BLACK PSYREN   作:どるき

30 / 62
Call.30「牡牛座の一等星」

 久々の東京見物にて街をぶらついていたドルキとシャイナは、ドサ周りの末にいくつかの情報を得ていた。

 

 ・スコーピオンを倒した民警『里見蓮太郎』なる人物が記録的なペースで昇格していること

 ・仙台エリアの有名人『望月朧』が東京エリアに来ていること

 ・確証はない噂に過ぎないが聖居と司馬重工がなにかを隠しているらしいということ

 

 幼女を食い物にして自堕落かつ嗜虐的な生活を送るアンダーグラウンドの民警たちの間で流れる僻みやっかみが混じった噂に過ぎないとはいえ、火のないところには煙は立たないと二人は噂の確認に奔走する。

 前者二つは二人にとっては大事ない情報である。問題は最後の噂、出所は斡旋所に司馬重工の私設部隊が民警の派遣を要請し、警視庁警視の肝いりペアが派遣されたという話が発端になっている。

 司馬重工がらみの仕事ならオアシがよろしいはずだとこの依頼に飛びついたアンダーグラウンドの民警も多かったそうで、何組かは斡旋の話が一度通っていたという事である。だがその素性を確認した司馬重工側が秘密保持を理由にして不採用とした。そのことを八つ当たりすると金一封の謝礼金で追い返されたというのだから、元より斡旋の話であぶれた民警たちからしたら宝くじに当たった人をうらやむように仲間内で僻む声が出ていた。

 アンダーグラウンドでは素性が悪い人間よりも警視と付き合いがある人間の方が信用されることは当然であり、警視の一声で採用が決まったことは仕方がないこととして扱われていた。逆に一度は採用の話が通ったものの追い返された面々が、タダで金を得た羨ましい奴として僻まれていた。そのため司馬重工が何かを隠そうとしていたことは噂においては誇張された尾ひれにすぎないが、ドルキはカンを働かせてこれを調べることにした。

 目撃情報から茨城方面に二回、司馬重工の航空機が飛んでいったことは確認したがそこから先は情報統制の賜物か掴むことができない。最後に司馬重工が大きく動いた目撃情報に合わせて外周区にて遺留品を調べるが、それも虚しく空振りに終わっていた。

 時刻は夜の九時を過ぎており、薄明かりに照らされてそびえたつ三十二号モノリスは不気味な雰囲気を醸し出していた。

 

「何も残ってねえな」

「だから僕は無駄じゃないかって言ったんですよ。どうせなら司馬重工から誰かを拉致して、トランスでいじくりまわした方が効率的ですよ」

「全員が情報を持っているとも限らねえし、第一拉致は犯罪だろう」

「今更そんなことを気にするとは思いませんでしたよ」

「気にはしねえが、一応これでもセーギのミカタなんだよ今の俺様は! 一般人を相手に危害を加えるのはおさまりが悪いぜ」

「ドルキさんってそういう縛りプレイが好きですよね。効率よりロマンの末に死を選ぶタイプでしょう?」

「うるせえ!」

 

 効率重視のシャイナはドルキの拘りにあきれてしまう。ドルキは持ち前の短気でシャイナを怒鳴るが、シャイナもこれで案外気が短い。にこやかな顔だが低く怒りを帯びた声でドルキを叱る。

 

「誰に対してそんな態度を取っているんですか? 嫌なら一生ここに放置して弥勒さんには事故で死んだと報告してもいいんですよ、『ドルキ第七星将』さん」

「……スマン、悪かったな」

 

 子供のまま大きくなったシャイナと違い子供のころの気持ちを忘れずに大人に成熟したドルキは、冷静になって自ら一歩引いた。このまま喧嘩を続けたら本当に置き去りにされるだろうことは長い付き合いで容易に想像できたからだ。

 ドルキはW.I.S.Eが自衛隊相手に小競り合いをしていた二十数年前に喧嘩をした際に、怒ったシャイナに戦車隊の正面にテレポートで飛ばされた時のことを思い出し、小さく「本当にやるからなあコイツは」と呟く。

 

「解ればいいんですよ。でも今日は遅いですし、とりあえず何処かで一息つきましょう。今後のことはそれから考えるということで」

「そうだな―――」

 

 二人は踵を返して繁華街に向かおうかと考えていた。シャイナのテレポートを使ってまずはスカイツリーの天辺にでも移動しようかと考えていた矢先に、周囲に響く轟音が二人の脚を止めた。

 

「なんですか?」

「アレをみろシャイナ! モノリスの上だ」

 

 ドルキが指示する方を見上げたシャイナも驚く。モノリスの上に一匹のガストレアが飛びつき、何やら液体を流し込んでいたからだ。その大きさは巨体、完全体と呼称されるステージⅣの姿がそこにあった。

 

「自分から苦手なバラニウム磁場を直に浴びるなんて、自殺願望ですかね?」

「それなら俺達で介錯してやろうじゃねえか」

「賛成です」

 

 目の前の完全体を相手にしてドルキとシャイナはテンションをあげる。二人は子供たちを相手にした戦闘訓練では得られない命の奪い合いと言う刺激を求めてガストレアに戦いを挑んだ。ライズを効かせて駆け寄りモノリスに近づくと、そこには自衛官たちの死体とそれに毒液を流し込むモデルアントのステージⅠガストレアが群れて姿を現す。

 

「まずは雑魚からか!」

 

