潜在力SSS級の『訳あり美少女たち』を拾ったら懐かれたので、神スキル【運命鑑定】で大陸最強に育成し、俺を追放した連中に『ざまぁ!』します 作:月城 友麻
「いててて……」
レオンは、しりもちをついた。
そして、思わず漆黒の鱗に手をついて――その感触に、目を見開いた。
硬い。
けれど、不思議と温かい。
まるで、日向で温められた岩のような感触。
その下で、巨大な心臓が脈打っているのが分かる。
ドクン、ドクン、と。
生きている。
この巨大な存在は、確かに生きているのだ。
巨大な背中は、十人以上が乗っても余裕がありそうだった。
漆黒の鱗の間から、ところどころ鋭い突起が生え、それがまるで手すりのように、乗り手を支えていた。
「はい、じゃぁ恵比寿までヨロシク!」
シアンは龍の後頭部にひょいっと座り込むと、ペシペシっと鱗を叩く。
まるで、馬の首を叩くような気軽さで。
「もぅっ! そんなタクシーみたいに……」
レヴィアは、単なる乗り物扱いされることに不満をこぼす。
天下の真龍が、タクシー代わりとは沽券にかかわるのだ。
「つべこべ言わない!」
シアンはブンっと腕を振り上げた。
金色の光が龍全体を包み込み、漆黒の鱗が黄金の輝きを帯びていく。
美しい――。
伝説の龍が黄金の光を纏った。それは恐ろしいほどに、美しい光景だった。
「へっ!?」
レヴィアが驚いた声を上げた。
自分の意思とは関係なく、力が身体に流れ込んでくるのだ。
これはまさか――?
「ソイヤー! 行っけぇ! きゃははは!」
シアンが、楽しそうに叫んだ。
次の瞬間、ドンッ!と凄まじい加速が、全員の身体を襲った。
一気に引っ張られ、視界が一瞬白くなる。
「ひょえぇぇぇ! 危ない! 危ないですって! うわぁぁぁ!」
勝手に加速させられて、レヴィアは目を丸くして慌てていた。
自分の身体なのに、自分で制御できないのだ。
「ごはっ!」「ひぃぃ!」「いやぁぁ!」「もぉ!」
少女たちも、龍の鱗の突起にしがみついて、必死だった。
ウェディングドレスが、激しくはためく。
渋谷の夜景が、流れ星のように後方へ飛んでいった。
風が、頬を叩く。
「それそれぇ! きゃははは!」
シアンは、心底楽しそうに笑っていた。
そして龍の身体を、くるりと回転させる。
バレルロール。
世界が、ぐるりと反転する。
「きゃぁぁぁ!」
「もう無理ぃぃぃ!」
悲鳴が、夜空に響き渡った。
シアンは、そんな悲鳴すらも楽しんでいるようだった。
いきなり上空に現れた巨大な光る龍に、渋谷の街は騒然となった。
無数の人々が空を見上げている。
映画か何かの撮影なのか。
空中に映像を投影しているのか。
人々は、その異常事態をいぶかしそうに見つめていた。
誰もが、スマートフォンを掲げて映像を撮ろうとしたが――なぜか、カメラには何も映らなかった。
星すら見えない都会の空しか撮れず、龍の姿はどこにも映らない。
スマートフォンが故障したのかと、人々は首を
画面を確認し、設定をいじり、また空を見上げる。
確かに、そこには金色の光を纏った巨大な龍が飛んでいるのに。
シアンの力が、人間の記録装置を
◇
そんな群衆たちの上空を飛びながら、レオンは眼下に広がる光景を見つめた。
地上に降りた銀河。
四千万の命が紡ぐ、光の海。
その上を、美しい花嫁たちと一緒に、漆黒の龍に乗って飛んでいく。
風が、優しく頬を撫でる。
まるで、夢の中にいるようだった。
いや、夢でも――こんなことにはならないだろう。
追放された落ちこぼれが四人の美しい花嫁と結婚して、伝説の龍に乗って、異世界の光の海の上を飛んでいる。
こんな物語、誰が信じるだろうか。
レオンは、隣に立つエリナを見た。
ウェディングドレス姿の彼女が、夜風に黒髪を
その横顔は、どこか郷愁に満ちていた。
黒曜石の瞳が、眼下の光景を見つめている。
懐かしそうに。
そして少しだけ、切なそうに。
前世で笑い、泣き、夢を見て――過労でぶざまに命を落とした街。
その光の一つ一つに、かつての記憶が宿っている。
レオンはそっとエリナの手を握った。
冷たい夜風の中で温かさが伝わる。
エリナは、少し驚いたように振り向いた。
黒曜石の瞳がタキシード姿のレオンを映し――そして微かに、微笑んだ。
いつもの鋭い表情ではなく、クールな仮面を脱ぎ捨てた、素顔の笑み。
言葉はいらない。ただ、手の温もりがすべてを語っていた。
大丈夫だ、一人じゃない、と。
これからは、ずっと一緒だ、と。
エリナはそっとレオンの肩に頭を預けた。
黒髪が、彼の頬をくすぐる。
甘い香りが、鼻腔をくすぐった。
その重みが、何よりも愛おしかった。
気づけば他の三人もレオンの周りに集まってくる。
レオンはニコッと笑うとみんなを引き寄せ、一緒に美しい夜景に見入った。
龍は首都高速三号線、赤いテールランプの光の川の上をゆっくりと横切って飛んでいく。
渋谷から、恵比寿へ。
過去から、未来へ。
四人の花嫁と、一人の花婿を乗せて。
新しい物語の、始まりを告げるように。