正実モブの奮闘記録。   作:Mrふんどし

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モブの意地

 

「いち、に! いち、に!」

 

「あと2周だよ〜」

 

トリニティ総合学園の広大なグラウンド、そこでは私たち正義実現委員会の声が響いていた。

入部したての頃は走り切るだけでひぃひぃと言っていたけれど、今では重い装備を身に着けながらのランニングも普通になっている。

 

全ては正義実現委員会の名に恥じない存在になるため、少しでも早く先輩達と肩を並べられる様にもっともっと頑張らないと!

 

「もう少し〜!」

 

そんなことを考えながら他の子と並んで走っていた私の耳に、その声は突然飛び込んできた。

 

「た、大変大変!」

 

「ど、どうしたの?何かあった?」

 

正義実現委員会本部の方から焦った様子で私達の元に駆け寄ってくる子、その子は膝に手をついて息を切らしながら話し始めた。

 

「こ、郊外の方から連絡があって...スケバン達が暴れてんるんだって!結構な人数がいるみたいで....」

 

「ハスミ先輩達に連絡は?」

 

「そ、それが...今先輩達も他の任務にいっちゃってるから今から向かうと時間がかかるって」

 

「そんな...」

 

最近大きくなっているスケバングループがあるって噂は前から聞いていたけど、まさかトリニティの近くにまでやって来るなんて...。

どうしようと悩んでいると、連絡をしてきた子が口を開く。

 

「それで....先輩達から伝言を預かってるの」

 

「伝言?」

 

「うん...被害を少しでも抑える為に、1年生のみで足止めをして欲しいって」

 

「わ、私達だけで!?」

 

「必ず向かうから無理をしない範囲でって」

 

確かに前にハスミ先輩からいつか自分達だけで任務にあたる日が来ると言われていた。

でもまさかこうも突然その日が来るなんて思っていなかった...でも、私達は顔を見合わせると互いに頷き合った。

 

「わかった、今から準備してすぐに向かうね!」

 

驚きはしたけど、覚悟はもうとっくに出来ている。

私達は正義実現委員会、困ってる人達を助ける為にいるんだから!

 

「行くよみんな! 先輩達が来るまで頑張ろう!」

 

「「「おおおーー!!!」」」

 

全員で掛け声を上げながら、着替えと武器の準備を終えた私達は急いで現場へと向かった。

 

 

 

....そうして到着した現場は想像よりも厳しい状況に陥っていた。

 

「あはははっ! いいぞ、もっと壊せ!」

 

「何がトリニティだ!全部あたしらのもんだ!」

 

ひっくり返された店のテーブルに、割られたショーウィンドウのガラスが散乱している。

そしてそんな事態を作り出した当のスケバングループは周りを気にすることなく暴れ回っていた。

 

しかも連絡を受けたよりも人数が多い、もしかしたらこれからもっと増える可能性だってある。

 

「みんな落ち着いて! 大丈夫、訓練通りやれば上手くいく、まずは部隊を分けて複数から仕掛けよう」

 

緊張からか誰が上げた言葉かわからないまま、私達は訓練で何度も練習した部隊分けを素早く済ませていく。

大体5部隊程に分かれた後に行動開始、私がいる部隊は右の路地からスケバン達の死角に回り込む作戦だ。

 

幸いスケバン達は暴れるのに夢中で私達が到着したのに気づいてない、このまま周りを囲えれば一気に鎮圧できる。

....そう信じきっていた私達は次の瞬間その目論見が甘すぎた事を知った。

 

それは路地を抜けて配置につこうとした時だった。

 

「よー、お疲れさん」

 

「えっ」

 

いつから待っていたのか、曲がり角を進んだ先に何人ものスケバン達が銃を構えて私達の前に立っていた。

 

「呑気なもんだな、あたしらはそんなに馬鹿じゃないんだよ」

 

「お前らがコソコソしてたのはとっくにお見通しだ」

 

「っ!」

 

完全に罠だった、彼女達はあえて隙を見せて私達が分かれるのを待っていたのだ。

 

『緊急事態発生!待ち伏せされてた!そっちは....』

 

『きゃあ!』

 

耳元の通信機から他の部隊の子達の声が聞こえて来る、彼女達の方もスケバン達が待ち伏せしていたとなると今から合流し直すのは難しい。

 

「.....全員攻撃開始!」

 

ババババッ!

 

「うおっ!いきなり撃ちやがって...ずりぃぞ!」

 

「待ち伏せしておいてそんなの通用しません!」

 

スケバン達が一瞬余所見をした隙を見て私達は彼女達へ銃弾を浴びせた。

油断していた数名のスケバンは私達の集中砲火で気絶、僅かに空いた隙間を無理矢理走り抜け急いで体勢を立て直す。

 

「舐めんじゃねぇ!」

 

「おい!もっと呼んでこい!」

 

それからはただひたすらに銃撃戦が繰り返された。

次々と集まって来るスケバン達、それを1人ずつ対処しながら道を走る私達...殆ど防戦一方な状況だった。

 

「うぅ...!」

 

「しまっ...!」

 

そうしている間にも相手の銃弾や投げ込まれた手榴弾の爆風に倒れていく周りの子達、やがて気づいた時にはその場に立っているのは私だけになっていた。

 

「はぁ...たく、手こずらせてくれやがって」

 

「まあ正義実現委員会なんてこんなもんか、噂じゃなんかやべぇ奴がいるなんて聞いてたけど」

 

スケバン達は私を前に余裕そうに話をしている。

 

(舐められてる...やっぱり私はまだ...)

