系統樹に触れた物書きの話   作:ヘッドカノン

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続きますが、章が分かれます

6000UA突破しました
たまげてますよ




ともだち
1:かくれが


 

 レジェンダリアへの滞在を始め、凡そ1週間半。

 

「ここが……ですか」

「……多分、そうですよ、ね?」

 

 鬱蒼と茂る森の中に、ぽつんと建った木の小屋。

 これが、かの【屍肉姫】が宣った、マルクス……もとい、オルワンの隠れ家であるらしい。

 今日ここにやってきたのは、昨日済ませられなかった用事、それを終わらせるためだった。

 

 あの女……【屍肉姫】に“興味があれば行くといい”、と言われたが、無い訳が無かったのだ。

 あいつの黒歴史を見つけ、どうにかしてそれをつつく。

 それが今日の目的であり、シアさんには白い目で見られたが……どうにかご了承頂いた。

 

 扉に手を掛けると、音を立てるも難なく開く。中には下に伸びた階段だけがあった。

 それは薄暗い、じめついた地下へと続いている。

 

「……一応、私が先に行きます」

「……そうですね。すいません」

 

 この狭さでは武器にもなれず、またステータスはシアさんのほうがどう逆立ちしても高い。

 先導してもらう他には無さそうだ。

 

 ゆっくりと、慎重に、石積みの不揃いな階段を下りる。

 そして……どのくらい降りただろうか、前方に扉が見えた。

 

「……開けます、ね」

「はい」

 

 扉をシアさんが開けると、灯りが差し込む。

 

「……うっ!?」

「これ、は……!?」

 

 それと同時に……濃厚な血の香りも。

 死霊術に使われていたから、と言う問題ではない。鮮血が部屋中のそこらに散らばり、辺りを汚していた。

 にも関わらず、死体の1つも残っていない。

 

 中へ入り、様子を確かめる。

 やはり血は多いが、肉片や骨片は無い。

 しかし。

 

「何に使って、と言えば、死霊術、なんでしょうか……?」

「……それにしては、生活感がありますね」

「そう、ですよね?」

 

 板葺きの床で構成された、酒場のようなスペース。

 カウンターの奥には酒瓶も並び、隠れ家が隠れ家し過ぎている。

 机に転がったジョッキも、ほのかに漂う酒気の香りも、転がる料理も、さっきまでそこに誰かがいて、皆殺しにされたような。そんな具合だった。

 

 ……黒歴史を探しに来たつもりが、急に事件の香りがし出した。

 どうしようこれ。

 

 ◆

 

 部屋を探索してみるも、死霊術の痕跡は1つもない。

 その代わりに。

 

「……おお」

 

 カウンターの奥、ワインセラーらしき棚が、隠し戸になって開いている。

 開きっぱなし、とどのつまり、誰かが入った後。

 

「道幅も広いですし……ここからはグラインダーで行きます」

「はいっ」

 

 片手に携えられたまま、僕らは奥へ、奥へと進んでいく。

 

 数回曲がり、階段をさらに降り。

 その先にあったのは、何かのシンボルマークが刻まれた旗。

 相変わらず血の匂いは濃く、床を度々汚していたが、広間に残る銃痕と薬莢が、その凶器を物語っていた。

 

「珍しいですね……」

『まあ、そうですね』

 

 あまり使っている人を見ない火薬式の銃火器。

 使ってる人と言えば、身近な人に秘書さんがいるぐらいか。

 強いには強いらしいが、そういうミリタリーチックな武器は、皇国領の方が明るいのだ。

 まあ天地には火縄銃もあるし、一概には言えんが。

 

「奥へ進みますね」

『はい』

 

 通路を曲がり、扉の並ぶ廊下へ。

 一番手前のものを開けると、そこは寝所であるようだった。

 二段ベッドが2つ、左右に並べられ、詰所のようにも見える。

 奥のラックには衣服が掛けられて……ん?

 

『あれ、は……』

「……っ、あ」

 

 シアさんが、か細い悲鳴を上げた。

 それもその筈。ラックに掛かっていた服は、あの時の……彼女が僕らと逃げる時、襲撃してきた暗殺者らのローブだった。

 

 ──ぅ、うる、さいっ……! おかあさま、を……!

 

 ……そして、その時の発言から……恐らくは彼女の母をも殺している。

 

「どう、して……?」

『ここに、いや……他の部屋も見てみましょう』

「は、はい!」

 

 隣の部屋も見る。同じ構造で、奥にはローブ。

 更に隣。構造もローブも同じ。

 隣。ローブ。

 ローブ。

 

 …………。

 

「どういうこと、ですか? なんでマルクス様のお家に、あいつらが……!?」

『……判りません』

 

 経緯が不明瞭過ぎる。

 

『奥へ進みましょう。手掛かりがある筈です』

「……っ、はい」

 

 今は情報が必要だ。

 そしてここが彼らの拠ならば……情報は、山のようにある筈だ。

 暗殺者の集団。あまりにも統率された、ごろつきとは思えない“兵団”。

 ならば、依頼書の1枚や2枚は、あって然るべきだろう。

 

 ◆

 

 ■

 

 

「はぁ」

 

 女は溜め息を吐く。

 上司からの依頼で、ここは不要と解体する事になった。

 それは良い。

 それは概ね同意だった。自分の手を離れるや否や非合法漬けになった、己の作った組織を、自分の手で潰す。

 それはいい。

 非合法漬けになったのは後釜にそういうのを選んだからだったし、そのお陰で縁も一気に切れた。

 素晴らしい。

 その由来から仕事は振りやすいが、非合法だから潰すのにも躊躇がいらない。

 ビバ。

 

 ……問題は、付近に居る2名だ。

 【使徒】アレクシア・エルヴンルードと、その剣たるタカキ・ソウ。

 それらが近くに居るとは知っていたが、まさかここへ来るとは、彼女は一切聞かされて居なかった。

 

 上司の悪癖に嫌気が差すも、いつもの事だと頬を張る。

 

(さって、とっと)

 

 眼前、部屋の中にいる件の【使徒】は、何かを読み耽り、こちらに意識を向けていない。

 

 そこへ向けるはバズーカ。

 この世界には似つかわしくないが、あるのだから仕方がない。

 

(当たらぬことを、祈ってーの、っと)

 

 当たればそれまで。きっと四散し、光の塵となる。

 しかし、当たらなければ……。

 

(……いざ!)

 

 引き金を引き、瞬時に着弾。

 轟音とともに爆発が起き、眼前の部屋の中を蹂躙する。

 地下全体が揺れて少し肝が冷えたが、崩れはしなかったようで一安心。

 

 土埃が晴れ、ぐちゃぐちゃになった室内が見える。

 天からの光が射すそこには、何者も、一欠片も残っていなかった。

 ()()()()()()()()、そこには。

 

「……はぁ」

 

 また、溜め息を1つ。

 部屋の中へ歩み入ると、天井はなく、代わりに地上まで続く穴が開いていた。

 

「……はぁ……」

 

 更に溜め息が重なる。

 そして少し屈んだかと思うと、女は勢いよく、その穴から外へ出ていった。




わかりにくい伏線というものを
張れる人間ではないのです
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