系統樹に触れた物書きの話   作:ヘッドカノン

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2:きようびんぼう

 

 ガリガリと土を掘り進め……地下から森へと飛び出た。

 

 突然チャージャーに変えられたと思ったら、そのまま上に向けられて、《エグゾースト》と《フルスロットル》。

 普段は《帯紐》で固定した上で使うが、今回はなし。

 腕への負担が心配だが──

 

「ふぅ、危なかった……」

 

 ──割と余裕そうだな。

 いや、確かに危なかったと言ってるけどさ、ちょっと軽く無いかな? 危機一髪だったんだぞ。

 

 ……まあ、そんなことより。

 

『書類は?』

「ボックスに入れました」

『ありがとうございます』

 

 部屋は想像するに滅茶苦茶だが、これでどうにか証拠は残っている。

 これを後は……いや、今は目の前のことを考えよう。

 

 先程まで《フルスロットル》で掘り進めた穴から、誰かが飛び出て来る。

 まあ大凡下手人だろうし、誰かも当たりはついている。

 

「……良く、御避けに成りましたね」

 

 やっぱり、貴女か。

 

「どの様な仕組みでしょうか、気取られている積りは無かったのですが」

「……その前に、こちらの質問に、答えてください」

「構いませんが」

「なぜ──」

 

 シアさんがアイテムボックスから取り出したのは、先ほど手に入れた文書。

 この地下にいたらしき暗殺者集団への、依頼書だ。

 その表にはこう書かれている。

 

 

 □依頼:エルフィリア・エルヴンルードの殺害

                   [遂行済]

 

 

 エルフィリア。

 それは、彼女の母の名である。

 そして、その下。依頼人の欄の名は。

 

 

 □依頼人:オルワン・ロー・シーリング

 

 

「──なぜ、マルクス様は、オルワンはっ……お母様に、刺客を差し向けたのですか……っ!?」

 

 剣幕と反比例するように、いつにも増した無表情を浮かべる秘書さん。

 

「……其れには、御答え出来兼ねます」

「どうしてっ!?」

「聞きたくば、本人へ直に聞くのが宜しいかと」

 

 目を閉じ、静かに息を吐く。

 

「わかりました、じゃあ直接聞きます」

「御聞きになった後、どう為さいますか?」

『理由はどうあれ、僕が1発殴ります』

「そう、ですか──」

 

 秘書さんが、ゆっくりと目を開く。

 

「──其れを成すと云うのならば……私は、此処で立ちはだかる義務が有ります」

 

 その両手には、いつの間にか機関銃──確か、UZIというサブマシンガン──が1丁ずつ握られていた。

 殺気が漏れ出て、空気がひりつく。

 

 ……言葉選びを間違えた。苛立ち過ぎたな。

 せめて少しは穏便に暈しておけば、邪魔も入らなかっただろうに。

 

『殺したところで蘇りますよ。そしてあいつの所へ行く』

「ええ、そうでしょう。ですので──リスキル致します」

『……ふざけたことを、言わないで下さい』

「巫山戯ては居りません、本気(マジ)です。72時間毎に、此処レジェンダリアのセーブポイントへ赴き、殺す。其れだけですので」

『それだけの労力を割く意味がありますか?』

「悪事を防ぐには不可欠かと」

 

 ああ、はいはい。そうですね。

 人を殴るのは悪いこと。わかりますよ。ええ。

 

『──バカやった友人を1発ぶん殴って何が悪いっ!?』

 

 だったらどうしたよこのヤロウ。

 解っててこっちは行くんだよ。

 

 最初の頃なら僕だって許容出来ただろう。

 所詮はゲームと、誰が死のうが一歩引けた。

 でも、今は……シアさんが居る。

 そしてそのシアさんの家族が、親しい人々が、あいつのせいで死んだんだ。

 

 そんなこと、許容出来る筈が無い。

 

「……そうですね。其れが、屹度正しいのでしょう」

 

 怒号へ返すように、銃口と、明確な敵対の意思が、こちらに向けられた。

 

「ですが──仕事ですので」

『ああっ……クソがっ!』

 

 こんな所で足止めされている場合じゃない。

 早くあいつに何もかも全部吐かせて、シアさんに土下座でも何でも──

 

「──ソウ様っ!」

『……シア、さん』

 

