【バトルマスター】のゆるふわタウンライフ 作:千寿院うにいくら
高校女子剣道界に二輪の花あり。
一人は
彼女は彗星のように高校剣道界に現れ、圧倒的な力で高校一年生、二年生と全国個人優勝の二連覇を成し遂げた。
そして、高校三年生の夏──
剣道界のみならず武術界すべてからの注目を浴びた彼女は、地方予選で嘘のようにあっさりと敗退した。
彼女は天才であった。
彼女のユニークスキルは『バトルマスター』。
そのスキルは、「あらゆる武具を意のままに使いこなす」。
それがたとえ、初めて手にする武具であっても、だ。
だが、彼女のスキルには欠点があった。
「意のままに使いこなす」の「意のまま」とは、「使い手の意思のまま」に、という意味ではない。
語弊の無いように言い換えるならば、「製作者がその武具に込めた意図のまま」使いこなすという意味なのである。
たとえば、彼女が「神の造りし魔王を打ち滅ぼす伝説の聖剣」を手に取れば、その意図に則って容易に魔王を打ち滅ぼすだろう。
また仮に、地球防衛軍の兵器設計者が「侵略者を超撃滅ねだやしにするヒートビームレーザー銃」を開発し、彼女がそれを手に取れば、その設計意図のままに地球へのあらゆる侵略者を超撃滅し、ねだやしにしてしまうだろう。
彼女の『バトルマスター』スキルは、「製作者の意に沿って」完璧に武具を使いこなすというスキルなのである。
彼女の不運は、彼女の愛用の竹刀の製作者がサディストの変態ということだった。
彼女の愛用の竹刀の製作者は語る。
「オレの作った竹刀を使う子は、毎日毎日がんばって練習してもらいたいねぇ~。そう、学生生活を全っ部犠牲にするくらい毎日よぉ。んで、練習した分だけ実力がつくでしょ。でもねぇ~……負けて欲しいよね!それも引退のかかった大切な試合で!学生生活を犠牲にして毎日を練習に費やして、それで最後の最後に大事な試合に負けて、そんで悔しくて悔しくて涙すんの!クゥ~これが青春ってもんだろぉ!」
その竹刀の製作者は、高校球児が試合に負けて泣きながら球場の砂をかき集めるシーンを見るのが大好きなタイプの人間だったのだ。
そして、彼女のバトルマスタースキルは、その竹刀の製作者の意のままに彼女を毎日練習に明け暮れさせ、高校生活最後の集大成となる大切な試合において、彼女を無様に敗退させてしまった……のだ。
冬木ツバキが高校生活の全てを注ぎ込んだ青春は、終わった。
そして、次なる不運が彼女を襲う。
部活の引退時、後輩からプレゼントされたのだ。
「ダメ人間にするソファー」を!
その製作意図に従って──
──冬木ツバキは、ダメ人間となった。
高校はなんとか卒業。
彼女は、事実上のニー……いや、在宅浪人&家事手伝いの身となった。
髪はボサボサ、服はジャージ(大量生産の既製品なので影響はない)である。
かつて、花と讃えられた彼女のその美しい容姿は、もはや見る影もない。
普段着は高校のジャージか、課金してない初期アバターのような華の無い服装である。
この物語は、そんな彼女が、いつか地球防衛軍に入隊し、地球を守る正義のヒロインになるまでの物語──────
次回、『<Equip.1>飼い犬』