書けました
気づけばバーの色も伸びました
ありがとうございます
この章は誤爆した章タイトル通りに
かの魔竜に関わる話です
投稿形態は前の章と一緒の予定です
話数としては折り返しになるんだと思います
誤字脱字がやっぱりずっと怖いです
1:ちゃかい
■
アレクシアが【屍肉姫】を打ち倒し、初めての死を遂げ……蘇り。
そして想い人に、宣戦布告の如き告白をしたその日から、早くも2ヶ月──勿論、彼女にとっての──が経とうとしていた。
とは言え基本的に、暮らしに変わったことはない。
いつも行く<墓標迷宮>探索に、ミスティや灰流が合流したぐらいのこと。
それでも変わったこと、と言えば、3つほど。
1つは彼女自身のレベル。
【僧侶】のレベルと【信徒】のレベルを上げ切り、合計レベルは500を達成。
実のところ、これはあの【女教皇】から知らされたある超級職の要件の1つでもあったりする。
“信仰の関わるジョブの合計レベル500達成”、それが件の条件のうちの1つであった。
……尚、それ以外の条件に“単一の宗教を100年信仰する”というものがあり、彼女はそのせいでタカキに鯖読みがバレていた。
もう1つは、家の購入。
何時までも宿暮らしでは金の無駄があると、タカキの渋々とした了承と共に買った、小さな家。
キッチンがあり、居間があり……寝室は1つしか無かったが、まあ彼女には全く問題なかった。
若干1名にとっては大問題だったが、後の祭りである。
そして最後は……タカキのこと。
何処か、申し訳なさそうな顔をしていることが増えた。
常に一歩引いているような、そんな雰囲気を感じる。
たまに何かを堪えるような仕草をすることもあった。
それが何故なのか……彼女には分からなかった。
◆
「……【モビーディック・ツイン】、ですよね?」
「はい、そう書いてあります」
彼女の読む新聞に記されているのは、少し前にグランバロアを襲撃した未曾有の災害──<SUBM>について。
その名前に、タカキは首を傾げる。
「……1が無いのは、気持ちが悪いな……」
「いち、ですか?」
「はい。【双胴白鯨 モビーディック・ツイン】、ですから」
双、ツイン。確かに2つを意味する語句。
ティアンの用いる言語としても、それは理解できることであった。
「1が居ないのは、些か不自然なように思えます」
「考えすぎじゃないですか?」
アレクシアには、その1を冠するものが秘されているとは到底思えなかった。
このレベルの災害を誰にも知られぬまま対処し切るだなんて、それこそ昔話の英雄たちの域に等しい。何ならそれ以上だ。
(“誰にも語られず、ひっそりと事を為す”……)
それはそれでかっこいいし、古今東西様々な英雄の在り様を知るアレクシアにとっても“アリ”ではあるが……有名であったほうが、より彼女の目指す姿には合っている。
広く知られることでの抑止力。
巨悪とは言えそれを為した【覇王】の在り様を、ある意味で彼女は目指していた。
◆
タカキの<エンブリオ>、【至天鍛造 ヘファイストス】。
その到達段階は現在Ⅵとなり、知人らの持つそれと並んでいる。
超級職、且つ上級の最上端。
同じ条件下である
尤も、その名声は他に劣る。
例えばクラン。
灰流やミスティも属することとなった<バビロニア戦闘団>は、かの都クレーミルの守護者として、その名を轟かせる。
例えば<超級>。
闘技場の王者である【超闘士】フィガロ。
ランキング首位に立つものの、誰も知らぬ“正体不明”。
そして……国教と双璧を成す<月世の会>の教祖、【女教皇】扶桑月夜。
「そないに目立つことあんまりしてへんのになー……」
目の前で頬杖を突くその月夜の姿は、あまりにも年頃の女性だった。
今や天上人とも呼べるその名声とは、似ても似つかず釣り合わない。
「そうかしら? 十分に他と比べたら秀でることをしてると思うわよ」
「他が目立つことせぇへんのが悪いんやー」
そんなカグヤの窘めを、あまりにもあまりな暴論で潰す。
潰された側は側で、あらあらと気にも留めていなさそうなのが、彼女らの関係の気安さを表していた。
「あ、あはは……」
どう返せばいいのやらと、その光景を見ながら苦笑するアレクシア。
今や彼女の二つ名は“国教の守人”。
度々招かれ出席するこの茶会は、そんな彼女と<月世の会>の友好さを象徴し、内外に顕示するものであり。
実際は上に立つものとしての愚痴を聞き、駄弁り、楽しむ、ひとときの休息であった。
「ソウちゃんシアちゃんやって、結構頑張っとるやんかー? 特典武具まで手に入れたんにー」
