系統樹に触れた物書きの話   作:ヘッドカノン

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また閑話です
旅の一コマは基本こんなのでいきます

5000UA突破、ありがとうございます




EX2:またなくて

 

 砂漠地帯へ滞在を始めて暫く経ち、経験値や旅の費用を稼ぐついでに、クエストを受注した今日このごろ。

 

 竜車代ぐらいは教会から出るが、それ以外については自費なのだ。

 ……コルタナからの出立に関しては、それすら自費になりそうだが。

 

「いんやぁ! あンの高名な<マスター>さまに守って貰えで、オラ達ぁ光栄だンべや!」

「ンだンだ! 道中の長ヘビやら長ムシやらもイチコロだンべ!」

「……はい、お任せ下さいっ!」

 

 結構訛りがきついが、ギリギリ聞き取れるのは<マスター>の翻訳機能の賜物か。

 尚、シアさんは聞き取れないらしいが、雰囲気で頑張っている。《託宣》も役に立たなかったらしい。

 

「っと、シアさん」

「はい──《ホーリーステイク》!」

 

 光の杭が打ち放たれ、甲高い奇声を上げ飛び出した【サンドワーム】がぶち抜かれる。

 一瞬の出来事に静まる周囲であったが、やがて歓声が上がった。

 

「やぁっばりさンすがだべや!」

「<マスター>様々だ!」

「おらだぢにゃ報いるお金もあンまりね゛ぇけんど、ちゃぁんど村でおもてなしさせで貰うがンな!」

「ンだンだ! 村長(むらおさ)の秘蔵のヘビ酒振る舞って貰うだ!」

「お酒はちょっと……」

 

 しかも蛇酒……まあ、まむし酒みたいなもんか。

 あれ大分好き嫌い分かれるだろ。客人に振る舞うなよ。

 

「……まあでも、ご招待には預かります」

「はい!」

 

 ◆

 

 着いた先は、岩場に囲まれた村落だった。

 高く聳え立つ岩肌は風雨も凌げそうで、ここに住み着いた理由がよく分かる。

 ……何だったか、大昔に見た感じが……ああ、クナファだ。色々と惜しかったな、あのゲームは。

 

 どんとちゃっか、どんとちゃっか、みたいなお囃子と共に、運ばれてくる料理の数々。

 穀類を使ったパン的な何か、チーズっぽい塊、香草のサラダ、豆と肉をスパイスで煮込んだ料理……等々、おおよそインドの田舎で食べれそうな、それでいてあれら以上に味のいいご馳走。

 

 こちらの素材は基本に質と味が良く、シアさんのようなダークマター職人はさておき、僕のような“レシピ通り料理人”でもかなり良いものが作れてしまう。

 現実でもかなりの腕がある人なら、店すら出せてしまうほど。

 それに慣れた人々が言うご馳走、ともあれば、美味しいのは自明の理だった。

 

「……っ! っ!!」

「良かったですね」

 

 目が輝くシアさん。

 ……料理まで、クナファっぽいんだよなぁ。

 

「うん、おいしい」

 

 スパイスの効いた煮物をパンに載せると、小麦っぽい香りに豆の食感や肉の脂、爽やかなスパイスがよく調和している。

 少ししつこさもあるが、香草のサラダはそれを中和する役割だろう。箸文化の村なお陰で、食べやすくて助かった。

 チーズは味変。火で炙りとろけたそれを載せると、スパイスの刺激が中和され、乳脂肪分の旨味が口いっぱいに広がる。

 

 総じてエスニック。人は選ぶかも知れないが、僕らは美味しく頂けた。

 

「持って来だべや!!」

「やめてぇぇぇぇ! 最後の! 今年最後の1本なのぉぉぉぉ!!」

()()()()って薬師に言われてンだ! 我慢しろ!」

「いやあぁぁぁぁぁぁ──」

「あれは……?」

「……無視で良いかと」

「そうですか……」

 

 何か、悲しいものを見てしまった。

 お婆さんが引きずっていかれ、名残惜しそうに震える手を伸ばしていたのは水瓶。

 恐らくあれが村長で、その所持品となると、恐らくはあれが……。

 

「おお! ヘビ酒だ!」

「村長のヘビ酒は絶品だべ!」

 

 だよなぁ。

 木酌で注がれ、回されていくコップ。

 注がれる中身は……黒い。漆黒。いや、どす黒い。

 

「<マスター>さまがだも、どうぞお飲みぐだぜぇ」

「いや、僕は弱いので……」

「私も、ちょっと……」

「遠慮なぐ。村長は体もよわぐで、薬師に飲むの止められでんだ」

「あの人飲まんど体震えるンだ。病気だ病気」

 

 ……やっぱりアル中かあのお婆さん。

 それを村がかりで止めてるのか……良い人らだな。

 ううむ……。ここで断るのも気が引ける、か?

