時計が午後12時を指し示した頃。
「ふぅ...そろそろ休憩の時間ですね、ハツネさんもお疲れ様でした」
トリニティ総合学園の訓練広場にて、体操服を着たマシロが息をつきながら立ち上がった。
うっすらと額を濡らす汗を拭いながら、彼女は自身の隣に座り込むハツネに声をかける。
「はぁ...はぁ....!う、うん!お疲れー...」
ハツネは同様に息を切らしながらマシロの手を掴みベンチへ向かうと置いてあったペットボトルの蓋を開け水をグビグビと喉へ流し込んでいった。
「かなりの負荷をかけらながらのトレーニングも慣れてきましたね、良い調子です」
「本当?な、なら良かったぁ」
初めは1人で黙々と狙撃訓練や体力トレーニングをしていた彼女だったが、あの日ハツネが狙撃塔へと足を運び出会った頃からよく一緒に訓練をする機会が増え、こうして一緒にトレーニングをする様になり1ヶ月が経過していた。
「でもマシロちゃんと比べたらまだまだだからなー、もっと完璧に出来るようにならないと」
「この1ヶ月でここまで身につくのであれば上出来ですよ、もっと誇らしくしてください」
「えへへ、そうかな?」
マシロの言葉に再び頬を緩ませるハツネだったが、思い出したかの様に保冷バッグを膝に乗せるとそこからサンドイッチを取り出した。
「そうだ、マシロちゃん良かったら一緒にお昼食べない?なんだかんだ一緒に食べたこと無かったし...どうかな?」
「...そうですね、いいですよ」
首を傾げながら尋ねるハツネに、マシロは二つ返事で答えた。
普段マシロは1人でお昼を済ませる為こうして誰かと食事をすること事態中々無いことだったが、たまにはこういうのも良いかもしれないと考えそのまま彼女の隣に座ることに。
そうしてハツネがサンドイッチの袋を開けると同時にマシロもバッグを開けそこから銀色の袋を取り出した。
「......」
「...?どうかしたんですか?」
そのままそれを口にしようとしていたマシロだったが、突然黙り込みこちらを見ているハツネに気がつき思わず口を開いた。
「...マシロちゃん、それって?」
「これですか?レーションですよ、必要な栄養はこれで全て取れるので便利なものです」
「えっと、もしかしてそれがお昼ご飯...とか?」
「...?はい、そうですけど...」
当然の言わんばかりに堂々と答えるマシロに、ハツネは愕然とした表情を浮かべている。
そんな彼女の態度にマシロは少し困惑するが、次の瞬間ハツネがガバッと顔を近づけて詰め寄ってきた。
「マシロちゃん」
「は、はい」
「まさか、毎日そういうものばかり食べてたんじゃないよね?」
「いえ、毎日食べてましたが....」
「ま、毎日!?」
ハツネは信じられないと言った顔で驚きながら、更にマシロに詰め寄り始める。
「あんなに毎日運動してお昼はこれだけって...流石に身体にも悪いと思うよ」
「ですがこれが1番効率が良いですし...その分訓練のことに時間を割いたほうが力にも....」
「駄目!マシロちゃん、私達まだ1年生なんだよ?それなのにこれからずっとこの食事を続けたら本来得られるエネルギーだって落ちちゃうだろうし、背とかだってもっと...私の場合は育ちすぎかもだけど....とにかく!もっとバランス良く食べていかないと」
「は、はぁ....」
まさかここまで圧を出されるとは思っていなかったマシロは未だ困惑中だったが、そんな彼女にハツネは持っていたサンドイッチをぐいっとマシロの口元に近づけた。
「はい!あーん!」
「え、こ、これは....」
「いいから、はい!」
目の前に差し出されるサンドイッチに戸惑うマシロだったが、ハツネは一向に引く気配を見せない。
それどころか彼女から発せられる圧はどんどん強くなっていく、そんな彼女にとうとう観念したマシロは口を開けそのサンドイッチを一口咥えた。
「.....っ!」
その瞬間、口の中に柔らかいパンの感触と間に挟まっていたレタスやトマトなどの新鮮な野菜の味が広がっていくのを感じた。
普段栄養面とだけでレーションを食べていたマシロにとって、その何とも優しく温かい味は刺激が強かった。
「...美味しい」
「っ!でしょ!」
無意識に漏れたその感想と笑みにハツネは嬉しそうな笑顔を見せた。
マシロも不意に自身から溢れた言葉に口を押さえハツネを見るが、その笑顔にどこか気恥ずかしくなってしまい思わず顔を背けてしまう。
「はい、じゃあこれはマシロちゃんの分ね!」
ハツネはそう言ってサンドイッチを半分袋ごとマシロへと手渡した。
彼女の膝の上にはチーズやハム、別のものには玉子が挟まったものなど色とりどりなサンドイッチが並べられている。
「...まあ、たまにはこういうのも悪くありませんね」
マシロは少しだけ顔を背けたまま小さく呟き、ニコニコと笑う彼女の隣で再びサンドイッチを口元に運んでいった。