「訓練終わりー」
「疲れたー...」
「眠い....」
今日もとくに何か起こる事なく訪れた放課後の時間、私はさっきまで使っていた銃を片付けぐっと背伸びをしていた。
周りからは自分と同じ様に訓練に勤しんでいた子達の声が聞こえてくる。
いつもならこの後は寮に戻るだけだったけど、帰ろうとしていた私の元に近くで訓練していた二人が声をかけてきた。
「ねえハツネちゃん、これから時間ある?ご飯食べに出かけない?」
「え、ご飯?」
「そうそう、少し前に新しくオープンしたお店なんだけどね。前から気になってて今日行こうかって話になったの」
「だからもしよかったら一緒にどう?」
「っ!うん、行く行く!」
まさかの提案に私は躊躇いもなく返事をすると、彼女達は嬉しそうに笑ってくれた。
ご飯か...いつもは食堂で食べるか適当に何か買って済ませてたけど、友達と一緒に外で食べるなんて凄く青春っぽい!
そんな事を考えながら急いで支度を整え終えた私は、待っていてくれた二人と共に校門までの道を歩いていく。
「そこのお店ね、普通のご飯だけじゃなくてスイーツも美味しいんだって」
「スイーツ目的で入る人も多いらしいよ」
「へー、もしそうなら何食べるか迷っちゃうかも....」
三人並んで歩きながらそんな他愛もない話を続けていたけれど、その途中でなんだか視線を感じた私は徐に辺りを見渡す。
「ハツネちゃん、どうかしたの?」
「何か誰かが見てる様な....あっ!」
そして視線が斜め向かいに生えている木へと止まった時、丁度そこに隠れているコハルちゃんを見つける事が出来た。
「コハルちゃん!」
「っ!?」
「あ、待って!」
私の声に驚いたコハルちゃんは慌ててその場から離れようとしていたみたいだけど、なんとか追いかけて彼女を引き止める。
「ねえコハルちゃん、コハルちゃんも良かったら来ない?」
「え、こ、来ないって?」
「私達これからご飯食べに行くところなんだ、だから折角だったらコハルちゃんもどうかなって.....二人はどう?」
「うん!私は良いよ、コハルちゃんとももっと仲良くなりたいし」
「私も、訓練の時もあんまり話せてなかったから色々話してみたい」
「え.....い、いいの?」
こちらの言葉にどこか恥ずかしそうにしていたコハルちゃんだったけど、その後少し考える様な素振りを見せていた彼女は最終的に自分達の提案を受けてくれた。
こうしてコハルちゃんを加え四人となった私達は改めて目的のお店を目指してその歩みを進めていく。
「コハルちゃんはいつも訓練終わったら何してるの?」
「わ、私は...そのまま帰ったり、たまに本屋に行ったりとか...」
「え、本好きなの?私も少しだけどたまに読んだりするんだー。どんな本読むの?」
「え、そ、それは...!て、哲学の本...とか?」
「哲学?コハルちゃん凄い難しい本読むんだね、私はそういうのさっぱりだから羨ましい」
「そ、そうでしょ?私くらいになるとそれくらい当然だし.....」
初めは緊張した様子で私達に着いてきていたコハルちゃんも、時間が経ってくると慣れてくれたみたいですっかり馴染んでいた。
今も二人と楽しそうに話をしている....それよりコハルちゃんってそういう本が好きなんだ?今度教えてもらおうかな。
そんな会話を繰り広げながら歩く事三十分、ようやくお目当てのお店に到着した私達は店員に案内されながら席へと座ると早速料理を選び始めた。
「何にしようかなー」
「私はステーキにしよ!」
「じゃあ私はフィッシュチップスで、コハルちゃんは?」
「わ、私は....サラダパスタ...」
そうして各々が食べたいものを決め注文する事十数分、運ばれてきた料理を前に訓練後でお腹が空いていた私達は目を輝かせ夢中になって食べ進めていく。
「う〜ん!美味しい!」
「噂に嘘偽り無しだね」
「コハルちゃん、一口食べてみる?」
「あ、私もいいよ」
「っ、あ、ありがとう」
(はぁ、お友達とこうして食べに来れるなんて幸せだなぁ、毎日そうしたいくらい!.....まあもしそうしてたらお金足りなくてなっちゃうかもだけど)
そんな事を思いながら、時折料理を皆で分け合いつつなんとか完食し終えた私達は満足そうにお腹を押さえながら寮への帰り道を歩いていく。
「今日は楽しかったね」
「うん!また今度来よっか」
「わ、私も...きょ、今日はありがとう...」
「こちらこそ、一緒に来てくれてありがとう!」
「わ、か、髪が崩れるから急に撫でないで!」
四人で感想を言い合ったり、つい嬉しくなり頭を撫でたコハルちゃんから怒られたりと色々ありながらも、もう少しで学校が見えてくる距離までやって来た私達。
...その時だった。
「あっ!」
「ひったくり!」
突然目の前を歩いていた一人の歩行者の鞄が、横から走って来た人物に盗られる瞬間が視界に映り込んだ。
「だ、誰か!捕まえてくれ!」
「任せてください!」
当然そんな場面を見つけて放っておく訳にはいかない。
私達は盗られた人の言葉を聞く前にすぐさま犯人を追いかけ始めたけれど、実際には背中を捉えようと走り続けても中々追いつけずにいた。
犯人の足が速いのもそうだけど、それだけじゃなくさっき食べたばかりというタイミングの悪さもあり上手く全速力で走る事が出来ない....
「く、苦しい...!」
「このままじゃ....」
必死に追いつこうとしても少しずつ距離が離れていく...このままだと見失ってしまい捕まえることが出来ない。
(...そういえば、前にコハルちゃんと話した時に....)
「コハルちゃん!前に言ってた手榴弾持ってる?」
「え、も、持ってるけど」
「貸して!」
いきなりの発言に驚くコハルちゃんだったけど、すぐに私の意図を察してくれたのか持っていた手榴弾を渡してくれた。
「は、ハツネちゃん何を...」
「追いつけないなら....動きを止めるだけ!皆さん、すぐに離れてください!」
私は周りの通行人に注意を促すと、腕を振りかぶり受け取った手榴弾を力一杯犯人目掛けて投げ込んだ。
「なっ!嘘だろ!?」
ドォォォォォォン!!!!
勢いよく投げた手榴弾は私の狙い通り犯人の前まで飛んでいった瞬間爆発し見事犯人に命中。
爆発による煙が晴れると地面には盗まれた鞄が転がり、そのそばでは気絶し倒れ込んでいる犯人の姿があった。
「か、確保ー!」
「鞄も無事!」
「あ、ありがとうございます!おかげで助かりました!」
すぐさま犯人を取り押さえて鞄を回収した私達は後ろからやって来た被害者の方に鞄を手渡すと、その人は何度も頭を下げお礼を言ってくれた。
(先輩達ほどじゃないけど、これで少しは正義実現委員会らしいことが出来たかな...?)
またひとつ憧れの正義実現委員会に近づけたという事実に、私達は互いに顔を見合わせて小さく笑い合ったのだった。