系統樹に触れた物書きの話   作:ヘッドカノン

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3:こうはく

 

「はぁ……」

「……疲れましたぁ……」

 

 チャージャーでも盛り上がり、《フルスロットル》でも盛り上がり。

 《エグゾースト》にはスペースが必要だったが、<マジンギア>……人型ロボットの工厰ということもあって、試運転や試射可能なスペースがあったことが……まあ、災いした。幸いでは決して無い。

 

 結果としてまあまあ素振りさせられ、シアさんはがっつり疲弊している。

 尚僕は僕で、それにプラスサイン攻めをされたのもあって瀕死の重体だ。

 他言語圏はさておき、日本語圏の奴がポスターにプリントするだのシャツにプリントするだの3Dプリントするだの……3Dプリントは何をどうしたいんだよ。

 

「……ちょっと、申し訳なかったねぇ」

「ああ、フランクリンさん……皆さんはどうでしたか?」

「かーなーり、奮い立ってるよぉ。いい刺激にはなったんじゃないかなぁ?」

「それは…………良かったです」

 

 エネルギーに溢れる創作者は、見ていて気分がいいのは事実。

 それと、疲れることと、イラッとくることは、それぞれ背反せずに両立する。

 

「──あっ、いたいた!」

 

 そんな最中、ふと作業場の入り口に人の気配が。

 元気そうな声とともに現れたのは、紅白の女性だった。

 

「ヤッホー、フーちゃんっ」

「あぁ、アリカか」

 

 その人物は、フランクリンさんにアリカと呼ばれた。

 

 朱と白の瞳。混ざったものではなく、左右で別々の、所謂オッドアイ。

 髪色もそれに合わせたのか、赤を主として白いメッシュが入っていた。

 服装は……なんというか、ソシャゲにいそうなサブカル系パイロット。ホットパンツとか履いてるタイプの、マヤノトップガンの勝負服的なサムシング。

 

「んで、そっちがお客さん?」

「ああ。最近有名な、<マスター>とティアンのコンビだよ」

「あぁ! あの!? んっ、初めまして、お嬢さん。アタシは──」

 

 ぱしん、という乾いた音。

 

「──えっ」

 

 見れば、握手に差し出された紅白の女性の手を、シアさんが払い除けていた。

 

「……っ! す、すすすいませんっ!」

「いやいや、気に……うん。しなくて、良いよ。うん」

「君の女癖の悪さがバレたんじゃないかなぁ?」

「そんなことないよ!」

 

 ……()()

 引っ掛かるが、まあ、一旦いい。

 結構なショックがあったらしく、紅白の女性は狼狽えている。その上ちょっと……いや、大分落ち込んでいる。

 

「申し訳ありません、彼女が非礼を」

「いや、大丈夫。大丈夫だから。うん……」

 

 本当に大丈夫か。

 

「ん゛ん゛っ。改めまして!」

 

 なんて思いも束の間、咳払いとともに、纏う雰囲気が堂々としたものに。本当に大丈夫だったらしい。

 

「アタシはAR・I・CA。この<叡智の三角>の【撃墜王】だよ!」

 

 ──【撃墜王(エース)】。

 確か操縦士系列の超級職、だった筈。

 

 ◆

 

 折角会えたんだからとアリカさんに言われ、一先ずテーブルを囲んで、雑談と洒落込むことになった。

 

「2人は……好きあってるのかな?」

「はい」

「っそ、ソウ様!?」

 

 向かい合ってのその言葉に、何でもないように返せば、思った通りのこの反応。

 カップルはまだしも、好きあってる、ならまあ確かにそうだので否定出来る点はない。

 狼狽え方に思わず吹き出しそうになったが……何とか堪えると、アリカさんは合点がいったように手を打った。

 

「なるほど、ごめんね? ()()手を出す気はないから安心していいよ!」

「……()()?」

「そう。いい男といい女がいれば声を掛けるのが、愛の【撃墜王】としての礼儀だからね!」

 

 ……おお、やばい。なるほど相当なロクデナシだぞこの人。あのシアさんすら、初対面のお相手に若干引いている。

 顔には出さないでおくが、あまり近寄りたくはない人種だ。

 ナリはいいのかも知れないが、こうも中身が終わっていると、まるで開かなかったハマグリに近い。

 

「でも無理強いはしないし、恋人や結婚相手のいる人もノーセンキューだよ!」

「それで……弁えた気になっているつもりですか」

「なってるつもりだねぇ」

「弁えてるでしょ! 十分!!」

 

 どこがだよ。……もう顔に出すか?

 いや、流石に止めとこう。人当たりは良いんだし、これ以上こちらに被害は来ない。

 

「……で、どうしてこんなところに?」

 

 おお、切り替えられるんだあそこから。

 凄いな愛の【撃墜王】。さっきといい今といい。

 

「フランクリン様にお願いされて、工員の方々に武器をお見せしていました」

「武器……あぁ、彼の<エンブリオ>か!」

「概ねそうですね」

「良かったらアタシにも見せて欲しいなー」

「……皆さんのスケッチがある筈ですので、そちらで勘弁して頂けますか」

「あちゃー……完全に乗り遅れたか。まあ、後で見ておくよ!」

 

 いや、《ウェポンシフト》って結構疲れるみたいでな。

 こうも連続して使う機会があまりなかったせいで、今の今まで気にならなかったが、何か……知らない筋肉を使っている気分になる。

 何がもっかいチェンソー見たいだドリル見たいだ1回でどうにかしろやボケ……いかんいかん、落ち着け。

 創作者(ギーク)なんてこんなもん。僕だってこんなもん。よし。

 

「結構独創的な見た目だったよぉ。……珍兵器がまた増えるかもねぇ」

「【オペラ】に載るかな?」

「いや、近接格闘武器に寄るだろうからねぇ。突撃槍だったら外部バーニアには使えそう…………ん?」

 

 フランクリンさんが、何かに気づく。

 視線の先では、ふとシアさんが視線を彷徨わせ始めていた。

 何かを探すように周りを見渡すが、その視線は工房内のどこにも向いていない。

 

「…………」

「どうかしたかなぁ?」

「……い、いえ……外の見える場所はありますか?」

「外、なら、あの階段で上の──」

「──あっ、シアさん!?」

 

 説明を待たず、足早に駆けていくシアさん。

 何が…………待て、まさかあれか?

 

「ちょっ、どうしたのシアちゃん?」

「…………すいません。多分、ここまで巻き込む何かが起こります。あるいは、起きています」

「胡乱な表現だねぇ。どういうことかなぁ?」

 

 それは本当にごもっともな意見と疑問だ。

 ……答えるしかあるまい。

 

「……《託宣》という、【使徒】の初期解放スキルです。名前まで胡乱ですが……効果は確かです」

「どういうスキルなの?」

「それは──」

 

 ──突然外から響く、サイレンの音。

 

「……今に、分かるかと」

 

 脳裏に浮かぶ、【使徒】の初期解放スキルの片割れ。

 

 

 《託宣》

 隠されたものや真実、危険などの存在と、その大きさを伺い知ることが出来る。

 パッシブスキル

 

 

 異常事態が、始まった。

 




白衣眼鏡と紅白女との別離がどこか分かりませんが
第一次騎鋼戦争後じゃねぇかなって思います

あそこで何かあったなら
悪辣さや超級進化へのトリガーなど
色々辻褄合いそうなので
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