 …………落ち着け。本当に。

 一番真実を知りたいであろう本人よりも、お前が慌ててどうする。

 彼女の瞳は震えているが、確かな正気が見て取れる。強い女性だ。

 

『すいません。冷静になりました』

「良かったです」

『じゃあ……戦いましょう』

 

 足止めが何だ。

 そも現実でだって聞ける筈で、事実確認だってまだ済んでいない。

 偽造の可能性だって……線は薄いが、十二分にある。

 

「……本気、ですか?」

『はい。彼女は、あちら側でもあいつの部下です。ここで引き下がっても、妨害が無いとは言い切れない』

 

 ……ならば。

 

『だから……ここで彼女を倒して、オルワンを呼び出し、ぶん殴ります。そして全てを吐かせます』

「……やるしか、無いんですね」

 

 シアさんの母親を殺すように指示し、理不尽にもその幸せを奪った。

 その理由を、事実かどうかを、洗い浚いに知るために。

 

 握られたグリップに、力が入る。

 目を閉じ、深呼吸して……その目が見開かれた。

 

「──行きますっ!」

『──行きましょう!』

 

 瞬間、引き金が引かれ。

 銃声とともに、戦いの火蓋は切って落とされた。

 

 ◆

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 放たれる弾丸の雨を、縫うようにして掻い潜る。

 そのまま肉薄して、上段から勢いよく振り下ろされるグラインダー。

 それを受け止めるのはライオットシールドだ。……どっから出てきたんだよ。

 

「《ガードパリィ》」

 

 盾士系列のスキルにより、受け流され若干バランスを崩した所に、散弾銃での追撃。

 腹部を若干掠めたが、致命傷は免れた。回復呪文で対応しながら距離を取る。

 

「《デッドリー・エイム》」

 

 今度はそこへ長銃の銃撃。【狙撃手】のスキルと共に、頭を的確に狙って来る。

 腕の【アラデメイル】でどうにか弾き、バランスを取り直して……。

 

「《エグゾースト》っ!」

 

 再度肉薄。

 

「《パワーガード》」

 

 しかし、やはり受け止められる。今度は【大盾士】かよ。

 追撃の拳銃を掴んで反ら……そうとしたら消えて、散弾銃がお見舞いされる。

 咄嗟に僕でガード出来たが、続く銃撃に耐えかねてチャージャーへ。

 

 何とか戦えているが、かなり苦しい。

 

 今のシアさんのメインジョブのレベルは200ちょっとで、MP最大値はおよそ30万。

 そのうち20万を使った《パワープレイ》は、補正を抜きにしても5000ずつはSTR・END・AGIを上げている。

 グラインダーならば1万も超え、超音速の域に足を踏み入れてもいた。

 にも関わらず、先ほどの通りにいなし切られた。

 

 ──生産も戦闘も出来るって時点で器用貧乏っぽいですけど、いざ戦うとなると面倒臭いでしょう。

 

 いつだったか、そうシエンさんが称した理由が、今なら良く解った。

 手札が、圧倒的に多い。

 

 距離を取りながら、銃撃を僕で防ぐ。

 そこに飛んできたのは……先程部屋を吹き飛ばした爆発弾。

 

『ぐっ……!』

「うっ!?」

 

 すんでの所で避けたものの、爆風でダメージ。

 そのままガードが崩れた所を狙って、弾丸が1発、また1発。

 頭を的確に狙ったそれを、どうにか躱して──

 

「──《エグゾースト》!」

 

 ベルトの固定はなく、真っ直ぐに僕だけが飛んでいく。

 破れかぶれではあったが、どうにか避けに回らせ、攻撃の手を止められた。

 

 噴射が終わり、呼び戻されて手元に戻る。

 その形状は既にグラインダーになっていた。

 

 振り下ろしを盾で防がれ、そのまま横薙ぎ。これも防がれる。

 連撃、防御。それなりにある攻撃力を、盾で全ていなされて受け止められる。

 

 ……ライオットシールドといい、マシンガンやバズーカといい、可変形態式の武器だろう。

 しかしそれにしてはやたら防御力が高──っ!

 

『避けて!』

「っ! 熱……っ!?」

 

 後方へ回避したと思ったら火炎放射か。どんな特典武具だクソッタレ……!

 

 距離が離れて、再び掃射が襲う。

 完璧に仕切り直されてしまった。

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