系統樹に触れた物書きの話   作:ヘッドカノン

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2:じごうじとく

 酔いも覚めた、次の日の昼下がり。

 ギルドで待ち合わせをしていた僕らの目の前には、魔道士然とした緑髪の女性と、鈍色の金属鎧に身を包んだ戦士っぽい茶髪の男性が立っている。

 

「はじめまして、で良いな。俺は灰流(はいる)。んでこっちが」

「ミスティよ。よろしく」

「私のことはシアとお呼び下さい。よろしくお願いします、灰流様、ミスティ様!」

「様付けなんてしなくて良い良い、堅っ苦しくて肩が凝っちまう」

「……で、あなたは?」

「…………はあ。すいません」

 

 やっぱり、碌なことにならなかったか。

 シアさんが2つ返事で了承し、僕の意見は一切通らず話が進んだ時点でもう最悪だったが……より最悪だ。

 

「タカキ・ソウと申します。どうぞお好きなように」

「宜しく、タカキさん。小説好きなのね。見た目までソックリに作っちゃって……」

「ええ、まあ──」

「大好きだと思いますよ! だってご自身で本も書いてらっしゃるぐらいですから!」

「うん?」

「え?」

「ゔ」

 

 本当に最悪だ!!!

 

 ◆

 

 クエストの内容としては、ゴブリンの巣の偵察。

 我々は斥候、ないし一番槍として圧力を掛け、後続の手慣れた<マスター>達の突破口を作ったり、巣に警戒を回させ被害を減らす役割。

 何なら小規模なものなので、そのまま潰してしまっても問題なし。と、かなり自由であるが故に、力量に合わせてどこまで踏み込むかの見極めが要求される、ちょっと癖のあるクエストだ。

 少なくとも僕とシアさんとでこなせるクエストでないのは知っていたし、断りたかった……が、了承しちゃったからもう仕方ない。

 引率が居るとはいえ、足手まといになってシアさんの余計なトラウマも増やしたくなかった。でも本当に仕方がない。

 

「ほ、本物か……サイン貰おうかな……?」

「バカ! 止めときなさいよ」

 

 不用意な身バレもしたくなかったがもうどうしようもない……っ!!

 

「だ、大丈夫ですか……?」

「問題ありません。己の浅慮を恥じているだけですので……」

 

 現実の見た目とペンネーム持ってきて身バレしたくないとかどの口がほざいてんだって話だ。自業自得なのは分かっている。

 でも“ファンボーイってことで誤魔化せるだろ、ガハハ”って最初は思ってたんだよ。無理だったよ!

 

「己のネームバリューが恐ろしい……」

「……ちょっと嫌味くさいわね」

「結構ナルシっぽいんだな……」

 

 聞こえてるからなお前ら。仲良いな。大事にしろよ。

 

 こんな具合である故に、移動中の馬車の居心地が悪いこと悪いこと。

 あと尻も痛い。

 揺れに揺れて跳ねて、只管打ち上げ続けられる。

 あいつの持ってた車両って快適だったんだな、と今更ながら痛感した。

 

「あの、タカキさん?」

「……はい」

「戦闘の時の役割分担とか相談したいからさ、ちょっといい?」

「ああ……すいません」

「いやいや、謝ることないわよ!」

 

 これだよこれ。何か変に畏まられるんだよ。

 こういうのが嫌なんだよ。全部自業自得だけどな!

 ……何はともあれ、先達の指導というか、お手並みなどは見ておきたい。チームプレーの取りやすさからも、参加する他にないだろう。

 

「じゃあ、軽いブリーフィングを始めるわね」

「よろしくお願いしますっ」

「ご丁寧にありがと。で、私と灰流はずっとツーマンセルで戦ってたんだけど、主にコンボでハメ倒す感じね」

「無差別に装備品を破壊する煙を、こいつの風魔法で制御する。そうでもしないと使いづらくてなぁ……強ぇんだけども」

「その後を一網打尽、って感じね」

 

 紋章を軽く擦りながらぼやく灰流さん。無差別な代わりに効果が高い、みたいなことだろう。

 

「んで、私だけでも一応は戦えるわ。風魔法の燃費はすこぶる良いから、継戦能力も高め」

「俺の燃費は悪いから、ここぞって時にしか使えねぇんだ。だから基本的にはタンク役だな」

 

 纏う雰囲気から察するに、お二方には相応に自信があると見える。

 

「それで、あなた達は?」

「私は【司祭】で」

「僕が【戦士】を経由して、今は【死兵】ですね」

「うん、ティアンの女の子がいるって聞いてたから怖かったけど、後衛なら少しは安全ね。なるほど……」

 

 ……どうしよう。全然後衛ではないのだが。

 シアさんを見てみれば、確りと目が合う。同じ心持ちであるのが分かり易すぎた。

 

「タカキさんには遊撃……みたいに、自由に動いてもらいたいかな。で、シアちゃんは後ろで回復役。お願いできる?」

「あ、あの……」

「多分無理ですね」

「…………はぁ?」

 

 ◆

 

「知らない、知らないって……そんな<エンブリオ>考慮にいれるわけ無いじゃない……先に言ってよ……!」

 

 到着した<スコト村>から少し離れた位置で、ミスティさんは天を仰ぎ頭を抱えていた。

 

「申し訳ありません……」

『我々のせい、とは言いませんが、概ねあいつのせいですので、文句はこちらから拳の形でお届けします』

「是非お願いしますっ! 全くあんのヒゲオヤジ……!」

 

 不満たらたらのミスティさんに、苦笑いの灰流さん。

 “武器になってティアンに扱われることが前提”の<エンブリオ>なんざ想定できる方が異常だろう。

 

『とまあ、こういった具合でして」

「うわぁ、シームレスに戻った……」

「一旦そこは置いておいて、彼女……シアさんに戦闘のいろはというか、心構えや、動き方を教えて欲しいんです」

「いろは、っつっても……どんぐらい動けるんだ?」

「諸々の補正込みでSTR・END・AGIが1000を超えています」

「なら全然──」

「ですが【パシラビット】相手に半狂乱となり、【ティールウルフ】相手では全く動けなくなります」

「──……全然、ダメだな、そりゃ」

 

 そう思うよ、僕も。

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