転スラヤンデレ短編集   作:ヤンデレは良い文明

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リムルがやっていることは某超能力ドラマのヤンデレ記憶操作系メガネをイメージしています。



頭痛を治すには代償が必要だった件

 

 

「暇だなー」

 

 

リムルさんとの約束をした日から数日が過ぎた。

その間、私はまだ目が覚めたばかりだからという理由で、外へ出ることはおろか、部屋から出してもらえることはなかった。

流石にいい加減、体を動かしたかった私はリムルさんに外へ出たいと抗議したところ───

 

 

『外に出たいだと?お前、自分がどんな状況だったのかあの時説明した筈だぞ。ダメだ、少なくとも俺が許可するまでは外には出さないからな。言っとくが交渉は受け付けないぞ』

 

 

───と、こんなふうに捲し立てられてしまい。

あの日の約束がある手前、迂闊に言葉を返すことができずに見事に、私は撃沈したのだった。

 

 

「でも本当にいい加減、外に出たいんだよなぁ。みんなにも久しぶりに会いたいし」

 

 

そう。

私はこの数日間、まともに会話したのがリムルさんただ一人なのである。

どういうワケか、私を訪ねてくる人は一人もいなくて。

心のどこかで誰か会いに来てくれるのでは、と期待にも似たものがあったのだが。

こうも誰も会いに来てくれないのはすごく寂しくて辛いのである。

いくら私が一人が好きなタイプだとしても、孤独になりたいわけじゃない。

いや、わかっている。

リムルさんは毎日会いに来てくれてるのに、こんな浅ましいことを願うのはあまりに失礼だ。

リムルさんにも、他のみんなにも。

幸福である筈なのだ。

私を心配してくれて、私を心から想ってくれる人なんて今までの人生ではいなかったから。

だから、この胸を占める感情は孤独や寂寥感ではなく、感謝と幸せに満ちているべきなのだ。

 

 

「………やっぱり一人でいると思考がマイナスの方向にいっちゃうな」

 

「はぁ……」

 

「はやくリムルさん来ないかなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

数時間後。

ていうか、この部屋に時計なんてないからわかんないけど。

それはともかく。

暇潰しに、今までの人生を振り返ってみることにした。

 

 

「最初にこの世界で出会ったのがリムルさんだったんだよな」

 

 

今でも鮮明に思い出せるあの出会い。

あの真っ暗な洞窟で、目覚めて。

何故こんなところにいるのかわからなくて、よくあるRPGのゲームに出てきそうな蛇とかがいて。

あんまりにも怖くて、湖のそばで縮こまっていたところをリムルさんに見つけてもらったんだ。

 

 

「あの時はリムルさんはスライムの姿だったから、襲われるのかと思って逃げ出そうしたところで話しかけられたんだっけ」

 

 

最初こそびっくりしたけど、話してみると元は同じ人間だったことを聞いて安心した覚えがある。

しかも同じ日本の出身って聞いたときは驚いたなぁ。

 

 

「多分、リムルさんに出会わなかったらモンスターに襲われて私死んでた」

 

 

思えばリムルさんには本当に感謝しかない。

助けてもらってばっかりで、申し訳ない。

リムルさんのために私でも何か出来ることはないのだろうか。

 

 

「また会いにきてくれたときは改めて感謝を伝えなきゃ」

 

 

そういえば、リムルさんは前の世界で死んでスライムになった言ってたけど、私ってどうやってこの世界に来たんだろう?

前の世界では私、死んでないし。

 

 

「あれ……?どうやって私この世界に来たのか思い出せない……ていうか前の世界の私ってなんだっけ?」

 

 

違和感。

気付いてみればそうだ、私の記憶はどうもおかしい。

私自身が死んだ記憶がないのはいい。

だが、前の世界の記憶は朧げで。

 

 

「うぅ……なんで」

 

 

それとは反対にこの世界での記憶は鮮明に思い出せる。

疑念と矛盾が満ちていく。

でもこの記憶は、思い出は確かな筈で。

ああ、頭が痛い。

 

 

「うぅ……!頭が割れる……!」

 

 

まるで思い出すな、と警告するように痛みが増していく。

痛い、痛い、痛い……

涙が溢れる。

誰でもいい、誰か───

 

