「はぁ……」
「……疲れましたぁ……」
チャージャーでも盛り上がり、《フルスロットル》でも盛り上がり。
《エグゾースト》にはスペースが必要だったが、<マジンギア>……人型ロボットの工厰ということもあって、試運転や試射可能なスペースがあったことが……まあ、災いした。幸いでは決して無い。
結果としてまあまあ素振りさせられ、シアさんはがっつり疲弊している。
尚僕は僕で、それにプラスサイン攻めをされたのもあって瀕死の重体だ。
他言語圏はさておき、日本語圏の奴がポスターにプリントするだのシャツにプリントするだの3Dプリントするだの……3Dプリントは何をどうしたいんだよ。
「……ちょっと、申し訳なかったねぇ」
「ああ、フランクリンさん……皆さんはどうでしたか?」
「かーなーり、奮い立ってるよぉ。いい刺激にはなったんじゃないかなぁ?」
「それは…………良かったです」
エネルギーに溢れる創作者は、見ていて気分がいいのは事実。
それと、疲れることと、イラッとくることは、それぞれ背反せずに両立する。
「──あっ、いたいた!」
そんな最中、ふと作業場の入り口に人の気配が。
元気そうな声とともに現れたのは、紅白の女性だった。
「ヤッホー、フーちゃんっ」
「あぁ、アリカか」
その人物は、フランクリンさんにアリカと呼ばれた。
朱と白の瞳。混ざったものではなく、左右で別々の、所謂オッドアイ。
髪色もそれに合わせたのか、赤を主として白いメッシュが入っていた。
服装は……なんというか、ソシャゲにいそうなサブカル系パイロット。ホットパンツとか履いてるタイプの、マヤノトップガンの勝負服的なサムシング。
「んで、そっちがお客さん?」
「ああ。最近有名な、<マスター>とティアンのコンビだよ」
「あぁ! あの!? んっ、初めまして、お嬢さん。アタシは──」
ぱしん、という乾いた音。
「──えっ」
見れば、握手に差し出された紅白の女性の手を、シアさんが払い除けていた。
「……っ! す、すすすいませんっ!」
「いやいや、気に……うん。しなくて、良いよ。うん」
「君の女癖の悪さがバレたんじゃないかなぁ?」
「そんなことないよ!」
……
引っ掛かるが、まあ、一旦いい。
結構なショックがあったらしく、紅白の女性は狼狽えている。その上ちょっと……いや、大分落ち込んでいる。
「申し訳ありません、彼女が非礼を」
「いや、大丈夫。大丈夫だから。うん……」
本当に大丈夫か。
「ん゛ん゛っ。改めまして!」
なんて思いも束の間、咳払いとともに、纏う雰囲気が堂々としたものに。本当に大丈夫だったらしい。
「アタシはAR・I・CA。この<叡智の三角>の【撃墜王】だよ!」
──【
確か操縦士系列の超級職、だった筈。
◆
折角会えたんだからとアリカさんに言われ、一先ずテーブルを囲んで、雑談と洒落込むことになった。
「2人は……好きあってるのかな?」
「はい」
「っそ、ソウ様!?」
向かい合ってのその言葉に、何でもないように返せば、思った通りのこの反応。
カップルはまだしも、好きあってる、ならまあ確かにそうだので否定出来る点はない。
狼狽え方に思わず吹き出しそうになったが……何とか堪えると、アリカさんは合点がいったように手を打った。
「なるほど、ごめんね?
「……
「そう。いい男といい女がいれば声を掛けるのが、愛の【撃墜王】としての礼儀だからね!」
……おお、やばい。なるほど相当なロクデナシだぞこの人。あのシアさんすら、初対面のお相手に若干引いている。
顔には出さないでおくが、あまり近寄りたくはない人種だ。
ナリはいいのかも知れないが、こうも中身が終わっていると、まるで開かなかったハマグリに近い。
「でも無理強いはしないし、恋人や結婚相手のいる人もノーセンキューだよ!」
「それで……弁えた気になっているつもりですか」
「なってるつもりだねぇ」
「弁えてるでしょ! 十分!!」
どこがだよ。……もう顔に出すか?
いや、流石に止めとこう。人当たりは良いんだし、これ以上こちらに被害は来ない。
「……で、どうしてこんなところに?」
おお、切り替えられるんだあそこから。
凄いな愛の【撃墜王】。さっきといい今といい。
「フランクリン様にお願いされて、工員の方々に武器をお見せしていました」
「武器……あぁ、彼の<エンブリオ>か!」
「概ねそうですね」
「良かったらアタシにも見せて欲しいなー」
「……皆さんのスケッチがある筈ですので、そちらで勘弁して頂けますか」
「あちゃー……完全に乗り遅れたか。まあ、後で見ておくよ!」
いや、《ウェポンシフト》って結構疲れるみたいでな。
こうも連続して使う機会があまりなかったせいで、今の今まで気にならなかったが、何か……知らない筋肉を使っている気分になる。
何がもっかいチェンソー見たいだドリル見たいだ1回でどうにかしろやボケ……いかんいかん、落ち着け。
「結構独創的な見た目だったよぉ。……珍兵器がまた増えるかもねぇ」
「【オペラ】に載るかな?」
「いや、近接格闘武器に寄るだろうからねぇ。突撃槍だったら外部バーニアには使えそう…………ん?」
フランクリンさんが、何かに気づく。
視線の先では、ふとシアさんが視線を彷徨わせ始めていた。
何かを探すように周りを見渡すが、その視線は工房内のどこにも向いていない。
「…………」
「どうかしたかなぁ?」
「……い、いえ……外の見える場所はありますか?」
「外、なら、あの階段で上の──」
「──あっ、シアさん!?」
説明を待たず、足早に駆けていくシアさん。
何が…………待て、まさかあれか?
「ちょっ、どうしたのシアちゃん?」
「…………すいません。多分、ここまで巻き込む何かが起こります。あるいは、起きています」
「胡乱な表現だねぇ。どういうことかなぁ?」
それは本当にごもっともな意見と疑問だ。
……答えるしかあるまい。
「……《託宣》という、【使徒】の初期解放スキルです。名前まで胡乱ですが……効果は確かです」
「どういうスキルなの?」
「それは──」
──突然外から響く、サイレンの音。
「……今に、分かるかと」
脳裏に浮かぶ、【使徒】の初期解放スキルの片割れ。
《託宣》
隠されたものや真実、危険などの存在と、その大きさを伺い知ることが出来る。
パッシブスキル
異常事態が、始まった。
白衣眼鏡と紅白女との別離がどこか分かりませんが
第一次騎鋼戦争後じゃねぇかなって思います
あそこで何かあったなら
悪辣さや超級進化へのトリガーなど
色々辻褄合いそうなので