 ドルキは指を鳴らす。

 それに合わせて周囲のガストレアの前に爆発が起き、次々とモデルアントたちは粉微塵に吹き飛ぶ。ドルキの使うPSI(サイ)能力『爆塵者(イクスプロジア)』による爆発がいともたやすくガストレアを爆殺したからだ。

 ドルキの周囲半径百五十メートルの任意座標に爆発を発生させる……自ら『バースト波動の極地』と自負する爆撃を前に並のガストレアではひとたまりもない。失われた未来(サイレン世界)にてアゲハ達サイレンドリフトを震え上がらせた攻撃的PSI能力はこの時代でも健在である。

 一方でテレポートという優秀な補助的PSIを持つシャイナはその半面で攻撃的な能力を持たない。ライズによる身体能力の底上げも対人戦闘ならまだしも対ガストレアでは心元ないと武器による戦いを選んでいた。テレポートを使って状況に応じたバラニウム製武器を切り替えながらの射撃戦闘は、ライズとテレポートの併用による高速移動もありステージⅠ程度が束になってもかなわない。

 結果として自衛官の死体から生まれた個体も含めて百匹以上は存在していたであろうモデルアントの群れはものの数分で殲滅した。

 

「いよいよ本丸か」

「先陣は僕が行きますよ。このままだとドルキさんに負けてしまいますので」

 

 ここまで約七十匹を倒したドルキに対してシャイナは四十匹弱と約半数ほどと少ない。流石に攻撃偏重型のドルキと数を競うには武闘派ではないシャイナにはむつかしい話ではあるが、星将としてのランクでは上の為にシャイナも意地になる。

 ならば眼前のステージⅣという首級をあげれば馬鹿にされることは無いとシャイナは考えていた。

 

「高度四千メートル……あの世への超特急ですよ。六方転晶系(ヘキサゴン・トランスファー・システム)

 

 テレポートでモノリス上空に移動したシャイナは、そのまま浮遊して自慢の能力を披露する。六角柱の形に切り取った空間座標を転送する六方転晶系でステージⅣを覆い、そのまま上空四千メートルまで転移させる。シャイナは直接相手を攻撃する術には欠けているがそのPSIの応用力は戦闘能力で勝るドルキを差し置いて第四星将の地位にあるだけに相応しい。

 

「相変わらずえげつねえ技だぜ」

 

 ドルキもその様子を傍観する。星将のような一握りを除いたら生きては帰れないであろう地獄への超特急がステージⅣガストレアを襲う。上空から落下するにつれて加速したそれは爆音とともに地面に突き刺さる。並のガストレアなら圧死して当然の衝撃に、二人はさすがに生きているとは思わずその場を立ち去ろうとした。

 

「終わったか。一応IISOに連絡しておくか?」

「そうですね。報奨金をせしめて何か美味しいものでも食べに行きましょう」

「それいいな。島の暮らしで牛肉が恋しいし、ジョジョ苑でも行こうぜ」

「ジョジョ苑って……昔は有名でしたけれど、まだやっているんですかね? あそこ」

「潰れていたら別の店で良いだろう。肉だ、肉を食うぞ!」

「それもそうか……それじゃあ今夜は焼き肉と言うことで」

 

 二人はIISOに電話すると、職員に自衛隊への引継ぎを指示された。元より応援要請を受けていた自衛隊の部隊はそれから十分ほどで到着し、ドルキとシャイナは現状を引き継いで報奨金の小切手を受け取ってその場を立ち去った。

 二人はそのまま焼肉屋へと直行したが、この日相手にしたステージⅣがこれから東京エリアを襲う危機の表舞台に立つ存在であることなど気が付かない。

 

 ドルキとシャイナが立ち去って十分ほどが経過すると、ガストレアによって組み付かれた三十二号モノリスと地面に突き刺さるガストレアの死体と思しきものを調べていた自衛官たちを恐怖が襲う。死体と思っていた一匹のガストレアは息を吹き返し、抵抗する自衛官たちを攻撃しながら後退を始めたからだ。

 バラニウム製の小銃やプラスチック爆弾による爆発を加えても効果は薄く、いかなる攻撃を受けてもものの数分で完治してしまう。むしろあの二人組はどのような手段にて、あそこまでこの怪物を痛めつけることができたのかと思い悩むが時すでに遅し。ガストレアの援軍による遠方射撃もあり、自衛隊の部隊は残念ながら全滅してしまった。

 周囲に巻き散らかされる水銀と血の跡は、ドルキとシャイナが築いたガストレアの死体よりもさらに濃く三十二号モノリス周囲を染め上げた。

 

 翌日、この結果をもとに聖居は目下のステージⅣガストレアを指定種『アルデバラン』と認識した。調査の結果、アルデバランによってバラニウム浸食液を注入されたため三十二号モノリスが崩壊するまで残り四日、対して代替モノリスの建造までかかる時間は一週間と絶望の三日間が訪れることを導き出していた。

 この時点で聖居は対アルデバランと三十二号モノリス崩壊への対応に追われ、これまで司馬重工との協力のもとに秘密裏に行っていたピスケスの調査は打ち切った。

 近視眼的に見れば決戦の時とでも言うべきこの三日間が、W.I.S.Eの予知能力者(ジン)が見た危機の序章に過ぎないことを知る人間はいなかった。




ドルキさん大爆殺の話
東京組はvsピスケスとvsアルデバランでうまくチーム分けできればいいんだがキャラが増えると考えることが増えてしまうな
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。