「……まあ、否定はしません」
そう答えるタカキの姿は、以前とは異なる。
西方の装いから、天地のそれに近い、月夜らにも似た衣服。
当人曰く“一昔前の書生風な”と称するその衣は、アレクシアの身を包む【ラトゥ=ノゥエ】と同格の防具。
銘を【壮健康衣 セストラ】と云う、HPの持続回復効果とダメージの割合減算効果とを持つ布鎧である。
これを含めれば、タカキ自身の持つジョブスキルなども相まって、“高い耐久力が自動で回復し”、“攻撃する度にAGIの補正が微少ながら伸び”、“MPを物理ステータスへ変換する”、“2つの形態を使い分けられる”武器が完成する。
もはや一種のそういった特典武具に近い。
「ですがやはり、より強い方に、人々の関心は引っ張られるものです」
「そうかいねー?」
「はい。僕が幾ら本を書き、賞を獲得したとしても……古典で言えば“竹取物語”、近代で言えば“アンパンマン”。その辺りの根強く、永い名作には、決して勝てません」
「せやろけどさー、今の話と関係あるのそれー?」
「……バレましたか、詭弁です」
「あー! やっぱ適当言いよってからにー!」
「痛い。痛い、痛い痛いイタイッ! 絞め技は卑怯では!?」
仲睦まじく、体を触れ合わせる月夜とタカキ。
その姿少し羨ましく、また妬ましく感じてしまうのは、惚れた者の性というやつであろう。
「そないな“絶望した!”って言いそうな見た目と声質なんやからメガネの1つぐらい掛けたらええやんか!」
「それこそ今関係無いでしょう! って言うかネタが古いんですよ!!」
「その癖中身は小説家の露伴センセや! 属性盛りすぎなんよ、このっ! このっ!」
「本ッ当に関係無くなって来ましたね!?」
こういった話題もそうだ。
恐らくはあちら側の世界の話。その共通言語とも呼べるものが、アレクシアには無い。
何とも羨ましく、やはり妬ましい。
そんな中、ふと、月夜と目が合う。
何かを察したようにハッとすると、タカキにキメていた頭への絞め技──ヘッドロック──を、ぱっと離す
「……あら、ごめんなー」
「ごほっ、ごほっ……ふぅ、漸く解放された……」
「っえ、あっ、私ですか?」
「そうや。うちは別に、シアちゃんのダーリン取る気あらへんから、堪忍な」
「だっ!?」
「なっ……」
不意の言葉に、顔が熱くなるのを感じる。長い耳の先までしっかり熱い。
その様子を見て、何とも言えない笑みを湛えた月夜と、微笑ましいものを見るような顔つきのカグヤ。
一方でタカキは目を逸らしていたが、その耳は少し赤かった。
「おんなじ家に住んで、ラブラブアベックやんなー」
「……言葉が古い」
「じゃあカップルって言ったらええのん? それとも夫婦?」
「こ、こここ婚約も、お付き合いも、まだです……っ!」
「そないなら、夜の激しい──」
「──言わせないからなそれは」
ニヤケ顔の月夜を、強い語気で止めるタカキ。
その目の真剣さに何かを感じたのか、渋い顔で居住まいを正した。
「……流石に乙女の発言やなかったな。でも同じベッドで寝とるんやろ?」
「は、はいっ」
「ええ返事やねー……したらすることやってるんと違うん?」
「やってません。手を出してません」
「……はぁ!?」
驚愕する月夜。
あらまあと口を手で覆い、目を丸くするカグヤ。
事実、アレクシアは三日三晩の激論の末に、タカキとの同衾を勝ち取っている。
しかし手を出されたことは一度たりともなく、またそういう雰囲気を作ろうとしても上手く躱されている。
“あちら側じゃ満足できない”ようにする試みはこれを含め未だ続いているものの、どれも結果は芳しくなかった。
「……え、枯れとるん?」
「違います」
「じゃあ童貞?」
「…………そうですが、関係ないでしょうに」
そうなんだ。
アレクシアは内心でガッツポーズを決めた。
「じゃあ、シアちゃん嫌いなん?」
「そんな──」
少しばかりの疑念。
実際そうなのでは、と思ってしまったことは、幾度となくある。
しかし決まって、そう聞かれた時。
「──……そんな訳、無いじゃないですか」
タカキは決まって、こう言うのだ。
何処か悲しそうな、何処か苦しそうな。
まるであの時見た、ペルセポネの顔のような……。
なんでそんな顔をするのか。
それが何故なのか……彼女には、やっぱり分からなかった。
今章本編はほぼずっとシア視点です
さっさと腹括れと思っていますし
正直奴なら最終話近くまで
やらないと思っています
次はちょっと短いです