 

どんなに訓練を積んでも先輩達の足元にも及ばない、私はそんな悔しさに銃を握る手に力がこもる。

俯き視線を泳がせたその時、私の視界の端に何かが映った。

 

それは、先程気を失って倒れた仲間の子が落としたらしい一丁のアサルトライフルだった。

私が使っているものと同じ、正義実現委員会のライフル。

それを見た瞬間、私の脳裏に鮮烈な光景がフラッシュバックした。

いつだったか、任務に同行した時に遠くから見たツルギ委員長の姿。

両手に武器を構え奇声を上げながら敵陣のど真ん中へと突っ込んでいく、あの常軌を逸したけれど誰よりも頼もしく圧倒的な戦いぶり。

 

その光景が頭の中に浮かんだコンマ数秒、考えるよりも先に私の身体は動いていた。

私は体勢を下げると地面を蹴り、倒れた仲間のライフルに向かってスライディングする。

 

「なっ!」

 

「こいつ何を...!」

 

突然の私の行動にスケバン達は慌てて銃を構え直しこちらに向けてくるが、銃弾が撃ち込まれるよりも既に動いていた私の方が先だった。

落ちていたライフルを滑る様に左手で掴み取ると同時に、半分転がりながら相手に2つの銃口を向ける。

 

右手には自分のライフル、左手には仲間のライフル。

反動で暴れる二丁のアサルトライフルを無理矢理押さえつけながら引き金を引く。

 

「ぐぁ!?」

 

「ふざけっ...!」

 

命中精度なんてものは関係ない、ただ狂った様に撃ち出される銃弾はスケバン達の頭やお腹、足などに当たりその場に残っていた彼女達は地面に倒れていく。

 

異変に気付いたのか別のスケバン達が集まってくるが、出会い頭に銃弾を浴びせていきながら何とか現状の打開を試みる。

 

「いける.... これなら!」

 

このまま抜けられれば他の部隊に合流出来るかも、そう思った時

 

「調子に乗ってんじゃねぇ!」

 

「痛っ!?」

 

不意に背後から頭皮がちぎれそうなほどの激痛が走る、それはそのはず、いつの間にか私の死角に回り込んでいたスケバンが私の長い髪を力任せに掴んでいたのだ。

 

髪を下に引っ張られたことで顔が上を向き銃の狙いが完全に逸れてしまう、その瞬間を好機と考えた他のスケバン達は再び銃口を向けてきた。

髪を掴まれるとこうも動きが鈍くなるなんて...これでは折角のチャンスが無駄になる。

 

けれども私の視線はこの場を切り抜ける為の存在を捉えていた。

いつの間にか、足元にはスケバンたちが破壊したショーウィンドウのガラス片が鋭い刃のように散らばっている...迷っている暇はなかった。

私は痛みに耐え無理矢理膝を折ると、右手のライフルを手放し代わりに地面に落ちていた手頃なガラス片を咄嗟に拾い上げる。

 

「えっお前何する気....」

 

背後のスケバンがいぶかしげな声を上げるのと、私がガラス片を自分の髪に押し当てるのは同時だった。

ジョキッ、という鈍い音と共に掴まれていた私の髪の毛が束になって切り裂かれる。

 

突然抵抗がなくなったことで、背後のスケバンが体勢を崩して尻餅をついた、私はそれを見逃さず再度落とした銃を

拾い直し弾を叩き込んだ。

 

 

 

──それからは、いったい自分がどれくらいの間戦い続けていたのか。

 

「はぁ...はぁ...」

 

私は息を切らしながら必死に銃を持ち上げていた。

補充用の弾も殆ど使い切り残っていない。

いつの間にか通信機も外れてしまったのか、他の部隊のその後もわからない。

 

(もう少し、もう少し頑張らないと...)

 

気力を振り絞り痛む身体をそのままに動かし続ける、あとどのくらい戦えばいいのか....

 

「くそ、いい加減に...」

 

傷を負ったスケバンがフラフラしながら銃口を向けてくる、だがそこから私目掛けて弾が発射されることはなかった。

何故なら目の前のスケバンが突然倒れ込んだからだ。

 

「ふぅ...よく頑張ったっすね」

 

スケバンの背後から、聞き覚えのある声が耳に入る。

その場にへたり込みながらゆっくりと顔を上げると、そこには銃を片手に私を見下ろしているイチカ先輩が立っていた。

 

「い、イチカ先輩...」

 

「残りは私達に任せて休んでくださいっす、他の1年の子達もさっき無事合流できたって連絡あったんで大丈夫っすよ」

 

(良かった、何とか持ち堪えられた)

 

ほっと息をつく私だったが、少しして気絶した仲間の子達の事を思い出し慌てて向かう。

そこには壁に寄りかかり気を失っている3人の姿、私は最後の力を振り絞り両脇と背中にそれぞれ彼女達を抱えると、その場からなんとか撤退したのだった。

 

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