正実モブの奮闘記録。   作:Mrふんどし

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先輩として

「はーい、みんな集まったっすかー?」

 

時刻は昼過ぎ、多くの生徒達が休憩を取り終えそれぞれが重い思いの場所に向かう最中、正義実現委員会の本部前ではある集団が一人の少女を前に並んで待機していた。

 

「ハスミ先輩からもう聞いてるかもしれないっすけど、一応もう一度確認しとくっすよ」

 

真剣な表情で少女を見つめる者達、そんな彼女達の前に立つ少女...イチカは手元の報告書を見ながら今回の任務の詳細について説明し始める。

 

そもそもこうして彼女達が集まっているきっかけは数十分前に本部に届いた一本の連絡...トリニティ郊外に建てられたとある店が突然押し寄せた不良達によって占拠されてしまったという通報を受けた為だった。

 

それを受けたハスミの案によりイチカ先導の元一年生達にも参加してもらおうという事になり急遽実行部隊が発足...それが今回イチカ達の目の前に集まっている彼女達である。

 

「まず現場に着いたらさっき分けたグループごとにそれぞれの持ち場についてもらうっす、それから──」

 

そんな中イチカは説明を続けながら、一年生一人一人を見渡していた。

 

彼女達は訓練こそ真面目に行っているが、実践となるとまだ数える程しか経験していない。

それに実践といってもその殆どが自分達の様な経験者の動きを見学するか少し参加する程度...無論信頼していない訳ではないが、万が一が起こらない様少しでも情報を頭に入れておいてもらう必要がある。

 

(今年は優秀な子も多いとは聞いてるっすけど、今回がおそらくあの子達にとって初めてになるレベルの実践....責任重大っすねー)

 

不良集団の対処は勿論彼女達の安全も確保する、イチカは自身に課せられた任務に内心苦笑いを浮かべつつ手短に、わかりやすく指示をしていった。

やがて説明も終わり彼女達が理解した事を確認したイチカは報告書をポケットにしまいパンっと手を叩く。

 

「まずは目標の建物まで素早く移動、それからの動きは耳元のインカムから別途指示をするっすから....さあ、移動開始っすよ」

 

「「「「はい!」」」」

 

そうしてイチカの合図と同時に元気よく少女達の声が響き渡ったのだった。

 

 

 

 

 

 

「おらおらおら!邪魔するなら容赦なく撃つからな!」

 

「へへ、"ブルードバース"の高額カードを売れれば楽して稼げるぜ....」

 

「まだ当たらないのか!早く別の階の在庫も探してこい!」

 

トリニティを飛び出してから暫く、イチカ達は無事通報のあった建物の近くまでやって来ていた。

 

「思ったより数が多いっすね....」

 

イチカは物陰から様子を見つつ次の行動を考える。

建物前の見張りは八名ほど、だが中で動いている他の仲間達がどれほどいるのかわからない。

通報してきた店主によると最低でも中に二十名以上はいる....となると中々突破は容易では無いだろう。

 

(まず不意をついて見張りを倒してA班が先行、次はその報告次第っすかね...)

 

黙々と作戦を立て始めるイチカだったが、ふと横に視線を向けるとそこには緊張からか固まる一年生達の姿があった。

彼女達の中には我慢できずに銃を持つ手が震えている者もいるようだ。

 

(...ダメっすね私は、まずはあの子達を気にかけないといけないのに)

 

入ったばかりで自分達のように経験豊富でも無い状態ともなれば緊張し怖くなるのは仕方ない、当然そんな状態のまま任務に望んでも頭ではわかっていても訓練と同じ力は発揮できないだろう。

 

そんな気持ちを取り除いてあげるのが先輩である自分達の役目だ、任務の成功と作戦の流れを考えるのに夢中でその配慮が出来ていなかった...

イチカはそんな自分を反省しながら彼女達に近づいて行くと、徐に手を伸ばし一人一人の頭を優しく撫でていった。

 

「い、イチカ先輩!?」

 

突然の出来事に慌てる少女達だったが、そんな彼女達を安心させるようにイチカは優しく声をかけていく。

 

「大丈夫っすよ、危ない時は私が必ず援護するっすから」

 

「せ、先輩...」

 

「だから、安心して訓練の成果を見せてくださいっす」

 

「「「「っ、はい!」」」」

 

イチカの激励が伝わったのか、いつの間にか震えも止まった彼女達はやる気に満ちた表情を浮かべて銃を構えている。

それを見たイチカは小さく笑うと同じ様に銃を構えて目標を見据え

 

「....行くっすよ!」

 

相手の多くが別の方向に顔を向けた瞬間を狙い一気に距離を詰めていった。

 

「ぐぶぅ...!」

 

「うぐっ...な、何だいきなり...ってこいつら、正義実現委員会!」

 

「自己紹介してる時間はないんで、少し眠って貰うっすよ」

 

こちらに気づいていない不良達の不意をついたイチカはそのまま数名に銃弾を浴びせ気を失わせていく。

 

「くそ、舐めやがって!」

 

「C班、D班!」

 

「「「は、はい!」」」

 

