ガーゴイルAの大冒険 作:アークデーモン
このままだと自分は間違いなく死ぬ。
「Aよ、もうそろそろ目的地だぞ!」
相棒のガーゴイルBがそんなことを言ってくる。
今は大魔王バーン様の邪気で凶暴化したモンスターを傘下に加える為にデルムリン島へ向かっている途中だ。
その島は旧魔王軍のモンスター育成施設であり、噂によると勇者アバンも向かっているらしい。
大魔王バーン、デルムリン島、勇者アバン。
これらの固有名詞が意味することは1つ。
自分は『ダイの大冒険』の世界に転生してしまった。
ちなみにソレを思い出したのは数時間前のことだ。
「せめてザボエラかフレイザードに転生したかったなぁ……」
今の自分は魔軍司令親衛隊に所属するモンスター、ガーゴイルAである。
要するに序盤で主人公に殺されるモブキャラだ。
もちろんスペックは軍団長と比べるまでもない。
これが不思議なダンジョンだったら最強なんだがな。
「なあ、B」
「どうした?」
「島に行くのを辞めないか?」
デルムリン島でダイに殺されるのなら向かわなければ良い。
簡単そうな話だが割と難しかったりする。
「正気か!? ハドラー様から賜った任務を放棄するのは許されぬことだぞ!」
Bは激昂しながら提案を断った。
魔王軍において敵前逃亡は死罪なのでソレを実行したらBは襲い掛かってくるだろう。
流石に僚友を自らの手で殺すのは抵抗があるな。
「……今のは冗談だ」
「冗談でも口にするな!」
そんな事もありつつ自分達は大海原を横断しデルムリン島へ到着した。
そこの海岸にはアバン達がいる。
「ケケケーッ! 人間だ! 殺せ殺せ! ……グエッ!?」
そう言いながらBはデルムリン島の海岸にいるアバン達に襲い掛かろうとするが光の結界に阻まれた。
これはアバンが展開した
突破するにはハドラー様と同等の
つまり雑魚モンスターである自分達ではどうしようもない。
「どうやら、魔王の偵察隊のようですね。ポップあいつらをやっつけやってください」
「おれ1人でですかぁ~」
「その通り私は破邪の呪文を使ってベリーベリー疲れているのです」
「ちぇ~っ、ずりぃな先生。分かりましたよ、おいカラス野郎ッ! おれが相手してやるから降りて来い!」
ポップはアバンとそんなやり取りをしてから結界の外に出てくる。
一方のBは彼らの呑気な様子に青筋を立てて怒っている。
「このガキがぁっ! 笑わせるなーッ!」
「
「グワワッ!」
Bは手持ちの剣で斬りかかろうとするが、その前にポップの杖から放たれた火球により丸焦げにされた。
僚友とはいえ邪悪なモンスターだから仕方ないな。
「へっ! 今度はお前をヤキトリにしてやるぜっ!」
ポップはそう言って杖を自分に向ける。
この場にはアバンという圧倒的な強者がいるので逃亡は不可能だ。
とはいえ何もしないでいるとポップに殺されてしまう。
ならば全力で抵抗するしかない。
「
自分は口から禍々しいリングを吐き出す。
そしてソレに当たったポップは魔法を封じ込められた。
こうなったら魔法使いは機能停止だ。
つまり未来の大魔道士を完封したことになる。
地味に大戦果では?
「あぐっ……あぐう!」
「未熟ですねぇ! ガーゴイルは
「さてと、それじゃあ……」
「てやああっ!」
一息つこうとするとダイがナイフで斬りかかって来た。
なので自分は手持ちの剣で受け止める。
「ちょっ! まっ!」
相手の得物はナイフだというのに自分は苦戦していた。
このまま長引けば殺されてしまうだろう。
もちろん黙って死ぬつもりはない。
「待ってくれ! 話せば分かる!」
「……え!?」
「降参する!」
そう言うと自分以外の全員が驚愕の表情を浮かべる。
まさか魔王軍の悪いモンスターが降参するなんて思ってもいなかったのだろう。
「魔王軍の言葉を信用できるか!」
「なら、これでどうだ?」
自分は剣を投げ捨て丸腰になる。
正義の勇者は無抵抗の相手を攻撃しないはずだ。
「だから見逃してくれ」
「別におれは良いけど……」
「それは困りますねぇ。彼が撤退してしまうと魔王軍に私達の情報が渡ってしまいます」
アバンはメガネをクイっと上げながら正論を言う。
自分としては魔王軍に戻る気はないのだが、客観的に見たらそうなるよな。
こうなったら最終手段だ。
「自分はデルムリン島に滞在する! これなら魔王軍に情報が渡ることもないはずだ!」
正直、ハドラー様が来る予定の島には滞在したくないが命には代えられない。
というわけで魔王軍を辞めてデルムリン島のモンスターになることを宣言する。
「……いいでしょう。では結界の中に入って下さい」
「了解した」
こうして自分は光の結界の中に入ろうとして……普通に弾かれた。
性根は邪悪なモンスターなので弾かれるのは当然か。
「これは困りましたねぇ。結界の外だと監視するのも難しくなる」
「やっぱ殺すべきじゃないスか?」
ポップはさらりと酷いことを言う。
このままだとマジで殺される……そう思った瞬間、自分の脳みそはフル回転する。
確かブラスは結界の外に出て邪気に染まったにも関わらず結界内に入れた。
つまり邪悪なモンスターでも中に入る手段があるはず。
「そうだ! 魔法の筒を使って自分を島の中に入れてくれ! それなら結界内に入れるはずだ!」
一旦、魔法の筒に入れば結界にも弾かれないはずだ。
なにせモンスターではなくアイテム扱いになるからな。
おそらく原作でもそうやってブラスを結界内に入れたのだろう。
「それなら島にあるよ!」
というわけでダイは何処かへと向かう。
そして直ぐに魔法の筒を持って戻って来た。
君は本当に良い子だよ。
「じゃあ、やるよ! イルイル!」
こうして自分は運命を捻じ曲げて生き延びることに成功する。
後はダイ達に任せてデルムリン島で気ままなスローライフを送るとしよう。
もしも彼らが負けそうになったら元鞘に戻れば良いし気楽なもんだ。