系統樹に触れた物書きの話   作:ヘッドカノン

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7:ついんてーる

 滞在して半月経つが、色々あった。

 ……まあ、本当に。

 

 そして。

 

「やっほー(#^^#)」

 

 その“色々”の中でも、今回は群を抜いていた。

 

「…………」

「なんで、貴女が……!?」

 

 継ぎ接ぎの肌。血色の悪い顔。

 ジップアップパーカーを前開きにして、ホットパンツとチューブトップ以外を着ていない、ツインテールの似合わぬ女。

 

「企業秘密(*´艸`*) まあとにかくさ──」

 

 あの時討ち取った【屍肉姫】が、“既死の怪物”ケージが、僕らの目の前に、姿を現した。

 

「──ちょっと、駄弁ろうよ(ΦωΦ)」

 

 ◆

 

 ──後を付けられている。

 その予感が確信に変わったのは、門を四回右に曲がって、尚も付いてくる気配があったから。

 人気の無い路地を抜け、太陽の位置も確認したのだから、間違いなかった。

 

 そのままフィールドに出て、砂漠の廃墟群にまで足を運び……尚もひたすら付いてくる。

 ずさんに過ぎて僕ですら気付くものだったが、相手が分からず、目的も分からない。

 街の付近では危険と判断し、ここで対処をしようと振り返った僕らを待ち受けていたのが──

 

「あれ、結構けんのん(゜-゜)」

 

 ──ぼごぼごと吹き上がる屍肉が成した、彼女の姿だった。

 今は呑気にぽかんとしているが、危険な相手でない理由にはならない。

 

「……剣呑にもなるでしょう。敵ですから」

「え、敵なの?(;O;)」

「…………そもそも、なんで<監獄>へ送られていないんですか……?」

「だから企業秘密(´艸`) 2度もいわすな(・д・)」

 

 一瞬殺気が向けられたが、すぐに収まった。

 本当に話す気はないのだろうし、敵意もない……のか?

 

「シアさん」

「……嘘は、言っていないと思います」

「お、《真偽判定》?(^ν^) ありがとね(・∀・)」

 

 ……シアさんが震える。

 スキルの判定すら信じられないくらいに、異常な状況。

 

「嘘じゃないってわかってもらっただろうし(-.-)」

 

「さっそく駄弁ろうぜ(#^^#)」

 

 ……本当に、何が目的なんだ。

 

「まあ、そうだね( ´∀`) 座ってよ適当に(・・)」

「……ここの主、なんですか?」

「違うよ(^o^;)」

 

 ……まあ、今は従うか。

 適当な瓦礫に腰掛けた相手を見て、僕も近くへ腰掛ける。

 少し狼狽えたシアさんも、それに続いた。

 

 それを見て、下卑た笑みを浮かべた女が口を開く。

 

「じゃあ早速なんだけどさ──君たち好きピ同士なん?(*´ω`*)」

 

 …………。

 …………はあ?

 

「はい?」

「好き、ぴ……?」

「好きなpeople、略して好きピです……ではなくて!」

 

 こいつは何を言ってるんだ? マジで。

 

「だってさだってさ(*´∀`) 竜車の中でこっそりほっぺにチュー──」

「殺しましょう、ソウ様」

「待って待って待って。え、はい? いつです?」

「2週間前、車内でスヤってる時に、そーっと……(*´艸`*)」

「わーっ! わーーっ!!」

 

 真っ赤な顔で殴りかからんとする彼女を、羽交い締めにして食い止める。

 これが火事場の馬鹿力か? STR負けてんだぞこっち。

 

「そんでもって2人に初めて会ったときもさ(゚∀゚) 何か抱き合ってたし(●´ω`●) 絶対どぅえぇ()くぃ()とぅえぇ()るぅ()、よね?(^^)」

「……やっぱ殺したほうが良いんじゃ……?」

「ですよ!」

 

「──殺せると思ってる?」

 

 殺気。

 

