系統樹に触れた物書きの話   作:ヘッドカノン

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ギャグ寄りの回




2:ひび

 ■

 

 

「《エグゾースト》!」

 

 爆発的な急加速とともに振り抜かれる、6列の鋸刃。

 それを叩きつけられた者は、例えボスモンスター……【ヴァイパーヘッド・ドラグワーム】ですら、ひとたまりもなかった。

 

 ……あの<超級>との戦いを経て、更には<UBM>と戦いも超えて、グラインダーの見た目は大きく変化している。

 基部の厚みが増し、刃と反対側には《エグゾースト》用のマフラーが4対8本。

 もはや打撃部と呼ぶべき刃の列は、6列にまで増えている。

 

 チャージャーに関しては変わり無く、灰流の称した“スカイホーキーとブロンブースターを足して2で割って先端ドリル”という見た目を崩していない。

 しかしながら強力な奥の手、そして()()()()として、その活躍を衰えさせてはいなかった。

 

『逃げましたね……チャージャーで行きましょうか?』

「はい!」

 

 逃げたもう1体の蛇の背を見ながら、巨大な突撃槍を構えるアレクシア。

 腰だめにではなく、投げる姿勢で。

 

「もう一度──《エグゾースト》ッ!」

 

 そのまま、巨大な槍は勢いよく放たれる。

 “轟雷槍”とも呼ばれるようになったC&(シエン)の指導により整えられたフォームから、狙いよく放たれた槍は吸い込まれるようにして飛翔し……蛇の背を深々と貫く。

 

「よしっ!」

 

 そのまま、アレクシアはスキルを使用する。

 

 《貴方と共に私は在る》

 装備者から一定距離以上に離れた武器を、手元へと引き寄せる。

 アクティブスキル

 

 【セストラ】との戦いで用いた恐らく最後の《再鍛》、その結果生まれたスキル。

 まっすぐ手元へ飛んできた槍を、こともなさげに掴むアレクシア。

 

「おかえりなさい、ソウ様」

『……只今戻りました』

 

 これに加え前述した武器形態の強化、更に《マナドライブ》の回復所要時間の半減──50秒から25秒に──を以て、“タカキ・ソウ”という武器は一先ずの完成に至ったのだ。

 

 ◆

 

「ありがとうございます……!」

「おかげで集落も救われました、心より感謝を」

 

 集落の長夫婦よりの礼を、笑顔で受け止めるアレクシア。

 

「当然のことをしたまでですよ」

 

 彼女の目指す、理不尽を吹き飛ばす強者の姿には、未だ遠い。

 理想が高すぎるとタカキには言われているが、高くなくては届かず、またあり得ない夢なのだ。

 

 この世界には理不尽が溢れている。

 

 例えば直近の<SUBM>。

 船団の長が死に、その後を継いだ<マスター>醤油抗菌の姿は、正に夢の在り様。

 曰く、共に戦い特典武具を得た【盗賊王】ゼタと同じく<超級>であると聞く。

 

 身近な所であれば、【女教皇】。

 国の様々な場所での問題解決に、決まって上がる<月世の会>の名は彼女のもの。

 所属するマスターは誰も彼も熟練の<マスター>であり、月夜自身もそれに違わない。

 

 そして──あの時だってそうだった。

 殺されかけた自分を救ってくれた命の恩人にして、命を預ける武器でもあるひと。

 その後ろ姿を追うのではなく、いつか隣に並べるように。

 それもまた……彼女の目標であった。

 

 ◆

 

「神に感謝を!」

「はい、神に感謝を」

 

 食卓へ並べられた、色とりどりの料理の数々。

 

 “あちら側では満足出来ない”ように、先ず胃袋を掴もう、と意気込んで作ったは良いものの、どす黒い何かを錬成して失敗ばかり。

 結果として日々の食卓はタカキが彩ることとなっていた。

 

 献立はパンとシチュー、付け合わせにサラダ。

 飲み物は野菜ジュースと、全てタカキの手製である。

 

「……美味しいです、流石はソウ様」

「ありがとうございます。食材の質が良いもので」

 

 それを生かし切るのは流石の腕前があってのことだろうに、それを誇示しない辺りに人柄が出ている。

 物書きと聞いてはいたが、料理も一流ときた。最早何が出来ないか数えたほうが早いのでは? とアレクシアは思っていた。

 

