潜在力SSS級の『訳あり美少女たち』を拾ったら懐かれたので、神スキル【運命鑑定】で大陸最強に育成し、俺を追放した連中に『ざまぁ!』します   作:月城 友麻

10 / 185
10. 衝撃の初クエスト

 翌朝、冒険者ギルドの正面玄関――――。

 

 朝露がダイヤモンドのようにキラキラと石畳を飾る中、五人の影が静かに集まった。

 

「お、おはよう」

 

 エリナが控えめに手を挙げる。新調した赤い剣の鞘が朝日を受けて血のように輝く。

 

「おはようございます、皆様」

 

 ミーシャの聖女の微笑みは変わらない。だが空色の瞳の奥に、昨日まではなかった本物の期待が、小さな炎のように揺れていた。

 

「お、おっはよ!」

 

 ルナの声が緊張で裏返る。新しい杖を胸に抱く姿は、初めて魔法を覚えた日の自分を思い出しているかのよう。

 

「ボクも来たよ」

 

 シエルの銀髪が風に舞う。男装の凛々しさの中に、逃亡者ではなく冒険者としての覚悟が宿り始めていた。

 

「全員揃ったね。さて――」

 

 レオンが扉に手をかける。

 

「今日から、伝説の始まりだ!」

 

 重い扉がギギギィと開く。その向こうに、運命が待っている――――。

 

 

       ◇

 

 

 朝のギルドホールは喧騒に満ちていた。依頼掲示板の前で、冒険者たちが良い案件を求めて押し合っている。

 

 レオンは低ランク向けの掲示板を指でなぞる。薬草採取、ゴブリン退治、荷物運搬――どれも新人には相応しい、地味で安全な仕事。

 

 しかし――なぜか【運命鑑定】は何も言ってこない。

 

 きっとどれが一番いい案件なのか【運命鑑定】は知っているはずだ。だが、それを提示してこない。

 

 レオンはその沈黙に不吉なものを感じていた。

 

 こういう肝心な時に発動できないのだとしたら【運命鑑定】をいったいどうやって使えばいいのか? 彼女たちはワクワクしながら自分の指示を待っているというのに――――。

 

 レオンはふぅと大きくため息をつくとキュッと口を結んだ。

 

 だが、いつまで経っても何の反応もない。教えてもらえないなら順当なものを選ぶ以外ない。エリナ、シエルに実戦を、ルナに制御を、ミーシャに判断力を鍛える依頼を――。

 

「ねえ、これなんてどう?」

 

 待ちきれなくなったルナが『街道のゴブリン退治』を指差す。報酬は金貨十枚。堅実な第一歩には確かにマッチしている。

 

「そ、そうだね……。いいかもしれな……」

 

 その時だった――。

 

 バァーン!と、二階の執務室からギルドマスターが血相を変えて飛び出し、ホールの手すりから冒険者たちを見下ろした。

 

「一同注目!!」

 

 年季の入った刀傷だらけの強面が、死人のように青ざめている。

 

「魔物の大群が街に接近している! スタンピードの発生だ!」

 

 瞬間、ギルドホールがどよめいた。

 

 スタンピード――それは冒険者にとって死の代名詞。魔物が集団で発狂し、人間の街を喰らい尽くす最悪の災厄。

 

「誰か、ストーンウォール砦に援軍を!」

 

 ギルドマスターの絶叫が響く――。

 

 だが、誰も動かない。

 

 床を見つめ、息を殺し、存在を消そうとする冒険者たち。当然だ。万を超える魔物の群れに、冒険者パーティがどうこうできるはずがない。

 

「報酬は弾む! 頼む、誰か――」

 

 懇願は沈黙に飲み込まれる。死の霧が、ギルドを包み込んだ。

 

(さすがに、これは無理だ)

 

 レオンも首を振りかけた、その瞬間――視界が、突然黄金に染まった。

 

【運命分岐点:少女覚醒】

【ストーンウォール死守】

【推奨行動:直ちに向かう】

【報酬:金貨五百枚、少女たちの真の覚醒】

【警告:この選択を逃せば、十万人が死ぬ】

 

「へっ!?」

 

 レオンの背筋に冷たい汗が流れる。

 

(なぜ? なぜ俺たちが?)

 

 どう考えても、死しか見えない。新人五人が、万の魔物を相手に――。

 

「行けと出たのね?」

 

 ミーシャの声が、思考を断ち切る。金髪の聖女が、意味深な微笑みを浮かべていた。まるで全てを見透かすような、空色の瞳。

 

「そ、そうなんだが……」

 

「なら、行きましょ?」

 

 ピクニックにでも誘うような軽やかさ。だが、その声の奥に確信があった。

 

「あなたのスキルを、信じてもいい?」

 

 エリナが静かに問う。黒い瞳に、初めて見せる無垢な信頼。

 

「みんなが行くなら、ボクも」

 

 シエルが弓を掲げる。震えていた手が、今は真っ直ぐだ。

 

「あたしだって……怖くなんかないんだから!」

 

 ルナが杖を握りしめる。緋色の瞳に、恐怖を超えた何かが宿っていた。

 

「いやいやいやいや、待ってほしい。確かにスキルではそう出てるけど、百パーセント安全なわけじゃないんだと思う。僕らはまだ未熟だ。もっと経験を積んでからじゃないと……」

 

「この街の人々を、見殺しにするの?」

 

 ミーシャの言葉が胸を刺す。

 

「……え?」

 

 確かに、今スタンピードを止めなければ、この街【クーベルノーツ】は壊滅するだろう。

 

 クーベル公爵の治めるこの王国第二の都市には十万人も住んでいる。全員無事に逃げられるはずがない。子供を抱えた家族、老人、病人――多くの者が犠牲になるだろう。

 

 窓の外を見れば、早くも逃げ惑う人々。荷物をまとめる商人、泣き叫ぶ子供、老人に肩を貸す若者――――。十万の命が、今、天秤に乗っている。

 

「くっ……」

 

 七年前の記憶が蘇る。

 

 妹の手を、掴めなかったあの日。「お兄ちゃぁぁぁん」という声が、今も耳から離れない。

 

(また、見殺しにするのか?)

 

 レオンはギュッと目を閉じた。スキルは『行け』と言うものの確実に成功する保証などない――――。

 

 だが、行かなければ確実に多くの人が死ぬのだ。

 

 で、あれば悩むことなどない。

 

 これが僕らの、めくるべきアルカナの運命なのだ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。