残りの見張りもようやく動き出しイチカへ銃口を向けようとするが、その瞬間告げた合図と共に班分けされた部隊が一斉に突撃し始める。

流石の不良達もいきなり押し寄せてきた人数に対応出来ずそのまま銃弾は空を飛び、なす術なく拘束されていった。

 

「み、見張り全員の拘束終わりました!」

 

「よし、これでひとまず第一関門突破っすね。二人...いや三人はここに残って逃げ出さないよう監視をお願いするっす。残った子達は私と一緒に中に入る準備を」

 

「「「了解です」」」

 

「まずA班が先行して中の様子を伝えてくださいっす。交戦はしないであくまで人数の把握を優先する事」

 

イチカがそう言うとA班と呼ばれた少女達が盾を持った子を先頭に中へと足を踏み入れていく。

 

『っ!いました!一階は十人です!』

 

『きゃっ!い、一度退避します!』

 

「了解っす。見張りの監視以外のB班、C班は私に続いてA班と合流。D班は建物から出ようとした奴らを迎え撃つ為に外で待機」

 

インカムから連絡を受けたイチカは残りの部隊にも指示を飛ばし、数十名のメンバーを引き連れ建物の中へ。

 

「き、来たぞ!」

 

「私達の一攫千金の夢の為に追い返せー!」

 

「はあ...そんな事で集めても仕方ないと思うんすけどねー...まあ、きちんと反省して貰うっすよ....ABC班」

 

「「「「おおおおお!」」」」

 

すっかり自信をつけた一年生達は、隊列を組んで目の前に立ち塞がる不良達目掛けて発砲していく。

 

「くそ、こいつら数が多い...!」

 

「あ、アタシのレアカードが!」

 

不良達も流石にこの場にいる十名程度では歯が立たない様で、逃げ遅れた彼女達は次々と倒れこんでいく。

 

「くそ、これでもくらえ!」

 

「きゃっ!?」

 

「させないっすよ」

 

埒が開かないと悟ったのか不良の一人が隠し持っていた爆弾を部隊の中に投げこもうと振りかぶるが、すぐさま察知したイチカが投げた看板によって打ち返され起爆する。

 

一瞬強い爆風に襲われるが、イチカや他の盾を持った一年生達が残りのメンバーを守ったおかげで特に犠牲は出ずに済んだ様だった、むしろ残っていた不良達の方が爆発に巻き込まれて全員が床に伏してしまっている。

 

「よし、一階も制圧完了みたいっすね。上からまだ足音がするんでこのまま突撃するっすよ」

 

その後もイチカ達の活躍により建物内にいた不良達やこっそり逃げ出そうとしていた者も含めて全員拘束され、無事占拠事件を解決する事が出来たのだった。

 

 

 

 

 

 

「はーい、皆お疲れ様っす」

 

任務を終えた帰り道、イチカは労いの意味を込めて途中でメンバー全員にジュースを手渡していた。

 

「中々良い動きだったっすよ、おかげで楽に終えられたっす」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「イチカ先輩も格好よかったです!」

 

「はは、私は殆ど指揮してただけっすけどね。でもこれでいつか私達抜きで臨む任務の感覚を掴めたんじゃないっすか?」

 

渡されたジュースを飲みながら、少女達は今日の事を興奮気味に話している。

イチカはそんな彼女達の様子をベンチに座りながら見守っていたが、暫くしてどこか不安そうな顔を浮かべる何人かの少女が近づき恐る恐る声をかけてきた。

 

「あの、イチカ先輩...」

 

「ん?どうかしたっすか?」

 

「....本当に私達だけでいつか任務を達成出来ますかね?」

 

「今日だって、殆どイチカ先輩の指揮を頼りに動いてたので....自分達だけだったらあんなに上手く動けなかったと思います」

 

「先輩と比べたらまだまだというか...」

 

イチカやハスミを含め、他の先輩達がいない中で今日の様な動きが出来るのか。

もしかしたら失敗してしまうかもしれない、そんな不安を任務を終えた事で逆に考えるようになってしまったらしい。

 

「......うーん、私は大丈夫だと思うっすよ。今日の任務中の動きを見ててもそんな心配は無かったっすから」

 

「で、でも...」

 

「君は二階に行った時率先して他の子を守ろうとしてたっすよね?」

 

「え?な、なんでそれを...」

 

「君はリロードに時間がかかってた子のカバーに回ってた、君は周りがあまり気にかけてない方向も念入りに警戒してた....私が指揮しなくても、君達はちゃんと自分の考えで動いてたのを見てたっすから」

 

「「......」」

 

「だから大丈夫っすよ、君達も含めて全員ちゃんと戦える子達なのは今日でわかったっすから」

 

そう言ってイチカは集まってきた少女達の頭を軽く撫でるとベンチから立ち上がる。

 

「よし、じゃあそろそろ帰るっすよー。あんまり遅れるとハスミ先輩に叱られちゃうっすからね」

 

イチカの言葉に慌ててジュースを飲み後ろに並ぶ少女達。

そうして何十名にもおよぶ少女達の集団は、そのままゾロゾロと学園への帰り道を歩いていったのだった。

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