潜在力SSS級の『訳あり美少女たち』を拾ったら懐かれたので、神スキル【運命鑑定】で大陸最強に育成し、俺を追放した連中に『ざまぁ!』します   作:月城 友麻

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18. 闇を払う流星

 だが、インプたちは仲間の死など意に介さない。狂気に満ちた笑い声を上げながら、次々と砦に殺到してくる。

 

「き、来たぁぁ!」

「撃て、撃てーー!」

 

 兵士たちも慌てて応戦を開始した。

 

 矢の雨が夜空を埋め尽くす。

 火球が闇を赤く染め上げる。

 風刃が空気を切り裂いていく。

 

 だが、シエルの矢だけが異質だった。

 

 一射、必殺。

 

 狙った獲物を、決して外さない。まるで矢が意志を持っているかのように、確実に急所を射抜いていく。神の手が導いているかのような、完璧な軌跡。

 

「すげぇ……あの新人」

「百発百中じゃねぇか」

「まるで伝説の弓聖だ」

 

 兵士たちの驚嘆の声が、夜風に乗って響く。

 

 インプの数が、みるみる減っていく。黒い死骸が、城壁の下に積み重なっていく。

 

(やれる……ボクにも、やれる!)

 

 希望が、胸に宿り始めたその時だった――。

 

 月が、突然陰る。

 

(……へ?)

 

 巨大な何かが、星空を塗りつぶしていく。不吉な影が、砦を覆った。

 

「コ、コカトリス!?」

 

 シエルの声が震える。

 

 鶏の頭、蛇の尾、そして巨大な翼。伝説でしか聞いたことのない魔獣が、現実として目の前に現れた。

 

 石化の魔眼(まがん)

 その瞳を見た者は、生きたまま石像と化すという伝説を持つ恐るべき魔物――――。

 

「ひぃっ!」

「と、とんでもない化け物だ!」

「撃て、撃てーー!」

 

 パニックが砦中に伝染する。弓兵たちの手が恐怖で震え、矢が明後日の方向へ飛んでいく。運良く当たった矢も、鋼のような羽毛に弾かれ、カランと虚しい音を立てて地に落ちていく。

 

 コカトリスが、ゆっくりと首を巡らせる。その瞳が、城壁の兵士たちを舐めるように捉えていく――。

 

「ヤバい、ヤバい!」

「隠れろぉぉぉ!」

 

 慌てふためいて逃げ惑う兵士たち。

 

 最初の標的は、櫓だった。

 

 コカトリスがゆっくりと嘴を開く。喉の奥で、不吉な灰色の光が渦を巻き始める。まるで死神が鎌を振り上げるような、絶望的な光景。

 

 グゥオォォォォ!

 

 耳をつんざく咆哮と共に、灰色の霧が津波のように噴出される。石化のブレス――触れた者全てを、生きた墓標へと変える死の吐息だった。

 

「来る! みんな、伏せて!」

 

 シエルが声を振り絞って叫ぶ。

 

 兵士たちが慌てて身を伏せる中、一人だけ――。

 

「あ、足が……動かない……」

 

 恐怖で金縛りになった若い兵士。まだ少年と言ってもいい年頃の顔が、絶望に歪んでいる。

 

 そこにブレスが無慈悲に直撃する――――。

 

「ぐぁぁぁぁ!」

 

 悲鳴が、徐々に石のように固まっていく。皮膚が灰色に変色し、血管が石の紋様となって浮かび上がる。関節が軋みを上げながら固まり、恐怖の表情がそのまま永遠に刻まれていった――――。

 

「嘘……本当に、石に……」

 

 シエルの全身から血の気が引いていく。

 

 震える手で、弓筒の中を探る。

 

 指先に触れたのは、レオンが渡してくれた特別な矢。

 

 破魔矢(はまや)

 

『必ず、これが君を救う時が来る』

 

 砦の倉庫の奥深く、埃を被った箱の中から見つけ出された、反魔法(アンチマジック)の力を宿す伝説の矢。百年前の大戦で使われた、最後の一本。

 

「そうか! これを……これを使うんだ」

 

 でも――。

 

(羽毛は貫けない)

 

 コカトリスの全身は、鋼鉄すら凌駕する羽毛で覆われている。唯一の弱点があるとすれば――。

 

(嘴の中……喉を狙うしかない)

 

 だが、それは自殺行為に等しかった。

 

 嘴が開く時、必ず石化ブレスが放たれる。矢を放つために構えれば、相討ち覚悟の命がけの一射となる。

 

「くぅっ!」

 

 葛藤する暇はなかった。

 

 コカトリスの魔眼(まがん)が、ゆっくりとシエルを捉える。血のように赤い瞳が、次の獲物を定めたようだ。

 

 巨大な翼を大きく羽ばたかせ大きく旋回すると、コカトリスが急降下してくる。

 

 死が、真正面から迫ってきた。

 

「ば、化け物め!」

 

 シエルは震えを振り払い、破魔矢を弓につがえる。矢じりが、月光を受けて七色に輝いた。

 

「勝負だ!」

 

 碧眼が恐怖を超えて輝く。もう逃げ場はない。ここで決めるしかない。

 

 お互いの間合いが、急速に縮まっていく。

 

 五十メートル。

 

 シエルは矢を引き絞る。

 

 三十メートル。

 

 まだ嘴は開かない。

 

 二十メートル――――。

 

 パカッとコカトリスの嘴が大きく開く。喉の奥で、灰色の死の光が激しく渦巻いた。

 

「アルカナを……めくってやる!」 グゥオォォォォ!

 

 同時だった。

 

 破魔矢が虹色の軌跡を描いて解き放たれ、石化ブレスが灰色の津波となって噴出される。

 

 二つの力が、空中で激突し、破魔矢が石化ブレスを切り裂いていく――――。

 

 灰色の霧が、キラキラと光の粒子に変換されていく。まるで、闇を払う流星が、死の海を割って進むように。

 

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