。

 鍵は開いていた筈だし、チェーンも外してある。

 勝手に入りたければ入ればいい。

 

 バタバタという足音がこちらに来る。

 

「──おい! 何があった!? 竜車の信号が途切……れ……」

「…………ああ、おまえか」

「強盗か?」

「じぶんで、やった」

「マジで何があったんだよ!?」

 

 荒れに荒れた部屋を見て、総一郎が慌てふためく。

 そんな姿は久しぶりで、ちょっとだけ笑えた。

 

 ◆

 

「何が、あった。呼ばれて来て見たら全部が全部意味わかんないんですけど?」

 

 多少体裁を取り戻したリビングルームで、ダイニングテーブル越しに問い詰められる。

 

「……しんだ」

「は?」

「しあさんが、しんだ」

「……何で?」

「すぺりおるが、きた」

「……超……ああ、クソ。アイツか……」

 

 心当たりがあったようで、吐き捨てるように宣う総一郎。

 目を向ける。

 

「おまえの、さしがね、か?」

「違う! 昔の得意先。気づいたら犯罪やってて、敵意も向けられてる。身に覚えは全くないの!」

 

 確かにあれは総一郎……マルクスを探していた。

 何の因縁かはさておき、そのとばっちりであったらしい。

 最悪だ。もっと直接的な因があるなら、もう少し楽だったのに。

 ……そう友人思っている時点で、中々に僕は終わっているらしい。今更か。

 

「なら、いい」

「良かないだろ……お前はともかく、俺は大損害なんだからな? 利益金もどうなったか判ったもんじゃない。最悪ケージの奴に持ってかれてる場合もある」

「……けー、じ?」

「ああ? 知らねぇのか……お前が戦っただろうヤツ。ツギハギで似合わねぇツインテな地雷系女子!」

「ああ……なら、たおした」

「…………マ?」

「さしちがえた、しあさんが……しあさんがしんだ」

「あー……なるほどね」

 

 ガシガシと頭を掻くマルクス……違う、総一郎。

 大分混同しているらしい。嫌になってきた。

 

「でも生き返るんでしょ?」

「わからない」

「は? 自分で言ったんだろ生き返るって」

「わからないんだ……」

 

 最後に流れたシステムログ。

 正常に機能した証左か、或いはそれすら偽装か。

 ともかく、僕も共に死んだ。それだけが事実──

 

「……まあ、死んだからってそうくよくよするな。ゲームなんだから割り切れ」

 

 ──。

 

「……ざけんな」

「ん?」

「ふざけんなっ!!」

 

 机を叩く。拳の痛みで、頭が冷える。

 

「……すまん」

「…………一旦、落ちついた?」

「ああ」

「所詮はゲーム、って言ったのは誰?」

「僕だ」

「じゃあ今のお前は何派?」

「……わから、ない」

 

 物語にのめり込みすぎているのか、はたまた本当に死を嘆いているのか。

 もう自分ですらわからない。

 

「……世界派にしか見えないけど、ねぇ」

 

 世界派。

 あの世界を世界と尊び、尊重する者。

 

 ──じゃあ、なんで。

 僕は、シアさんを、死地へと向かわせた?

 

 ◆

 

 ■

 

 

「ただいまー(*^^*)」

「……もう来るなって言ったのネ」

「いやー、掘り出し物に会えたよ\(^o^)/ 【ブローチ】どころか《ラスト・コマンド》まで使った(^q^)」

 

「…………へぇ」

 

「あ、興味出た?(´・ω・`)」

「全然なのネ……ってかよく生きてたのネ」

「元の体をリソースに還して(⌒▽⌒) 千切った肉芽から全身生やす(^v^) 死亡偽装は【屍肉操者(ぼくら)】の嗜みだよ(*´ω`*)」

 

「……多分それアンタだけなのネ」

 

 

 ■

 

 ◆

 

 1日を経て。

 

「……寒い、な」

 

 制限もなくなり、ログイン。

 コルタナの繁華街は明るいが、時刻的には気温が厳しい。

 

「──へくちっ!」

 

 ふと、聞き馴染んだ声が聞こえる。

 

「……お、おはようございます、タカキ様」

 

 隣りに居たのは、何時ものシアさんだった。

 手を伸ばし、頬へ触れる。

 柔らかで、ハリのある、人の肌。

 

「んぅっ、タ、タカキ様──きゃ!?」

 

 生きている。

 幻覚じゃない、生きて、ここに居る。

 

