潜在力SSS級の『訳あり美少女たち』を拾ったら懐かれたので、神スキル【運命鑑定】で大陸最強に育成し、俺を追放した連中に『ざまぁ!』します 作:月城 友麻
「一度リセットした方がいいって、ずっと思ってたんだ」
「リ、リセット!?」
レオンは、信じられない思いで叫んだ。
「か、彼らだって必死に生きているじゃないですか! 毎日を懸命に、家族を養い、子供を育て、明日を信じて……!」
脳裏に浮かぶのは、街の人々の姿だった。
市場で威勢よく声を張り上げる商人。
路地裏で笑い転げる子供たち。
夕暮れの中、疲れた足を引きずりながら家路を急ぐ労働者。
病床の母のために、必死で働く少年。
彼らは確かに、目先のことしか見てないかもしれない。
おかしいと思いながらも、日々生きていくために考えるのを止めていたかもしれない。
けれど、それぞれが必死に、懸命に、自分の人生を生きている。
それを、失敗作だなんて。
それを、意味がないだなんて。
ところが――。
「うん、だからさ」
シアンは、あっけらかんと言った。
「いったん死んでもらって、転生させた方が幸せになるんじゃない?」
「へ? て、転生……?」
レオンは、予想外の言葉に目を瞬かせた。
「そう。死んだからって終わりじゃないよ」
シアンは、人差し指を立ててニコッと笑う。
「魂は次の人生に引き継がれるからね。今の人生がダメでも、次があるの。だから、そんなに深刻にならなくていいんだよ?」
その言葉はどこか甘く、優しく響いた。
神の視点から見れば、死は終わりではなく、ただの通過点に過ぎないのかもしれない。
魂は永遠で、肉体は器に過ぎないのかもしれない。
けれど――。
「いやいやいやいや……」
レオンは、激しく首を振った。
胸の奥で、古い傷が
七年前の、あの日の記憶が。
決して癒えることのない、心の傷が。
「妹のリナは幼くして人生を閉ざされたんです! もう会うこともできない……。そんな事態を招くことは、やっぱり駄目です!」
声が震え、目頭が熱くなる。
忘れたことなど、一度もなかった。
あの日。
目の前で倒れた妹。
血の海の中で、冷たくなっていく小さな身体。
助けを呼ぼうとしても、声が出なかった。
身体が動かなかった。
ただ、震えながら、妹の名前を呼び続けることしかできなかった。
リナ、リナ、リナ――。
何度呼んでも、妹は目を開けなかった。
何度触れても、その身体は冷たくなっていくばかりだった。
あの日から、レオンの中で何かが壊れた。
血を見ると動けなくなる。
大切な人を守れなかった罪悪感が、今も胸の奥で燃え続けている。
自分がもっと強ければ。
自分がもっと早く動けていれば。
そんな後悔が、七年間、一日も休むことなく、レオンを苛み続けてきた。
ところが――。
「え? リナちゃんならいるじゃん、そこに」
シアンは、不思議そうに首を傾げた。
何を当たり前のことを言っているの? とでも言いたげな表情で。
そして、何気ない仕草で――ルナを、指さした。
「何言ってるんですか! 彼女はルナです! リナは七年前に死んだ僕の妹のことです!」
レオンは、猛然と抗議した。
当然だ。
ルナとリナは、別人だ。
髪の色も、瞳の色も、まったく違う。
似ているところなど、どこにもない。
しかし――。
「リナちゃん、何とか言ってやって」
シアンは、あきれ顔でルナに振った。
まるで、隠し事をしている子供を
「……へ?」
レオンは、慌ててルナの方を振り向いた。
そこには――キュッと口を結んで、うつむくルナがいた。
いつもの勝気な表情はどこにもない。
どこか居心地悪そうに、視線を泳がせている。
その姿は、まるで――秘密を暴かれた子供のようだった。
「ど、どうした……んだ? ルナはルナ……だよね?」
レオンは声が震えてしまう。全く意味が分からなかった。
なぜルナは、シアンの言うことを否定しないのだろう?
なぜ、「違う」と言ってくれないのだろう?
「ちょ、ちょっと……。ど、どうしたの?」
胸がキュッと締め付けられた。
本当に――ルナは、リナなのだろうか?
ルナは、相変わらずうつむいたまま、何も言わない。
その沈黙が、何よりも雄弁に真実を物語っていた。
「え? 本当に……リナ……なの?」
レオンは、信じられないという風にルナの顔を覗き込んだ。
心臓が、激しく脈打っている。
もし本当なら。
もし、ルナがリナなら。
七年間、ずっと抱え続けてきた罪悪感は、どうなるのだろう。
ずっと会いたかった妹は、こんなにも近くにいたというのか。
初めて出会った時から、ずっと側にいたというのか。
「あたし……」
ルナは、ポツリと呟いた。
その声は、いつもの元気さからは程遠く、小さく、か細かった。