眩草はどちらの原作も大好きなので、どちらも大切にしたつもりです。が、お話を書くにあたり、かなりのシーンを削ったり、付け足したり、いたしました。ご了承ください。
ボーイズラブの描写は…無いと思います。気になるところございましたらお戻りください。
「…では、今回のアルバムはデビュー後の一年を振り返り、さらに来年への意気込みを込めたものになるのですね?」
「Sound Around 山口一」と書かれた社員証を下げた初老の男は、目の前に座った青年に尋ねた。
「あぁ、この一年でいろんな事があったが、これからも突き進んでいきたいと思う」
青年は置かれたギターケースを撫で、少しうつむき加減で答える。首には、彼が来客であることを示すカードがかけられている。後ろのほうで結んだ銀色の髪や、濃い紺色の目が、彼の中に外国人の血が流れている事を伝えている。端正な顔立ちや身につける服と相まって、彼は世界からそこだけ浮いているように見えた。
「なるほど。しかし、デビューしたなりの悩みもあるのでは?」
白い指が優しくケースを叩く。黒いケースの中には青や銀色で装飾された美しいギターが入っているのだった。別の世界から持ちこまれたそれで、あのオープニングアクトを始めとし、いくつかの公演を成功させてきた。
「そうだな。迷う事も多いが……なんとかやっているさ」
そう答えノエルは微かな笑みを見せた。それを見て、あれから1年が経ったのかと、山口は感慨深く思う。初めて会った時、父親が生きているならあんたみたいな人だったら良いのに、と茶化していたが、彼は今でもそう思ってくれているのだろうか。
「なるほど……それは良いことですね」
山口はそう返し、何事かノートに書き込むと、チラリと時計を見上げた。6時を少し過ぎている。
「もう、こんな時間ですか。最近暗くなるのも早くなりましたし、そろそろ終わりにしましょうか?」
そんな時間かと、ノエルも時計を見上げる。
「夜になると冷えるようになりましたし、風邪を引かないように気をつけてくださいね」
「あんたもな。山さん。じゃあ、そろそろ帰るか」
荷物を取るノエル。山口もノートや筆記用具を手にして立ち上がった。
「今日はこの後何か用事があるのですか?」
山口はノエルに話しかけた。
インタビューをしていた部屋から出て、白い蛍光灯で照らされた廊下を並んで歩く。出版社が入ったらオフィスビルは隅々まで掃除が行き届いている。
「いや。特に何も無いけど…」
ノエルは山口の方を見て答える。
「では、銀河のお祭りに行ってみてはどうでしょう」
「銀河のお祭り?」
ノエルはそのまま繰り返した。この雑誌社を訪れたことは何回かあったが、そのような話は初めて聞いた。
「えぇ。最近できたらしいイベントで、イルミネーションや飾り付けがとても綺麗ですよ」
私はまだ仕事があるから行けませんけど。笑えば、大変なんだな、と労うように言われる。
「どうせ行くなら一緒に行きたかった」
少し残念そうに肩をすくめる。
あぁ、1年という歳月は若者をこうも変えるのか。ノエルを送り出し、山口はそんな事を思った。