 そんな料理も、あっという間に無くなり。

 

「今日も美味しかったです、ありがとうございましたっ」

「お粗末様でした」

 

 器を片付け、流しへと運ぶ。それを洗うのは、今日はシアの役割である。

 調理器具に関しては、既に洗われ、水気も拭き取り、軽く乾かして収納済み。

 調理とともにそれをこなす手際に、アレクシアは感嘆するしかない。

 

「お風呂沸いてますから、先に入っていてください」

「はい。では、お先に」

 

 テキパキと片付けを進める。早くしないと、彼が風呂から出てしまうのだ。

 

 ◆

 

 風呂の構造は所謂“日本式”と呼ばれるもの。

 アレクシアが聞いたところでは、この家を作った【大工】らに<マスター>が居り、その趣味であったとか、無いとか。

 実際は全員<マスター>だったし日本人で、完全に趣味であった。

 

 脱衣所があり、扉を隔てて湯船があり、体を洗うスペースがある。

 湯船に浸かるという習慣の無かったアレクシアも、今ではすっかりその虜だった。

 

 服を脱ぎ、籠へまとめ、タオルを巻き……扉に手を掛けて──意を決して、開く。

 

「失礼しまーす」

「……は、はあぁ!? ちょっ、何を!!」

 

 ああ、もう後戻りはできない。

 タオルを巻いているとはいえ、それ1枚だけの姿を、想い人へ晒している。

 顔が熱いのは浴室内の熱気のせいではなく、恥ずかしさの故である。

 

「で、で、出て一旦待って下さい。直ぐに上がります──」

「いえ、一緒に入りますっ。お背中お流ししますので!」

「変な所で思い切りがいいなぁ……!?」

 

 ここで背中を流し、あわよくば流してもらい。

 意識させた上で……寝床へ。

 彼女が考えたざっくりとしたプランは、こんなものだった。

 昨日の今日ではあるが、同衾しているとは言え手を出されない現状にしびれを切らし、それを月夜の言葉で再認識した、とも言う。

 もうひと月である。

 ひと月も同衾している。

 なのに一切無い。そういったことに全くならない。

 名前呼びを解禁しようが、一切である。

 

(ならもうこれしかない……!)

 

 タカキも彼女も知らぬことではあるが、管理者によって流布された、様々な文化の煮凝りが、今ここに結集していた。

 

「お隣、失礼しますねっ」

「…………ぐっ…………」

 

 隣と言ったのに、これでは後方でないか。背を向けられたアレクシアは少し落胆する。

 ……いや、チャンスだと思い至ったらしい。

 

「……湯船にタオルを浸けるのは良くないですもんねー」

「はい!?」

 

 するりと巻いたタオルを除き、畳んで絞り、頭の上へ。

 その作法ですら流布された文化のアレであるが、一旦置いておこう。

 

 らしくないとは自分でも理解していた。

 しかしここまでやらねば進展はないだろうとも思っていた。

 

 向けられた広い背中へ、ぴとりと体を触れさせる。

 

「……止めて下さい」

「いやです」

「どうしてですか」

「大好きで、え、え……えっち、したいからです」

「…………はぁ…………」

 

 長い、長い溜め息。

 意を決した発言を、受け流すためのような。

 

「……そんなに、魅力、無いですかね」

「そんな事はありません」

「じゃあ、どうしてですか?」

「…………どうして、でしょうね」

 

 帰ってきた声色に、諦観が滲む。

 ペルセポネのそれに、やはり似ていた。

 

 ◆

 

 数日後。

 

「──で、結局そのまま普通に寝た……って?」

「……はい」

 

 定期的な茶会の場で、月夜が死ぬほど呆れていた。

 いや、ちょっとキレていた。

 

「おいコラ不能小説家」

「違います」

「どこが違うか言うてみぃやこの■■■■■(乙女にあるまじき発言)が!!!」

「どれだけこっちが耐えたか分からないんですかねぇ!?」

「耐えずにパクッと美味しく頂けや据え膳やろこんなん!!」

 

 その様子を見ながら、カグヤは微笑ましそうに笑い。

 

(次は……リボンを体に巻いてみましょう)

 

 アレクシアは次の作戦を考えていた。

 




書いてて思ったけど
やってることが“好き!(挨拶)”の人じゃないかな

そして活きる管理者が文化を流布した設定
こんな活き方あるかね
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