系統樹に触れた物書きの話   作:ヘッドカノン

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閑話
前後編です


予約投稿ミスってました
すいません


EX3:いせき

「ふ……っ!」

 

 上段から袈裟に振り抜かれたグラインダーは、《拘縛の帯紐》によって縛られた魔術師風の骸骨を、見事に粉砕する。

 その隙を狙った一撃を躱し、お返しに光の杭。飛んでいったそれは、目前のミイラと後方の弓兵の亡霊を貫き、光の塵へと変えた。

 

「っ、とと」

 

 安堵も束の間、今度はそこへ拳が振り下ろされる。

 雑魚とはいえ、この場では尤も面倒な【アーマード・コロッサル・スケルトン】。

 その対処をする為にも、まずは周りを蹴散らすのみ。

 

 拳を翻るように避け、立った砂煙を縫うようにして矢が3本。

 それを僕で打ち払うと、飛んできた方向へシアさんは猛進する。

 まずは1匹。

 肉薄した骸骨の弓兵に蹴りを入れ、上段からの振り下ろし。

 2匹目は真横。

 鋸刃を擦らせ、火花を立てながら、側面を振り抜く。

 3匹目は少し遠く。

 振り抜いた勢いのまま回転し、僕を投擲。柄に巻いた《帯紐》を手繰り、方向を若干調整しながら、吸い込まれるように飛んでいき……直撃。

 

 《貴方と共に私は在る》……小っ恥ずかしい名前のスキルで手元に戻され、残るは【コロッサル】1体のみとなった。

 

「─────!!!」

「はっ!」

 

 図体がでかく、耐久力と火力はあるが、動きは鈍い。

 振り下ろされた腕の上を駆け上り、顔の側方へ突き進む。

 

「《エグ──」

 

 そのまま、しっかりと溜めを入れて。

 

「──ゾースト》!!」

 

 加速を付け、横っ面をぶん殴った。

 蹴鞠のように千切れ飛ぶ頭を眺めながら、光の塵と化す身体から、軽々と飛び降りて着地する。

 

 その体や衣服には瑕疵は見えないが、顔にはありありと疲れが出ていた。

 

『お疲れ様です』

「お疲れました、もう……あと何回倒せば出られるんですかここ……」

『入口には100と書かれていましたから……あと32回は要りますね。多分』

「……心が折れそうです……」

 

 この遺跡での戦闘は、今ので68回目になる。

 かのモンスターらは幻像のようなもので、実体や攻撃能力はあれどドロップ品を残さないともあれば、徒労感は凄まじい。

 

 なんでこんなボスラッシュめいたことをやらされているのかといえば……まあ、そういうクエストに当たってしまったのだ。

 

 ◆

 

「ここが……クエストの目的地ですか」

「なんだか深そうですね……?」

 

 今回受けた依頼は2つ。

 1つは遺跡の探査。難度は僕らからすれば低く、問題がなさそうなもの。

 もう1つは、この遺跡を探索しにいった冒険家の救出。

 こちらが主目的であり、難度もかなり高い。僕らですら少し手間取るぐらいとされている。

 

 入り口の奥は闇に包まれ、判然としない。

 しかしながらかなり深いのは解る。どこかに繋がっているのか、風鳴りの音も聞こえてくる。

 

「警戒は怠らないように』

「はい」

 

 グラインダーを携え、ゆっくりと足を踏み入れるシアさん。

 1歩、また1歩と暫く進んで行くと、突然、周囲に灯りが齎された。

 

 奥には石の扉と、100と刻まれた石板が見える。

 

「なん、でしょうか、あの数字……」

『さあ……?』

 

 警戒しながら扉に手を当て、押し開くと……光が灯り、現れたのは玄室。

 複数のエネミーと、その先にある扉と、99と記された石板とを見て、その時点で僕だけは察した。

 

 “これ、格闘王への道じゃね?”、と。

 

 そして倒し切り、扉を開けた先のエネミーと、98の文字を見て、僕は確信した。

 

 “これは、格闘王への道だ”、と。

 

 ◆

 

「終わったっ! よしっ!」

 

 死んだ目で【アビスデリュージ・グレーターリッチ】を葬ったシアさんが雄叫びを上げる。

 記された石板の数字は1。残す部屋をあと1つにして、喜んでいるのだ。

 受けたダメージはそうないが、MPは結構消費している。《マナドライブ》ありきでこうなのだから、無かったらと思うとゾッとしない。

 

『お疲れ様です』

「帰ったら一緒にお風呂入ってください!」

『……水着であれば、構いません』

「っ!? 言質とりましたからね!?」

 

 まあ、そのぐらいの労いは許される奮闘だと思うのだ。

 私欲ではない。決して私欲に負けたわけではない。

 

「そうと決まれば……!」

『…………』

 

 精神性が男子中学生みたいなときと、淑女めくときと、聖職者然とするときとで差が激しすぎる。

 若干、それで良いのかなと呆れつつも、勢いよく石の扉を蹴り開けた先にいたのは──

 

「──Krrrrrr……?」

 

 【纏糸硬蟲 アラデメイル】

 

 ──目を覚ました<UBM>だった。

 

 おそらくは遺品と思われる衣服の破片と、散乱した物品。

 それの真横に居る、糸を全身に巻いた大蜘蛛。

 眠り呆けていたのか動きは緩慢だが、図体は非常に大きい。

 

「……これのことだったんだぁ……」

『もしや、《託宣》で判ってたんですか?』

「何かが居るなぁ、まあまあ脅威も大きいなぁ、とは……」

『じゃあ──』

 

 絶叫を上げたのは【コロッサル・ドラゴンゾンビ】。

 蜘蛛に体の大半を食い千切られ、光へ還っていく。

 恐らくはこの部屋の元の主であったのだろうが、今はそれよりも強い奴が居る。

 

「KrryyaaaaaaaAAAAAA!!」

 

 雄叫びを上げ、こちらへ猛進する【アラデメイル】。

 

「──なんでもうちょっと警戒しなかったんですかぁぁぁぁ!?」

『ソウ様が報酬で釣ったのが悪いんですぅぅぅぅぅ!?』

 

 その突進を、全力で回避する他には無かった。

 

 これ僕のせいかな?

 僕のせい、かなあ!?

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