 最悪シアさんも居るし、どうにかなるだろう。

 

「では、失礼──」

「駄目ですよソウ様! 飲んだら……飲ん、だら……やっぱり、良いかも……いや駄目です」

 

 何かしらに負けかけただろこの人。

 ……あのときの列車の諸々を想像したのか?

 …………そんなに、酔ってる時の僕は積極的だったのか。

 

 なんて、少しの恥ずかしさに気を取られていたせいで。

 

「飲むんだったら──」

 

 がっしりと、差し出されたコップを2つとも受け取る彼女を、止められなかった。

 

「──私が! くぴ……」

「あっ」

「おお!」

「良い飲みっぷりだンべ!」

 

 ◆

 

 大体シアさんは多分、その後も含めて……4から5杯ほど呑んでた気がする。

 

「そうしゃまぁ〜……うへへへぇ……」

 

 そのおかげかせいか、彼女は出来上がっていた。

 すりすりと、懐いた猫のように頭を擦り付けないで欲しい。色々揺らぐ。

 やるのはちゃんとあれの返事をしてから。

 まだ返事は出来ていないし、今は酒が入っているから出来ない。

 故に手を出すわけには行かない。

 

 村の皆さんに空いた家を貸して頂けたのは良いが、“防音性”について凄まじく熱弁されたのは、まあ、そういうことなんだろうよ。

 確かに造りはしっかりしているし、寝室が家の中央に、丈夫な壁に囲まれる形で位置している。その周囲を囲むように、居間や厨などがあった。

 空気の層を作り、その中に家具なども置くことで、消音性や災害への防壁としての役割を持たせているのだろう。

 

 しかし……。

 

「らいしゅきぃ……ふふふ……」

 

 これは拙過ぎる。抱きつかれて腹に顔を埋められた。

 般若心経か。般若心経がいいか。そうしよう。

 心で念仏を唱えれば、きっと精神は揺るがない。

 

「──ぁはっ、おっきくなってる……」

 

 精神が揺るがずとも身体が反応するかぁそっかぁ!

 

「そうさまぁ……ずっとまってるんですよぉ……」

 

 仏説仏説仏説仏説仏説ッ!!

 

「だからぁ──」

 

 ぶっせ──ああ゛っ!?

 

「──もう、またなくて、いいですよ、ねぇ?」

 

 押し倒、された……ッ!!

 こちらの腕を抑えつけ、にへらと笑うその瞳には、明らかな情欲が宿っている。

 こういうのって艶笑って言うんだよね。小説以外で使う機会が来るとは。

 ……現実から逃げてる場合かアホ。

 

 しかし、STRはあちらのほうが上。

 《パワープレイ》を解除するか? いや、明日コルタナへ戻る際に支障が出かねない──っ!

 

「わたしのぉ、はじめて……あげますねっ」

 

 クソッ、100歳超え喪女が酒の勢いで暴走してやがる!!

 どんな同人誌だ!? 商業誌か!? 永遠娘なのか!?

 嬉し……くない訳は無いけどさ!? 今じゃないだろ絶対!!

 酒の勢いでやったら死ぬほど後悔する! シラフでしっかり睦み合いたい!!

 

「ちゅー…………」

 

 顔が寄せられる。あり得ないぐらいタコ顔だ。息も酒臭い。

 ま、まあまあまあまあ、一旦キスは良いか。もう何回かしてるし。

 

 目を閉じ、その接触を待つしかない。

 待つしかないのだ。

 ……待つしか、ない……。

 …………な、なん、遅くな……えっ?

 

 胸の上に、何かが落ちる感触がした……した、んだけども。

 

「……すぅ……すぅ……へへ……」

「……え、えぇ……?」

 

 寝ている。

 幸せそうに、ふへへと笑いながら寝ている。

 

「そう、しゃ……えってぃ……」

「エッティ」

 

 何だよそれは最早。借りぐらしか。

 

 ……でもまあ、うん。

 

「……ふへ、ぁい……しゅき……」

「……お休みなさい、シアさん」

 

 とりあえず頭を撫でて……胸を撫で下ろす。

 

 セーフ。

 セェェェェェフ……っ。

 ……愚息をどうしようか。これ。

 

 ◆

 

 復路をがらがらと荷馬車、いや、荷駱駝車は進む。

 きっとあれは駱駝だろう。瘤も背についているのだから。

 

「……あの」

「はい? どうかしましたか?」

「昨日は、その……」

「ああ、“酔っぱらってそのまま寝てしまいましたから”、ね。大丈夫ですよ。よくある失敗です」

「そ……そう、ですよね!」

 

 嘘は言っていない。嘘は、な。

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