正義実現委員会のとある一室。
「よろしくー」
「緊張するね〜」
「今日どこ行く?」
「ツルギ先輩ってどんな人なんだろ、結局会えなかったけど」
「早く任務行きたい!」
「昨日寝てないから眠い....」
そこには何十人もの少女達が集まり、各々が好きに会話し盛り上がる賑やかな空間が広がっていた。
互いに挨拶を交わす者、仲が良い子同士で約束を交わす者、まだ見ぬ先輩に想いを馳せる者、早くも活動を始めたくてウズウズしている者など、その様子は様々。
共通しているのは、彼女達は全員この度正義実現委員会の新入部員のメンバーとして選ばれたという事。
そんなこれからの期待に胸を膨らませている彼女達の中で、
「うぅ...人多すぎ.....」
一人不安そうに顔を俯かせ、周りの視線から隠れるように移動する少女がいた。
名は下江コハル、彼女もまた他の者たち同様に今年から正義実現委員会に所属することとなった一年生で、将来は正実のエリートになるという理想を掲げている少女だ。
そんな彼女は今いる場所で行われているのは一年生同士の交流兼顔合わせ、これから一緒に活動していく仲間として親睦を深めてもらおうとハスミ達が用意した場...
「べ、別に話しかけられないとかじゃないし...私はエリートになるんだから、今はその時じゃないってだけで....」
...なのだが、大の人見知りである彼女はそんな言い訳を一人呟きながら、まだ誰にも声をかけられずにいた。
このままでは初日にも関わらず他の子達から浮いてしまう、コハルもそれは理解しているのか言い訳をしながらも自分から彼女達の傍に近づいたり、何とか話題を考えようと必死に頭を働かせる。
けれどもあと一歩の所で退いてしまうせいで、未だに話しかけた人数はゼロ。
中にはコハルに気がつき向こうから声をかけてくれた者もいたのだが...
「あ、コハルちゃんだよね?」
「えっ....!」
「この後みんなでお買い物行くんだけど、よかったらコハルちゃんも.....」
「わ、私はいい...!用事あるから!」
「あっ、行っちゃった...」
いきなりの事に戸惑ってしまい、慌ててその場から逃げてしまう始末。
これでは本当にスタートから躓いてしまう、焦りながらも勇気が出せないコハルは部屋から出ようとした瞬間
「わっ!」
「きゃっ!」
前を見ていなかった為か、不意に目の前から歩いてきた人物と思い切りぶつかってしまった。
「うぅ....」
「えっと、大丈夫?」
「...うん、大丈b.....」
かなりの勢いというのもあり額を押さえながら呻くコハル...そんな中頭上から聞こえてくる声に答えようと顔を上げた彼女だったが、目の前に立つ少女を見て言葉を詰まらせてしまう。
(えっ、何この子!何でこんな大きいの!?)
正義実現委員会の制服を着ているという事は、おそらく彼女も自分と同じ新入生なのだろう。
だがそんな彼女は自分や周りと比べても明らかに″目立って″いた。
「ごめんね、怪我は無い?」
「っ!だ、大丈夫だから!」
「本当?良かったぁ」
ついぼーっとしてしまったコハルだったが、不意に少女が自身の額に触れ顔を覗き込んでいる事に気づき慌ててその手を払い距離を取る。
それでも彼女はコハルの行動を気にすることなく安堵の表情を浮かべていた。
「私、松果ハツネっていうの、貴方は?」
「わ、私は...下江、コハル...」
「コハルちゃんだね、今日からお互いよろしく!」
「あ、うぅ....!」
ハツネはコハルの手を握り、ニッコリと笑顔を向ける。
その一方で突然何の気なしに距離を詰められたコハルの脳内は既にショート寸前となり、いよいよ限界に達してしまった彼女は咄嗟に...
「っ!....死刑ぇ!!!!」
「えぇ!?」
そう叫び、勢いよくその場から逃げ出してしまった。
「し、しけいって...え、何で..?」
後に残されたハツネはコハルが発した言葉の唐突さに、ただただ困惑しながら立ちつくすのだった。