潜在力SSS級の『訳あり美少女たち』を拾ったら懐かれたので、神スキル【運命鑑定】で大陸最強に育成し、俺を追放した連中に『ざまぁ!』します 作:月城 友麻
「す、すごい……」
エリナの黒曜石の瞳が、珍しく驚愕に見開かれている。
いや、それだけではない。
どこか、懐かしそうな――切なそうな色が、その奥に揺れていた。
「き、綺麗……」
ルナが、食い入るように夜景を見つめている。
緋色の瞳に、無数の煌めきが映り込んでいる。
まるで、瞳の中に星空が生まれたかのように。
その横顔は、いつもの勝気な少女とは思えないほど、無防備で、純粋だった。
「こんな世界が、あるの……?」
シエルが、信じられないという顔で周囲を見回している。
貴族の令嬢として、数々の豪華な城や館を見てきたはずの彼女でさえ、この光景には言葉を失っていた。
その碧眼には、驚きと、そして――微かな憧れが宿っていた。
「こ、ここは……?」
レオンは、そのどこまでも続く夜景を見回しながら、呆然と呟いた。
地平線の彼方まで、光の海が広がっている。
終わりが、見えない。
人の手で、これほどのものが創れるのか?
「ふふん、ここは僕のお気に入りの街だゾ? ここはみんな平等で貧困もないゾ。どう?」
シアンは、ドヤ顔でレオンの顔を覗き込む。
その碧い瞳が、得意げに輝いている。
ゴォォォォォ……!
その時、轟音が空を切り裂いた。
「へっ!?」「はぁっ!?」「うひゃぁ!」
巨大な影が、頭上を通り過ぎていく。
銀色の翼を持った、巨大な……何か。
鳥ではない。
竜でもない。
金属でできた、巨大な飛行物体。
その腹には、無数の窓が並んでいる。
中に、人影が見えた気がした。
それは、遥か彼方の地平線に向かって、優雅に降下していく。
「な、何だあれは!?」
レオンは、思わず叫んだ。
心臓が、激しく脈打っている。
あれほどの巨体が空を飛んでいるのに、魔法の気配はまったく感じられない。
ならば、一体何の力で?
「ひぇぇぇ……!」
ルナが、レオンの腕にしがみついた。
小さな身体が、ガタガタと震えている。
「ま、魔物……?」
シエルが、反射的に弓を構えようとして――自分が丸腰であることに気づき、蒼白になった。
「落ち着きなってぇ。ちょっと、説明してあげて。佐藤
シアンは、クスッと笑うと、エリナに水を向けた。
その言葉は、あまりにも唐突で、あまりにも異質だった。
「へ?」「はぁ?」「エ、エリナ?」
みんなの視線が、一斉にエリナに向けられる。
サトウ、エリナ。
それは、聞いたことのないタイプの名前だった。
大陸のどの国にも存在しない、異国の響き。
エリナは――頭を抱えた。
「う……、うぅ……」
苦悶の声が、漏れる。
まるで、何か重いものが、一気に押し寄せてきたかのように。
黒髪の間から覗く顔が、苦痛に歪んでいる。
こめかみを押さえ、膝から崩れ落ちそうになる。
「ど、どうしたんだ、エリナ!」
レオンは、慌ててエリナの元に駆け寄り、その身体を支えた。
冷や汗が、額に浮かんでいた。
「だ、大丈夫……。思い出した、だけ……」
エリナはそう言いながら、冷や汗を額に浮かべながらよろよろと立ち上がった。
黒曜石の瞳が、涙で滲んでいる。
けれど、その奥には、確かな光が宿っていた。
何かを、受け入れたような。
「ここは渋谷……日本という国の、街の一つだわ……」
エリナはそう言うとキュッと口を結んだ。
「に、日本……?」
聞いたことのない国名だった。
大陸には存在しない国の名前。
「そう、私はあそこで仕事をしていたの……」
エリナは、懐かしそうな眼をして、遠くに見える新宿の高層ビル群を指さした。
夕暮れの空を背景に、無数の塔がシルエットとなって立ち並んでいる。
それは、まるで巨人の墓標のようにも見えた。
「あ、あそこで? ま、まさか……」
レオンの脳裏に、一つの可能性が浮かんだ。
ルナがリナの転生者だったように。
エリナもまた――。
「そう、私は転生者だったわ」
エリナは、静かに告白した。
その声は、どこか遠くを見つめているようだった。
過去と現在の狭間で、揺れているような。
「前世は、ここで暮らしていたの。毎日、満員電車に揺られて、あのビルまで通っていた……」
レオンは、少女たちと顔を見合わせた。
誰もが、驚きに目を見開いている。
エリナの過去。
彼女自身忘れていた、心の奥底に封印された記憶。
それが今、この場所で解き放たれようとしていた。
封じられていた扉が、ゆっくりと開いていく。
「働きすぎで、ふらふらしてて……そのまま交通事故でね……」
エリナは、自嘲気味に笑った。
けれど、その笑みは、どこか痛々しかった。