潜在力SSS級の『訳あり美少女たち』を拾ったら懐かれたので、神スキル【運命鑑定】で大陸最強に育成し、俺を追放した連中に『ざまぁ!』します 作:月城 友麻
その速度は、見た目よりも遥かに速かった。
音速を超え、暴風を伴い、すべてを薙ぎ払いながら迫ってくる、破壊の波。
「え? これ、もしかして……」
レオンの声が、震えた。
「ほっとくと吹き飛ばされちゃうぞ? きゃははは!」
シアンは、実に楽しそうに笑った。
まるで、遊園地のアトラクションを楽しんでいるかのように。
「ミーシャ!」
「分かってる!」
ミーシャは、即座にシールドを展開した。
先ほどよりも遥かに強力な、黄金色の防護結界。レベルアップによって増幅された魔力が、眩い光となって五人を包み込む。
直後――。
ドォォォォォォン! と、凄まじい衝撃波が、一行を襲った。
世界が、揺れる。
大地が、悲鳴を上げる。
空気が、
巨岩や巨木たちが、衝撃波に乗って次々と飛んでくる。
数トンはあろうかという岩の塊が、弾丸のような速度でシールドに激突する。
「ひぃぃぃ!」
「いやぁぁぁ!」
「こわいこわいこわい!」
「死にたくないよぉぉぉ!」
少女たちが、頭を抱えてしゃがみ込んだ。互いの身体を抱き合い、恐怖に震えながら。
「きゃははは! すごいすごい!」
シアンだけが、無邪気に手を叩いて喜んでいた。
永遠に続くかのように、轟音と、衝撃と、恐怖が、彼らを包み込み続ける。
「一体何なんだよぉ〜」
レオンは理不尽極まりない話に思わず頭を抱えた。こんな意味不明な未来など一度も視たことがなかったのに。
やがて収まっていく衝撃波。
風が止み、轟音が遠ざかり、静寂が戻ってくる。
レオンは、恐る恐る顔を上げ――絶句した。
辺り一面が、完全に変わり果てていた。
魔の山方向に広がっていた魔の森と呼ばれていた広大な森林地帯。恐ろしい魔物たちが
ただ、荒廃した大地が広がるばかり。
木々は根こそぎ薙ぎ倒され、大地は抉れ、岩は砕け散っている。
地平線の彼方まで、赤と黒と灰色だけが支配する、死の世界。
ここに生息していたであろう魔物たちの姿も、一体も見えなかった。
すべてが消え、無に帰していた。
「あわわわ……」
あまりの惨状に、レオンは言葉を失った。
これが、
これが、創造主の使いの、ほんの気まぐれ。
人間など、本当に塵芥に等しい存在なのだと、改めて思い知らされた。
レオンの背筋を、冷たいものが這い上がっていく。
だが――――。
こんなことが許されるのだろうか?
山を吹っ飛ばすようなこんな圧倒的なエネルギーが、人の住むところに落ちたら数十万人が蒸発してしまう。
いくら何でもやりすぎである。
レオンは楽しげなシアンを見た。
「あ、あなたは天界の方ですよね?」
「そうだよ?」
シアンは、何を今更、とでも言いたげに小首をかしげた。
「なんでこんなことをするんですか!?」
気がつけば、叫んでいた。
「王都に落としていたら、何十万人も死んでいたじゃないですか!」
恐怖も、畏敬も、すべてを忘れて。
ただ、胸の奥から湧き上がる怒りだけが、レオンを突き動かしていた。
背後で、少女たちが息を呑む気配がした。
シアンの碧い瞳が、わずかに見開かれた。
怒りではなく、興味。
不快ではなく、好奇心。
まるで、珍しい虫を見つけた子供のような目で、レオンを見つめている。
「ん? だって、そう頼まれてたんだよ?」
その答えはあまりにも、軽かった。
何十万もの命が懸かっていたというのに、彼女にとっては、ただの「頼まれごと」でしかないのだ。
「頼まれたら人も殺すんですか!?」
レオンの声が、裏返った。
「そうだよ?」
シアンは、にっこりと微笑んだ。
「だって、人間は全員僕が創ったんだもん。殺したっていいじゃない。ふふっ」
「へ?」
レオンは、目を丸くして固まった。
人間を、創った。
だから、殺してもいい。
それは、あまりにも異質な論理だった。人間の価値観では、到底理解できない思考回路。
けれど、彼女にとっては――それが、当たり前なのだ。
創造主にとって人間の命の話など、粘土細工を壊す程度のことなのかもしれない。
子供が砂の城を壊すように、創った者には壊す権利がある。
それが、神の論理なのだろうか。
「特にさ」
シアンは、つまらなそうに肩をすくめた。
「王都にいる人たちって、王侯貴族の言いなりで、旧態依然とした凝り固まった人たちでしょ? 僕からしたら失敗作。意味ないんだよね」
失敗作。
意味がない。
何十万もの命が、たったそれだけの言葉で切り捨てられた。
まるで、出来の悪い作品を評価するかのように。
「し、失敗作だなんて……」
レオンの声が、震えた。
怒りと、悲しみと、やるせなさが、複雑に絡み合っていた。
「もう何十年も人口も増えず、文明も文化もむしろ後退してる」
シアンは、退屈そうに空を見上げた。
その碧い瞳には、失望と、諦めと、そしてほんの少しの寂しさが浮かんでいるように見えた。