私事になってしまいますが少し前に目を怪我してしまい、それにより画面を見ての作業が少々難しい状況になってしまいました。
その為これまで以上に投稿間隔が空いてしまうかもしれません、ご了承いただけますと幸いです。
正義実現委員会本部、そこは今日も慌ただしい空気が流れていた。
「そこの書類先輩の所に運んでー」
「チェックお願い!」
「これって明日のお昼までにティーパーティーの人達に提出だっけ?」
黒い制服に身を包んだ少女達がパタパタと紙の束を持ちながら走る音がそこら中から聞こえてくる。
彼女達は現場での戦闘ではなく実務を主な担当とした正実のメンバーだった。
正義実現委員会の業務は多岐に渡る、だからこそ各々が立派な志を持ってそれらに取り組んでいるのだ。
そんな数多くの正実の中で、他の者と同様に仕事をこなしていた1人の少女がいた。
その少女は今....
「うぅ...こ、こんなものを隠し持ってたなんて...!」
ある部屋の中で棚に背を預けながら、本を手に顔を赤らめていた。
押収品保管室、そこは生徒が持ち寄った許可されていない規制品、或いは違反行為を起こした生徒から押収したものなどを保管する場所。
その保管室の管理もまた正義実現委員会の仕事であり、そこの担当となっていたのが件の少女....下江コハルだった。
時刻は放課後を回った辺り。
先程追加で入ってきた押収品の陳列や数の記録などを終えた彼女はふとその中に紛れ込んでいた本が気になってしまい、確認の名目でそれに目を通したのだが....その瞬間コハルの脳内にピンク色の花畑が広がった。
まず目に飛び込んできたのは彼女の予想を遥かに超える過激な展開の数々、あまりの濃度に一瞬で蛸のように顔が真っ赤になったコハルだったが目は離れることなく本へ向けられ、彼女の感情を表す様に黒い羽が激しく動いている。
「ええっ!?そ、そんなことまで...!」
ペラペラと物凄い勢いで捲られていくページ、“こんな危険なものはしっかり最後までチェックしなくては”という欲....いや信念を掲げコハルは確認作業を行なっていった。
だがあまりに集中してしまっていたからか、彼女の元にある人物が近づいていることに気づいていなかった。
とうとう本の展開も佳境に差し掛かった頃
「コハルちゃん!遊びに来たよ!」
「ひゃあ!?」
保管室の扉が開かれると同時にコハルを呼ぶ声が室内に響き渡った。
突然のことにビクリと身体を震わせたコハルはその場で飛び跳ね、それにより持っていた本や棚にしまっていた他の押収品がバラバラと足元へ落ちていく。
「は、ハツネっ!?な、何でここに...」
「前にいつでも会いに行くって言ったでしょ?だから来たの!」
コハルに尋ねられたハツネは腰に手を当てながら当然の様に答える。
「あ、ごめんね、もしかして仕事中だった?」
固まっているコハルを不思議そうに見つめていたハツネだったが、彼女は床に落ちている本などを見て作業中だったのではと心配になり近づいてくる。
「手伝うね!」
「.....っ!?」
それまで動かなかったコハルだったが、近づいてくる彼女を見て改めて現状の不味さに気がついた。
先程まで見ていた本....それ以外にも似た様な表紙の本が床に散らばっている光景...何も知らずにそれらに手を伸ばそうとしているハツネ....
『え、コハルちゃんこれ....』
本とコハルを交互に見つめる彼女の目。
恥ずかしがるだろうか、それともドン引きされるだろうか...とにかくこのままではいったい何が起こるか想像に難くない。
「えっと....」
「だ、駄目!!!」
いよいよ屈んで本を手に取ろうとしていたハツネだったが、コハルはその前に慌てて手を広げ立ち塞がった。
「えっ、こ、コハルちゃん?」
「だ、大丈夫だから!ハツネは何もしなくていいから!」
「でも邪魔しちゃったかもしれないし...ほら、高いところとか私なら届くから手伝えると思うよ!」
そう言って頭上から覗き込もうとするハツネの視界を塞ごうと、コハルはピョンピョン跳ねながら手を必死に振り始める。
何度かそんなやり取りを繰り返すと、不意にハツネは小さく笑い出した。
「な、何?」
「ふふ、ごめんごめん、何だかコハルちゃんの動きが可愛くて...」
「〜っ!」
彼女の言葉に言い返したかったコハルだったが、今はそれをしている場合では無い。
自分の尊厳や印象に関わる問題なのだ、何としてでも乗り越えなければ....
「と、とにかく駄目!これは私の仕事だから....それに、ハツネにはまだ早すぎる!」
「は、早い?」
「そう...この作業は凄く危険なの、並大抵の子だったら耐えられない.....だからハツネは部屋の外で待ってて」
「そ、そんなに...わかった、頑張ってコハルちゃん...!」
ハツネはコハルから発せられる圧に気圧されながら、拳を握り部屋の外へと出ていく。
やがて扉が閉められたのを確認したコハルはその場にへたり込みながら溜息をつく。
「ふぅ....あ、危なかった...」
危うくとんでもない場面を見られてしまう所だった。
純粋だったのか、コハルの事を信じてくれたのか、とにかく助かったのは事実だ。
「....急いで終わらせないと」
今も部屋の外の廊下で待ってくれているのだろう。
コハルは続きが気になりながらも床に落ちた本を閉じ、他にも散らばっていた押収品の数々を拾い上げると、そのままテキパキと名札付きの棚へとそれらをしまっていったのだった。