「あれは不意打ち。今は会敵」

 

「流石に舐め過ぎ。お前ら雑魚敵」

 

「……なんちゃって(´・ω・`)」

 

 気づけば、息が切れるのが解る。

 重みがスッと消え、あとに残されたのは……もんにょりとした表情の【屍肉姫】。

 

「韻を踏もうとしすぎた(〃ω〃)」

 

 ……然程踏めても無かったぞ。

 

 しかし、言っていたことは真っ当だ。

 あのときは不意打ちで、全速力の《エグゾースト》で突貫し、倒し切ったのだ。

 今目の前にいる相手には、同じ手が通用するとは思えない。そもそもさせてくれる訳が無い。

 ……運よく倒せたとはいえ、格上は格上だ。

 

 まあでも、今の言葉で激昂して襲って来ない辺り、本当に敵意は無さそうで。

 

「本当に駄弁りに来た、それだけなんですか」

「だーかーらー(=_=;) そうだって言ってるしウソも言ってないでしょ(´・ω・`) 信用できないのわかるけどさ(TдT)」

 

 シアさんも頷いている。嘘はない。

 そろそろ……もう、仕方が無いか。

 

「わかり、ました」

「そ、ソウ様……!?」

 

 ……いや、根まで信じる気は無い。

 ただ戦っても勝てないし、拒否して暴れられてもそれはそれで困る。街が結構近いし……とにかく。

 だから、こう……伝われ……伝われ……!

 

「……わかり、ました」

 

 よし! 目配せが通じて良かった。

 ここはあの女を信じて、駄弁に臨むしかないのだ。

 

 ◆

 

 信じるんじゃなかった。

 

 ……いや別に、結局戦う羽目になった訳では無い。

 

「いやー(#^^#) りょーしつなお砂糖だこと(*´﹃`*)」

「……はぁ……」

「……もう、やぁ……っ!」

 

 全部聞かれたし、ぜんっっっっぶ言わされた。

 眼前の継ぎ接ぎカプ厨女に、懇切丁寧に隅から隅まで、僕らの諸々を……もだもだし尽くしてる沙汰を説明させられた。

 お陰でこちらは疲弊しっぱなしだ。

 

 あまり死にたくはないし、街に被害も出したくないし……何より、シアさんにはもう、意味の無い戦いをさせたくない。

 満足させて帰すために、色々なものを削り過ぎた。

 ホクホク顔してんじゃねぇよお前さぁ。

 

「でもあれだね(・o・) なのにマルクスの友達なんだ(・_・;)」

「……まあ、はい」

「私たちの出会ったきっかけですし……命を間接的にお救いいただいていますから……」

「へーめずらしー(゚д゚)」

「……珍しい?」

 

 そう言えば、この犯罪者を“昔の上客”とか言っていたな、あいつ。

 昔のあれがどんなプレイをしてたのかは少し気にはなるし……まあ、一旦聞いてみるのもありだろう。

 助けたのを珍しいという辺り、大体の想像は付くが。

 

「どんな感じでしたか、その、貴女から見たマルクスは」

 

 僕の言葉に【屍肉姫】は、少し考えるような素振りを見せた。

 

「んー……ティアンをティアンとしてしか見てない?(ー_ー;) サイアク材料かも(・.・;)」

「なっ……そんなこと無いですよ!」

「いえ、シアさん」

「っ、ぇ…………?」

 

 荒げる気持ちも解るが、僕は知っている。

 というか、やっぱりとしか思っていない。

 

「あいつは、そういう奴です」

「……え、えぇ……?」

「人当たりのいいフリ、はすると思います。ここはそういう世界ですし、キャラクター(性格)もそういうものにしているでしょう。ですがそれだけです」

 

 ただあいつは、ロールプレイヤーなだけなのだ。

 ここへ来た当初の僕のように、ゲームはゲームと割り切れる。

 ……そして僕が出来なくなった今も、あいつは出来続けている。

 きっとそれだけなのだ。

 

