トリニティ校内にあるグラウンド場、そこには何人もの体操着を着た生徒がレーンの上を走っている姿があった。
「はぁっ、はぁっ!」
「あ、あと何周だっけ?」
「わかんない....で、でもそろそろやばいかも...!」
「私も...」
息を切らしながら走る彼女達は皆が正義実現委員会の新入生、”任務がどれだけ長引いても動ける体力が必要”と先輩から言われた彼女達は、現在スタミナをつける為の走り込みを行なっていた。
だがその何名かは既に初めの頃のスピードを失っており、ヘロヘロになりながら必死に腕と足を動かしている。
「ふっ、ふっ...」
「わぁ、あの子速いなぁ」
「ハツネちゃんだっけ...?確か毎朝走ってるらしいよ」
そんな彼女達の視線の先には、周りのメンバーを軽々と追い越していった少女...松果ハツネがいた。
ある意味その見た目から一年生の中では話題に上がる彼女だが、どうやら指定された分の周回を終えた様で、息をつきながらベンチの方へ向かっているのがわかる。
「私も早く休みたい....!」
「と、とにかく走らないと...」
終わりまではもう少し、その気持ちでなんとか自らを奮い立たせる彼女達だったが既に体力は限界を迎えている。
「うぅ、も、もう無理〜!あっ...」
「きゅう...」
けれども気力だけでどうにかなる訳もなく、とうとう彼女達の内二名が目を回しその場に倒れてしまった。
(あぁ、何か目の前が暗く....)
気絶する寸前、二人の耳には遠くの方から少女の声が聞こえ....
「....あれ?」
いつの間に気を失っていたのか、少女は目を瞑ったままぼんやりとした頭で先程までの事を振り返ろうとする。
「あ、目が覚めた?良かったぁ」
そんな中頭上から聞こえてきた声に瞼を動かすと、そこには自身を見下ろしているハツネの姿があった。
どうやら今は彼女の膝に頭を預けている状態らしい、隣に視線を少しズラすと、同じく気を失ったもう一人の少女が木に寄りかかりながらペットボトルの水を飲んでいる。
「二人とも突然トラックの上で倒れたから急いで木陰まで運んだの。あ、これお水だよ」
そう言ってハツネは傍にあったペットボトルを手に取ると、自身の膝に寝せていた少女に水をゆっくり飲ませていく。
「あ、ありがとう」
水を飲み終わった後、流石にこの体勢が恥ずかしいと気づいた少女は慌てて起き上がりハツネにお礼を告げた。
「ごめんね、迷惑かけちゃって...」
「私達も遅れてたから急がなきゃって思って」
「気にしなくて大丈夫だよ、目の前で人が倒れたら助けるのは普通だし、私は普通の事をしただけだから....あ、もう一本水買ってくるね!」
そう言いながらペットボトルの中身が無くなりそうな事に気づいたハツネは立ち上がると、二人を木陰でしっかり休む様伝えてから自販機の元へ走っていった。
「.....」
「.....」
ポカンとしながら彼女の後ろ姿を見ていた二人だったが、やがて互いに顔を見合わせ小さく微笑むと貰ったペットボトルに口をつけ、残りの水を流し込んだ。