 

「助け、て」

 

「もう大丈夫だぞ、エリル」

 

「……ぁ」

 

 

柔らかな声。

頭をそっと抱きしめられる感覚。

不思議と痛みが消えていく。

リムルさんがきてくれた。

 

 

「リムル……さん…?」

 

「ああ、リムルさんだぞ。大丈夫か?」

 

「ああぁ………!!」

 

 

消えていく痛みとは反対に涙が勢いを増して溢れていく。

今はただ、この抱きしめてくれるこの腕を。

この柔らかな声を。

暖かな体温を。

まるで赤子が母の手を掴むように。

縋っていたかった。

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

「………うぅ」

 

「どうだ、落ち着いたか?」

 

 

あれから少し経ったあと。

私はリムルさんに抱きしめられ、すっかり安心してしまった私は大泣きをかましてしまった。

恥ずかしさのあまり、顔に火がつきそうである。

だけどそれを顔に出さぬよう努める。

 

 

「うん……落ち着いたよ。もう頭痛もしないし」

 

「そうか!それは良かった………それでなんだが、エリル」

 

「お前、その頭痛の原因は何か心当たりはあるか?」

 

 

リムルさんが頭痛の原因を聞いてきた。

だが困ったことに私自身、何故あんなに酷く頭が痛んだのかわからない。

知らなかっただけで私は何かの病気なのだろうか。

 

 

「ううん、心当たりはないかな」

 

「ふ〜ん……そうか。なら次はさっきみたいに頭痛が起きないよう、薬を飲んでおかないとな」

 

「薬?ポーションを作れるのは知ってたけど、まさか頭痛薬まで作れるようになったの?」

 

「お前が眠りについてからいろいろあってな。薬も作れるようになったんだ」

 

 

すごい。

前々から思ってたけど、リムルさんってほんとになんでもできるんだ。

カリスマもあって、力もあって、みんなからの人望も厚い。

こんな私を気にかけてくれるリムルさんは良いヒトだ。

────やっぱり私なんか。

 

 

「これがさっき言った薬だ………話聞いてるか?」

 

「あ、ごめんなさい。ちょっとぼーっとしちゃって」

 

「なら仕方ない、最初から説明するぞ───」

 

 

リムルさんの説明によるとこの頭痛薬はポーションと同じ液体で、毎日欠かさず飲むようにとのことだった。

……………なんだか液体の薬というのは珍しい気もする。

薬の色は水色で、瓶を揺らしてみるとトプトプと、粘度の高い音をたてる。

 

 

「もう一度言うが毎日欠かさずだぞ?」

 

「わかってる、毎日ちゃんと飲みます………そんなに信じられない?」

 

「いや、そういうワケじゃないが………それじゃ一回飲んでみてくれ」

 

「ん、わかった」

 

 

リムルさんの言う通り飲んでみる。

 

 

「んく、ん………ぷは…これ、結構飲みやすいね。ねっとりしてるのかなと思ったけどそんなに絡み付いてこなかった。味はあんまりしなかったけど」

 

「……………」

 

 

?なんだかリムルさんが顔を赤くしている。

何かあったのだろうか。

 

 

「リムルさん?」

 

「あっ……いっちゃった……」

 

 

慌てるようにして部屋を出て行ったリムルさん。

顔は相変わらず赤いままだった。

………置いてかないでよ。

 

 

「はあ、寝よ」

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

こぽこぽ

 

吐き出した息が溶けていく。

 

ずる、ずる

 

なにかが蠢く音がする。

 

かた、かた

 

骨が震えて掠れていく。

 

じくり、じくり

 

柔らかな痛みがゆっくり響く。

 

かちゃ、かちゃ

 

心に鎖が絡まっていく。

 

ぐちゃ

 

もう二度と元に戻れない。

 

消えていく、消えていく。

 

いつかのあの日も、あの顔も。

 

全て泡になって弾けていく。

 

それはまるで夢のように。

 

染めるように侵されていく。

 

だけど恐れることも、不安を感じることもない。

 

ぱきん

 

大切だったものが割れる音が響いたきがした。

 

 

 

 

 




何を代償にしたんだか。


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