「恐らく……見た目や名前も違ったのでは?」

「そうそう、オルワンくん( ^ν^) シュッとした美形だのにわざわざデブヒゲに変えてる( ゚д゚)」

「オルワン……あの“葬儀屋”、ですか?」

「はい。そうです」

 

 “葬儀屋”オルワン・ロー・シーリング。

 マルクスの営む、<屍財工務店>の屋台骨。

 

「しかし……やっぱりそうでしたか。現実の名前の捩りですからね」

「へー( ゚Д゚)」

 

 鳴海総一郎。

 All(総て) One(一つ) Rou() Sea() Ring(鳴る)

 

 いつ見てもローの部分どうにかしろよとしか思えない、どうしようもない名前。

 随分前に気付いてはいたが、あちらから言い出すまでは何も言っていない。そういうロマンは理解しているつもりだ。

 

「他には、どんな事をしていましたか?」

「気になる(・・?」

「まあ、一応は」

「そうだなー……(~_~)」

 

 勿体ぶらないでくれ。興味あるにはあるけどそこまでじゃないんだよ。

 

「もうちょっと興味あるなら、レジェンダリア行ったほうが早いかも(*´ω`*)」

「レジェンダリア、ですか?」

「っ」

 

 隣から、息を呑む音。

 

 シアさんの故郷。

 アルターへ逃げ延びる前の、居場所。

 そのまま【屍肉姫】が“場所は”、と続け、言い始めたのは“どこどこからどこのあたりの森の中”というアバウトな情報。

 

「死霊術って割とアングラだからさ(ー_ー;) 隠れ家で色々やってたんだよ(ΦωΦ)」

「なる、ほど……」

「マルクス様って、死霊術師だったんですか?」

「ええ。【死霊群師】と聞いています」

「いや【死将軍】ね(;´Д`)」

「…………」

「超級職、だったんですか……?」

 

 【死将軍】。死霊群師系統の超級職、だったか。

 可哀想なマルクス、諸々のロマンを全部バラされていやがる。

 まあ、言うタイミングが遅いあいつの自業自得だ。

 

「んじゃ、ぼくは帰ろうかな(*^▽^*)」

「……ありがとうございます」

 

 帰ってくれて。

 

「いやいやこちらこそm(_ _)m それと──」

 

 眼前に迫る顔。

 唇に触れる、柔らかく、腐臭の漂う何か。

 

「──<超級>になったら、リベンジしにくるよ」

 

 ペロリと舌を出し、いたずらっぽく笑う、継ぎ接ぎの女。

 

「じゃあね(^o^)」

「……あっ!! ああああああああっ!!!!」

 

 【屍肉姫】はそのまま、打ち放たれる光の杭の数々を軽々と避けながら飛び去っていった。

 それを見送り、ゼェゼェと息を切らすシアさんの背には、ありありと怒りが滲んでいる。

 

「ソウ様っ! 何黙ってちゅーされてるんですか!?」

「……あの速度を僕が避けられる訳無いでしょうに……最悪だマジで」

 

 役得とは全く思わない。腐臭や元敵対者という故も相まって、どう足掻こうとも不快感が勝る。

 

「上書きしますか? しますよね?」

「…………」

「照れるなら今しますっ!!」

「えっ、止め、んぶ……っ」

「ゔっ……ぅえっ、腐った肉の味……」

 

 ……マジで何だったんだ、あの女。

 でも、そうか。

 

 ──もうちょっと興味あるなら、レジェンダリア行ったほうが早いかも(*´ω`*)

 

 興味があるなら、なあ……。

 道程としても、次の国はレジェンダリアだし。

 …………うん。

 

「……シアさん」

「うぅ、は、はい?」

「次の国へは、もう少しゆっくり落ち着いてから、行きましょう」

「……そう、ですね。まだ、半月はここにいられますから」

 

 気になりはするが、時間は無駄に沢山ある。

 そんなに焦ることもないだろう。

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