「良かった……良かった……っ!」

 

 抱きしめる身体は、か弱く感じて。

 

「……はい、勝ちましたよ、私」

 

 触れる温かみが、酷く痛かった。

 

 ◆

 

「あっ! 居た!!」

 

 待ち合わせ場所に行くと、死んだ顔触れが勢揃いしていた。

 

「タカキさん! ……ま、災難だったわね」

「ああ、オレなんか真っ先に死んだぞ。ありゃ無理だわ」

「ボクは結構頑張った……んですけど、言いたいことがあるんですよね。解りますよね? ミスター・タカキ」

 

 ミスティさんと灰流さんは仕方ないといった雰囲気だが、シエンさんはご立腹である様子。

 さもありなん、逃げろと言われたのに戻ってきたのだから。

 

「……すいません」

 

 僕が謝罪を入れる前に、シアさんがシエンさんへと頭を下げた。

 

「私が、あの<超級>に挑戦したいと言ったんです」

「……止めてくださいよ、保護者でしょうに」

「すいません」

 

 言うとおりだと思います。本当に。

 ……本当に。

 

「めっっっちゃ頑張ったんですからね!?」

「まーまー、んで、負けたんだな」

「いえ、痛み分けです」

「はぁ!? ああでも確かに行けるか……?」

 

 シエンさんがいつにも増して忙しない。

 

「後学のためになんですけど……《聖別の銀光》使いました?」

「は、はい」

「そりゃ行けるわー……あの人アンデッドですからね種族」

「そうなんですか?」

「あっ、知らなくてアレなんですね。あの、説明すると──」

 

 シエンさん曰く。

 あのケージという<超級>は、【屍肉姫(フレッシュ・プリンセス)】という超級職に就いているらしい。

 死霊術師から派生し、【大死霊】を経由する【屍肉操者(フレッシュ・マイスター)】という上級職の派生であり、その為に種族がアンデッドに固定されるそうだ。

 

「──だからまあ、《聖別の銀光》で大ダメージ、って感じだったんじゃないですかね」

「なるほど……」

「運が良かったんですね、私たち」

「それは、そうね……ってか、取引のお金は?」

「手元に丸々、残っています」

 

 確認した限りでは、だが。

 

「……本当に運いいわね」

 

 ミスティさんがしみじみ呟く。

 まあ、本当にそうだと思うよ。

 

 ◆

 

 マルクスの出す迎えが来るまでは、一先ずコルタナへ足止めとなる。

 そのため宿を取り、各自休息となったのだが……シアさんとの相部屋となった。

 あの3人が共謀したらしい。

 

 一先ずシアさんにベッドを使って頂き、僕はソファで寝ることにした。

 そんな中、シアさんが隣へ座って来る。

 

「タカキ様」

「……はい、何でしょう」

「わがままを聞いてくださり、ありがとうございました」

「いえ……止められなかっただけです。そのせいで、貴女も死んでしまった」

「それでもですっ」

 

 少しだけむっとするシアさん。

 卑下するな、と言うことか。本当に優しい人だ。

 

「……あの時、あの<超級>が現れる直前、貴方が言ったこと、覚えてます?」

「はい」

 

 忘れる訳もない。

 

「こちらを軸に出来たら、私の気持ちに応えてくれるって」

「……はい」

「だから……私は全力で、そうなるように手を尽くします」

 

 手を取り、両手で握られる。

 

「私の事を、心の底から、あ、あ、愛して、もらって……その、あちら側じゃ満足できないくらいに、してみせます」

 

「だから、その時まで……一緒にいてください、ね?」

 

 ……は、ははは。

 夢のゲームか、これが。

 前も思ったが……やっぱり、悪夢だろう。

 

 僕は彼女の隣にいる資格がない。

 しかし彼女は僕を離さないし、離れる術がない。

 《コントラクト》の解除には、両者の同意が不可欠だ。

 

 ああ──なんたる皮肉か。

 死地へと送り込み、自身の欲求を満たしたクソ野郎だというのに。

 

 ……それでも。

 

「解りました」

 

 僕も、隣に在りたいと思っている。

 このぬるま湯の心地良さに、身を預けている。

 

「……ふふっ、絶対ですよ」

 

 ああ。

 やっぱり僕は、クソ野郎だ。

 

 




一旦一区切り

ある意味での主題が
漸く書けました
楽しいです

次章をお待ち下さい

追記:
章の設定間違えてました
次章は出来上がってはいるんですが
推敲中ですのでお待ち下さい
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