系統樹に触れた物書きの話   作:ヘッドカノン

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6:しゅったつ

 滞在は長くともひと月。

 それが僕ら2人と、国教の方々、加えて各国の教会とも話し合って、取り決めたルールであった。

 それ以外に関しては、現地の困りごとを聞いたり、モンスターを倒しても問題はない。

 

 ただ、国家間での問題や諍い、政には口も手も出さない。

 政教分離の観点もそうだが、それらに関しては僕らが“与した”“与さなかった”の結果で、国ごとの損益に差が出かねない。

 出ても、よしんば出なくとも、結局問題になって来る。

 

 あくまで、中立。

 それもあらゆる点で、線で、面で、中立的に。

 それを求められる立場に、僕らはなってしまったのだ。

 

「短い間でしたが、ありがとうございました」

「ありがとうございました」

 

 故に……この別れも必定のものであった。

 

「こちらこそ、色々手伝ってもらったからねぇ。ありがとう」

「また来てねー! シアちゃん!」

「アリカの言う通り、またここへ来たら寄ってくれ」

「はいっ」

「勿論です」

 

 ちょっと泣いてるアリカさんに、にこやかなフランクリンさん。

 加えて愉快なメンバーらとの別れを済ませ、教会への帰路につく。

 

 明日の未明にはここを発ち、砂漠を越え、今となっては懐かしいカルディナのコルタナへ向かうことになっていた。

 

「また、会えますよね!」

「まあ……会えるでしょうね」

 

 長くとも半年ぐらい後には、また会えるんじゃなかろうか。

 ……解散とか引退とか脱退とかしてくれるなよ、そういうの割と傍から見ると悲しいんだから。

 

 ◆

 

 教会から僕らに宛てがわれた仮住まいからも、諸々を引き払い準備を終えて、出立。

 

 まだ暗い内に移動を始めるのは、砂漠地帯の高温故。気温の低い、日が昇らない時間から、移動を始めて距離を稼ぐのだ。

 そういった対応をせずとも航行出来た、マルクスの車両の高性能さが解る。

 ……何回も大破してるけど。

 

「……久しいですね」

「そうですね……まるで、あの時みたいな」

 

 車窓から覗く辺りは暗い。

 星明かりが照らす砂地を、快い速度で竜車は駆けている。

 

 故に、彼女が言う恐らく“あの時”とは……ああ……、うん。

 

 ──だから、この世界を、僕が軸と出来たなら。

 

 ──この世界で、貴女と共に生きようと、心の底から思えたら。

 

 ──その時に……僕の方から、貴女に、貴女の想いに、応えさせて下さい。

 

 ……思い出しただけで顔が熱い。

 今思わなくても終わってる先延ばし宣言だとずっと思ってるし、今も応えずにいる辺りでより終わっている。

 ……とはいえ、今じゃなくないか。

 色々大変なことになってしまったし、今では無いのではないか。

 

「……ずっと、待ってますからね」

「──っ」

 

 ……。

 …………。

 ………………ああ、もう。

 何度も何度も、同じ事を繰り返すなよ、僕。

 

「とっくに」

「……え?」

「とっくのとうに、もう、そのつもりでは、あるんですよ……」

 

 静寂。

 ……耐えきれずに、まとまらないまま口を開く。

 

「ただ、もっと……もう少し、ちゃんとした……場で……その。何と言えば……」

「……ふふっ」

 

 笑われ……やっぱ何も言わなきゃ良かったよ。

 隣見れないって、もう。

 

「笑わないで下さい……」

「ふふふっ、いーやーですっ」

「何でですか、真剣なんですよ」

「それがわかってるから、です。嬉しいんですもん。不器用だけど、愛されてるんだなぁ、ってわかるから」

 

 ……どんな顔でその台詞を聞けばいいんだ僕は。

 

「ふふ、照れてますね」

「悪いですか」

「全然? もっと照れて下さい。かわいいので」

「さいですか」

 

 はよ終わってくれ、この状況。

 頼むから終わってくれ。

 しにたくなる。絶対に死なんけれども。

 

 ◆

 

 ■

 

 

「……お?(´^ω^)」

 

「お?(´^ω^) お?(´^ω^)」

 

「お〜……(´ΞωΞ)」

 

「おあつ~いねぇ〜……(^m^)」

 

「青春だ〜……(#^^#)」

 

 

 ■

 

 ◆

 

 やはり、コルタナは暑い。

 耐えられるのは<マスター>故か、あるいは2度目だからか。

 

「あ、あは、いらっしゃった、いらっしゃった。はい。【使徒】さま方ですよね?」

「はい、そうですが……」

 

 いつ見ても心配になる具合の神官さんを始めとして、少人数で切り盛りされるこの教会。

 一応の挨拶に来たが、前に来た時……“冥王”との商談で来た時より、8割増しで様子がおかしい。

 

「大丈夫ですか?」

「かの、彼女に、フラれちゃって……あなた方を見ていると、つらくって、ははは」

「……ご愁傷様です」

「同情するなら出会いを下さい」

 

 急に落ち着かないで欲しい。怖いから。

 目もキマってるからいっとう怖い。

 

「……お祈り申し上げます」

「あは、あはは! ありがとうございます! これでなんか行ける気がする! 待ってろ僕の可愛い子ちゃん!!」

 

 ……シアさんの祈りを受け、走り去っていく彼。

 無理な気がしてならないが、果たしてどうなんだろうか。

 

「取り敢えず、清掃から」

「はい」

 

 前に掃除をシアさんとミスティさんがしたらしかったが、砂塵や汚れは復活してしまったらしい。

 聖職の方々が基本あんななんで……傷心の彼も前はクソ酔っ払ってたし……まあ、さもありなん、だろうか。

 敬虔なお手本をいつも隣で見ているせいで、落差がえげつないんだよな。

 

 旅の荷物を、アイテムボックスへ一纏めに出来る世界で良かった。

 申し訳は無いが正直管理が杜撰そうで、ここに荷物を置かせてもらいたくはない。

 

「お水持ってきました!」

「ありがとうございます」

 

 ……じゃ、やるかあ……。

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