系統樹に触れた物書きの話   作:ヘッドカノン

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2:みすたー

 

 街を走るパイプの数々。板金と留め金で構成された、工業製品めく家々。

 人の歩くその下でピストンが動き、水路に向かって放たれた蒸気がネズミを驚かせる。

 これぞ間違いなく、スチームパンク。

 

「すごい、ですね」

「ははっ……確かに、そうですね」

 

 土地が変わればなんとやら、と言う言い回しがあった気がするが、ここまで違うと流石に笑ってしまう。

 

 そもそも、王国にしろと総一郎に言われたからしただけで、こういう初期地点が良かったのだが……まあ後の祭りだ。

 ってかそれじゃあシアさんにも会えなかっただろうし、寧ろ選ばずにいて良かっただろう。

 しかし……見たくなかったかと言われれば、否だ。否なのだ。

 

「ああ、来て良かった」

「……わぁ……!」 

 

 ……隣国だし、ファンタジーだし、本当はレジェンダリアへ行きたかったが、流石にシアさんが心配で。

 しかしこちらへ来て、後悔はなかったとはっきり言える。

 

 二人して目を輝かせるここが、ドライフ皇国の中心、皇都ヴァンデルヘイムだった。

 

 ◆

 

「田舎者丸出しでしたね……」

「流石に、驚きすぎました……」

 

 道の中央で注意されて、流石に端へと避けた後。

 

 気を取り直し、そのまま道はどちらか……と、地図とのにらめっこが始まった。

 目的地は教会であるが、いかんせん土地勘も何も無い。

 

「……地図、読めます? 僕はちょっと……」

「えっ……って、嘘ですね……!?」

「ははは」

「もうっ、もうっ!」

 

 冗談なんだからぽかぽか殴らないでくれ、愛い奴め。ちゃんとHPが減っている。

 【セストラ】の補正──50%ダメージカット──込みでも5分の1だから防御力クソ低いんです。やめてね。

 

 して、地図としてはここから徒歩20分ほど。

 少し歩くが、座りっぱなしで固まった体を解すには丁度良いだろう。

 

 路地を抜け、大通り。

 そのまま人の往来に沿って進み、分かれ道を左手。

 少し進んだ所でまた路地に入って……肩がぶつかる。

 

「おっ、とぉ……失礼」

「いえ、こちらこそすいません」

 

 軽く会釈をして、地図ばかり見ていては駄目だなと思い直した直後。

 

「…………待った、そこのカップル!」

「はい?」

 

 後方、先ほどぶつかった人物に呼び止められた。

 

 周囲を見渡し、それらしきが僕ら以外にいないことを確認して、反応する。

 ……まだ違うんだけどなあ。

 

「か、カップル、って……」

「まあ、ありがとうございます」

「お熱いねぇ!! ……ちょっと声掛けたの後悔してきたよぉ?」

「それは失礼しました」

 

 声の主は……白衣の男性だった。

 少しばかり大仰な行動が目立つものの、マルクスのあれ(ロールプレイ)と同種だろう。危険度は低そうな感じがする。

 まあ少なくとも、顔見知りではないのだが。

 

「……あの、どちら様でしょうか」

「ん? あぁ、そうだった。挨拶を忘れていたよぉ。私はMr.フランクリン。この国で工房の主をしている」

 

 そう言う彼の左手には紋章が見える。<マスター>だったか。

 まあ態度やら何やらが<マスター>し過ぎていたし、これで違ったら一般狂人ティアンなのでそっちの方が怖い。

 しかし、フランクリン。どこかで聞いた覚えがあったような……。

 

「初めまして、フランクリン様。私は──」

「おぉっと、紹介は要らないよぉ。“国教の守人"、アレクシアとタカキ・ソウ。隣国にまで名前は届いているからねぇ……もっとも、今は“使徒"だったかなぁ?」

「……よく、ご存知で」

 

 出奔した理由が理由で、通り名も大きく変わることとなったが……もう皇国の耳までは届いていたか。

 新聞でも取り上げられたのは知っているが、早いな。

 何か……“新たなる【使徒】、襲来”とかクソみたいな見出しだったのは目に入った。

 ゴシップというのはいつの時代も、世界も、皆そういうものだ。

 

「とまあ、世間話もこの辺りにして……そんな君達にぃ!」

 

 急な大声。大仰な動きも相変わらず。

 

「ちょーっとしたご相談があるんだけど……どうかなぁ?」

 

 ◆

 

 ──作業服姿の男女に囲まれながら、僕らは2人で立っていた。

 熱い視線を周囲から受け、少しばかりの緊張が走る。

 

「……準備は?」

「いつでも」

 

 目を合わせ、頷き合うと、いつものように彼女に手を預ける。

 そして──

 

「《ウェポンシフト:グラインダー》」

 

 ──いつも通りに、武器となる。

 

 その瞬間……歓声が上がった。

 

「おぉぉ………ぉぉおお!?」

「グラインドブレードだ! いやマスブレードか!? 間の子だ!!」

「ドッガハンマーっ!」

「バッファの最強フォームが使ってそう……」

「色全然違うじゃねーかよ、ブラックベースにシルバーグレーだぞ?」

「別にいいだろそんぐらい!」

「でも変形きっしょいな」

「それはそう」

 

 やっぱ言われたよまったくもうさあ。変形そんなキモいのかよ。

 ……いやそうじゃなくて。

 

 現在地はフランクリンさんの……正確には<叡智の三角>の工房。

 <マジンギア>を製造する場でもあるここへ、僕らは案内され……僕の武器としての姿で、メンバーへインスピレーションを与えて欲しい、と頼まれたのだ。

 

 フランクリン、という名に聞き覚えがあるのも当然だ。

 この世界において文化的なブレイクスルーを引き起こした張本人。この<マジンギア>を以てそれを成した傑物。

 

 まあ、中々ロマンのある風貌をしている自負はあるし、色々話を聞きたかったのもある。故に問題も無いと了承したのだ。

 それに──

 

「す、スケッチ良いっすか!?」

「どうします?」

『構いません』

「いぃやっほうっ! 綺麗に書かせてイタダキマぁス!」

「写真でいいだろ別に」

『いえ、自らの手で形をなぞるというのも、インスピレーションの刺激としては効果的かと』

「……言われたらなんか書きたくなってきたな、おれもいっすか?」

『どうぞ』

 

 椅子とスケッチブックを持ってくる彼に、続いてくる影や影。

 

 ──それに、形は違うとはいえ、何かを作る者同士だ。

 文字を書くか、ロボット……<マジンギア>を開発するか。アウトプットが違う程度で、創造という点においては合致する。

 その活動に貢献出来るなら、これ以上はない。

 

「でけた!」

「お早いですね……あ! 私まで書いてくださったんですか?」

「そーそー。イイカンジだったんでつい」

『……本の挿絵に良さそうですね』

 

 …………っあ゛。

 普通に正直な感想が出た。

 気を抜くと碌なことを言わないな、この口は。

 

「お、なんか文章でも書いてるんですか?」

『…………』

「あ、あはは……」

「名前で察しろよ、クラウド君」

「あーそっか、ロールプレイ? オッケーオッケー、ワタシナニモシラナイ」

 

 その名前とナリで大剣使わずに整備工やってんのはどうかと思うが……まあ良い。

 貴方のその姿のお陰で、どうにか誤魔化せたのだ。とやかく言うのは止しておこう。

 

 ◆

 

「……えっ」

「えっ本物じゃん!?」

「え嘘ぉ!!」

 

 誤魔化しきれなかったよ。

 

 ……クソッタレェ!!

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