短めな閑話
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僕はこれから、一世一代の賭けに出る。
そうでもしなければ、今後の人生に支障を来し……下手をすれば、2度とこちらへ、デンドロの世界へ来られなくなるかも知れないのだ。
いやまあ、
「行きます……!」
そしてその相手は──
「──はいっ!」
まさかの、シアさんだ。
彼女と相対するとは心苦しいが……仕方のないことなのだ。
拳を構え、いざ……!
「……最初はグー!」
「じゃん、けん──」
◆
事の発端。
今回、初めての自宅を購入した。
現実ですらマンション暮らしだというのに、初めて買った戸建てがゲーム内のものとは……正直堪える。
内見はシアさんが既に済ませていると聞いていて、なら問題もないだろうと思い即購入。
その家に、今日、初めて足を踏み入れた。
「……おお」
「どうです?」
質素な、しかしながらファンタジー的な家の中。
言い方は悪いが、一般的ななろう系ヨーロッパの主人公宅、といった具合。
リビングルームとキッチンがあって、上につながる階段も。
少し手狭にも思えるが、家人が2人であれば丁度良かろう。
「お風呂はあっちで、トイレは一応あそこで……二階が寝室と、物置ですね」
「なるほど」
水回りは下に集中、か。水漏れで階下が被害を食らう心配も無さそうだ。
さすがはシアさん、そういう部分がちゃんとしている造りの家を選んだようだ。
「では、2階も見ましょうか」
「はい。案内しますね」
階段を登り、廊下の左右に扉。左側には倉庫の下げ札が付いている。
突き当りには窓があり、日中ということもあってしっかり廊下も明るい。
「この部屋です」
「失礼しま──す?」
扉を開け、中を見た僕は目を疑った。
しかし、部屋にはベッドが1つだけ。
セミダブルぐらいのサイズだろうか、布団は1つで、枕は2つ置かれている。
「シアさん……?」
「あれー、おかしいなー、ベッドがひとつしかないですねー」
わざとらしい言い方に、僕は全てを察した。
……た、謀ったな、このひと……!!
確かに“あちら側では満足出来ないように”とか何とか言っていたけど、そう言う手法で来るか……!?
こんなクソ野郎には全く勿体無いひとだというのに……!
「これは一緒に寝るしかないですねー……あはは」
顔真っ赤じゃないか慣れないことしてるせいで!!
「嘘、ですね」
「そ、ソンナコトナイデスヨ」
「目が泳ぎ過ぎ、顔が真っ赤」
「……何か文句あるんですかっ! 一緒に寝たいんですっ!」
ああもう、開き直ったよこの3桁歳。
「大好きな人と一緒に住めるんですよ? 同棲ですよ!? そのぐらい良いじゃないですか!!」
「間違いがあったらどうするんですか……」
「……いいですもんっ」
…………は?
「……好きな人となら……良いですもん……!」
…………どんな、どんな顔すれば良いんだこれ。
耳までめちゃめちゃ赤い。シアさんもそうだが、僕もそうだろう。顔あっつい。
童貞丸出しだな、とイマジナリー総一郎が笑っている。
黙れ。お前だって……いや、確かブラジルで……軽薄尻軽男が。
この後の電話口で、あいつには風邪を引いたと報告されるのだが、それは関係ないので一旦置いておいて。
「……と、とにかく──」
下で僕は寝る。
そう言おうとして、踏み止まる。
確かに僕はクソ野郎だ。弩級の。
しかしこれ以上、クソにクソを上塗りしていいのか? 突き落とされたことがあるとは言え、肥溜めになって良いのか?
女性にここまで言わせておいて、そこから逃げて良いのか?
……否、であろう。
男としても、なまじ好かれてしまった身分としても、それだけは駄目だ。
向き合うと面向かって言った以上、ただ逃げ続けるだけでは、駄目なのだ。
そう考えた僕が出した結論が──
「──じゃんけんをしましょう」
これだった。
◆
そして、その結果。
三日三晩、休憩や食事を挟みながらも、ゆっくりと闘い続け、あいこを出し続けた末に。
「…………」
「……すぅ……すぅ……」
僕はパーを出し、彼女はチョキを出し。
見事に同衾することと、相成ったのだった。
相成ってしまったのだった。
……じゃんけんが一発で通じる文化圏だと思っていなかったのに通じたとか。
僕の理性がガリガリと削れてる気がするとか。
腕を抱き枕にしないでほしいとか、色々あるけれど。
「……ふふ……ん……ぅ」
この幸せそうな寝顔を見れて、ひどく喜んでいる自分がいる。
……やっぱ僕はクソだな、うん。
心の中で、独りごちた。
さっさと腹を括れ