小説の形式としては前回の様なまとめ形式の話の中から一部を詳細化し、それらをハツネ視点、もしくは他者視点で書いていく感じになります。
また、全ての話を詳細に書く訳では無いと思いますので、そこはご了承ください。
「いやぁ今年は入部希望の子、結構多いっすね」
「そうですね、ありがたい限りです」
トリニティ総合学園のとある教室内にて、二人の少女が席に座りそんな会話を繰り広げていた。
一人は三年生の羽川ハスミ、もう一人はその後輩である仲正イチカ。
彼女達は共に正義実現委員会という組織に所属するメンバーであり、今日はその組織に入部予定の新入生に対する面談を担当していた。
正義実現委員会の役割は多々あるが、その中でも多いのがトリニティ内外の治安維持。
同じくマンモス校であるゲヘナ学園に比べればその治安は比較的穏やかな方ではあるのだが、それでも郊外での事件や犯罪発生率は少なくない。
そんな活動が主である以上人手はいくらあっても困る事はない、なので彼女達にとってもトリニティへ新入生がやって来るこの時期は一際重要なものとなっていた。
「中々良い子たちばかりなんで、これからに期待っすね」
イチカはそう呟きながらパラパラと先程やって来た入部希望の生徒達の書類を流し読みしていく。
「イチカにとっては初めての後輩ですからね、彼女達の為にも優しく指導してあげてください」
「大丈夫っすよ、任せてください。....そういえば希望人数って後何人くらいでしたっけ?」
「確か後一人いる筈です、そろそろ来ると思いますが...」
ハスミがイチカに答えながら、本日最後の入部希望者の名前が載ってある手元の書類を確認しようとした瞬間
「すみません!遅れました!!!」
ガラッと勢いよく扉が開かれると同時に、大きな声が二人の元へと聞こえてきた。
「お、来たみたいっすね......」
少し遅れてやって来た少女を見ようと顔を上げたイチカだったが、目に入った彼女の姿に思わず固まってしまう。
(え、何かデカくないっすか?)
彼女が固まった理由はシンプル、その少女の背丈が予想よりも大きなものだったからだ。
別に規格外に背が高いというわけではない、ただこれまで見て来た子達は比較的全員こぢんまりとしていた事もあり、そこからの差に少々驚いてしまった。
(私よりは確実に大きいっすね....何ならハスミ先輩と同じかそれ以上?)
イチカが内心そんな事を考える中、件の少女は恥ずかしそうに二人の正面の椅子へ腰を下ろす。
(ああいけないっすね、今は面談に集中しないと....ハスミ先輩は特に気にしてないみたいですし)
イチカは一瞬隣に座るハスミに視線を向けると、彼女は少女の方を静かにじっと見つめていた、きっとこれまでの子達の様に所作を観察しているのだろう。
流石は正義実現委員会の副委員長、多少の事で気を逸らす事の無いその姿にイチカは感心していた。
「じゃあ軽く質問させて貰うっすね」
そう言ってイチカは少女に対し簡単な質問を投げかけていく。
好きなもの、得意な事など当たり障りのない内容を尋ねては少女が緊張しながらも答える。
そんなやり取りが数分続いた頃、イチカは頷き質問を終わらせた。
「私からは以上っす、ハスミ先輩からは何かありますか?」
「ええ、いくつか聞きたい事が....松果ハツネさん、よろしいですね?」
「は、はいっ」
「ありがとうございます、では....」
どこか真剣な眼差しを送るハスミに、隣のイチカも思わず額に汗を浮かべる。
ここまで真剣な...いや勿論これまでも真剣ではあったが、今回はそれ以上だ。
(彼女に対して気になる事が?もしかすると既に何かを見抜いて....)
教室の空気はハスミから発せられるオーラと二人の緊張によりどこか重いものへと変化していく。
一体どんな質問が彼女の口から飛び出るのか、少しの間無言の時間が続く中、ついにハスミが口を開いてそれを告げた。
「ハツネさん、貴方は......何かダイエットをしていますか?」
「「.......え?」」
先程とはまた違った一瞬の静寂が訪れる中、予想外過ぎるハスミの質問にハツネとイチカは間抜けな声を上げてしまう。
だが当のハスミの表情はいたって真剣そのもの、どうやら冗談や言い間違いではないようだった。
「どうなんですか?」
「え、えっと...ダイエットと言えるほどのものでは無いですけど、一応毎日適度な運動は少し....」
「具体的には何を?」
「ま、毎朝のランニングと食後の腹筋とかですかね」
「成る程.......食事に関しては何か工夫を?」
「は、ハスミ先輩、その辺りで終わりにしておきましょう!彼女が困ってるっすから!」
グイグイと矢継ぎ早に質問を続けるハスミに、流石のイチカも彼女を止めようと身を乗り出す。
「...はっ!....すみません、つい夢中になってしまいまして」
「い、いえ大丈夫です!」
「コホンッ...とりあえず、貴方の事はよくわかりました。きっと正義実現委員会の中でも活躍してくれる事でしょう」
(え、ダイエットのことしか聞いてなかったっすよね?)
イチカはそうツッコみたくなる衝動を何とか抑え、あくまで冷静にハスミの言葉を待つ。
「松果ハツネさん、貴方を私達の仲間として迎えます。これからよろしくお願いしますね」
「っ、は、はい!よろしくお願いします!」
ハツネはパッと笑顔を浮かべると勢いよく立ち上がり二人に頭を下げる。
それからハスミ達は明日の昼から新入生同士の顔合わせがある事を伝えた後、彼女は再度頭を深々と下げて教室を出て行った。
「......ハスミ先輩」
ハツネを見送ったイチカは扉を閉め振り返り、椅子に座ったままのハスミに声をかける。
「さっきあの子にダイエットの事聞いてましたけど、もしかしてまた...」
「違いますよ、別に太ってしまったという訳ではありません、ただ彼女が私と同じくらいの背丈なのが少しだけ気になっただけですので。決してそういう理由で解決策を参考にしようとした訳ではありませんからね」
(まだ何も言って無いんすけど...そういう事にしておくっすかね)
「まあ何にせよ明日が楽しみっすね、これからどうなるのか」
イチカは苦笑いを浮かべつつ、今日来た新入生達を思い返す。
「ええ、ツルギにも良い報告が出来そうです」
二人は互いに今後の活動に対し期待を抱きながら、書類を纏めて教室を後にしたのだった。