系統樹に触れた物書きの話   作:ヘッドカノン

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 やっぱり誤字脱字が怖い




ぜんとたなん
1:ぐらいんだー


 まあ、色々あった。

 本当に色々あった。

 

 武器になってステータスが持ってかれたと思えば、急に人を護送するクエストに連れて行かれ。

 そうしてあれやこれやと話が進み、気が付けば己を振るう者が見つかった。

 意味がわからないが、実際こうなのだ。少し経って何度か夜が明けた今でも鮮明に思い出せる位には濃かった。

 

 そして、今は。

 

「わーっ! わー!! わー!?」

『ちょっ、待っ、振り過ぎ振り過ぎ……ぅえ゛』

 

 別の方向性で濃い1日を送っている。

 

 ◆

 

「貴女にダメージは禄に入りません」

「はい」

「落ち着いて」

「はい」

「慌てないで」

「はい」

「……はあ」

 

 地べたに正座をかまし、死んだ目で先程まで飛び回っていた【パシラビット】の残骸(ドロップ品)を眺めるシアさん。

 これで本当に戦っていけるのか心配になるが、戦って貰わねば困る。

 小説のネタ的にも、彼女の心情的にも。

 

「……っ」

 

 ガサガサと茂みが鳴り、顔を出したのはまたもや【パシラビット】。

 

「ほら、次が来ましたよ。お手を」

「っ、は、はいっ!」

 

 差し出した手を握られ、毎度のように武器へと姿を変える。

 

「《ウェポンシフト:グラインダー》」

 

 スキル名を発声するのは様式美というやつだ。彼女のモチベーションに繋がりそうだったのでやっているだけで、しなくても武器にはなれる。

 ほら見てくれよこの表情を。ご満悦過ぎるだろう。

 

 組み替わる感覚の後、視界が広がっていく。

 変化先は彼女の身の丈ほどもある大斧。ハンドガードのついた細い柄の先には、過剰とも言える大きさの斧刃が備わる。

 いや、斧と言うにはいささか異形に過ぎるだろう。何せ刃の部分に並ぶのは4列の鎖鋸(チェンソー)

 ドッドッドッという鈍い駆動音が、その出番を今か今かと待ち侘びていた。

 

 かなりの重量があるであろうこの姿を、彼女は腰の高さへ軽々と構える。

 そして緊張した面持ちはそのまま、物々しい得物を携えた少女は、眼前のウサギと対峙した。

 

『現状を確認します。今、貴女は《パワープレイ》の効果下にあります』

 

 

 《パワープレイ》

 MP最大値を任意の割合で一時的に減少させる。

 その減少量の2.5%をSTR・END・AGIの基礎値へ、25%を最大HPの基礎値へと加算する。

 重複して発動することは出来ず、また効果解除には少なくとも1時間の経過が必要となる。

 アクティブスキル

 

 

 《コントラクト》によって発生した武器としての装備スキル、その2つの内1つ。強力だがデメリットも大きく、MPの値によって効果そのものが左右される不安定さもある。

 しかし。

 

「はいっ」

8()()()()()貴女のMPの内5割ほどを注ぎ込み、貴女のステータスは前衛系上級職とタメを張れるものとなっています』

「凄いですよね」

 

 彼女は他人事のように語っているが、その種族(ハーフハイエルフ)故に生来MPが多いらしい。

 そんな甲斐もあって、STR・END・AGIは1000ほど、HPに至っては1万程度伸びている。

 

 そこへ僕自身(武器)の持つ装備補正──1%以下と微々たるもの──も加わり、彼女のステータスは到底【司祭】とは言い難いものへと仕上がっていた。

 

『なのでこの辺りのエネミーから、貴女は致命的なダメージを受けることはありませんし……』

「……ぶ……大丈夫……大丈夫っ……」

『……あの、聞いてます?』

「聞いてます大丈夫ですコワクナイデス!」

 

 なおステータスが仕上がってもメンタルが死んでいる。

 

「ダイジョウブダイジョウブウワアアアァァァァ!!!」

『ちょっと待って心の準b、あ゛っ! そんなに振るんじゃないっ!! 酔うから!!!』

 

 そして、冒頭をaとした場合の、a'辺りへと戻るのである。

 

 ◆

 

「ゔっ……ふぅ……ふぅ……」

「ごめんなさい……本当にごめんなさい……」

 

 流石に耐え切れず、一旦宿で横になる。

 自分より頭1つ背の低い少女に担がれ移動するのは癪であった。

 その少女がこうなる原因を作ったともなれば、正直言えば殊更に癪だった。

 謝られている以上収め、抑えはするが、正直堪える。

 

「あまり……お気に、なさらず……得手不得手は、誰しもありますので……」

「でも…………はい……」

 

 何事かを言おうとして、止める仕草。

 でも、って何だ。まあそれが出てこなかったから止めたんだろうよ。

 

「……イメージトレーニングは上手くいくのに……」

 

 そりゃあ上手くいくだろうさ。所詮は自分の都合のいい妄想でしかない──

 

 ガンガンガンガン!

 

「ぅえっ!?」

「……どちら様ですか?」

 

 乱雑に部屋の戸が叩かれる。

 

『タカキさん、私です』

 

 その音の主は聞き馴染んだ声で返事を返した。

 

「……開いてるぞ」

「はい、失礼しますよ」

 

 入ってきたのは予想通りにマルクス。

 いつも通りの格好で、いつも通りに太っている。

 ロールプレイとはいえ、現実との差が激しいものだ。

 

「何の用だ」

「いやいや、通りで“成人男性が女の子に担がれて宿屋に入ってった”、なんて噂話を聞きまして」

「…………」

「あ、あはは……ごめんなさい、私のせいで──」

「いや、皆まで言わないでください? 大方、戦おうにも上手く行かないって所でしょう」

「……お恥ずかしながら」

 

 こちらも同意の意を示す。

 少なくとも上手くは行っていないし、あまり厳しくしたくもないが、これで上手く行っている判定を下すほど甘くもない。

 

「そんなお二方に! 私がいい感じのクエストをご案内しにやって来た、ってワケです!」

「クエスト、ですか?」

 

 ……嫌な予感がしてきた。

 





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