潜在力SSS級の『訳あり美少女たち』を拾ったら懐かれたので、神スキル【運命鑑定】で大陸最強に育成し、俺を追放した連中に『ざまぁ!』します   作:月城 友麻

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180. ケンカはダメ

 レオンは、その視線を正面から受け止めた。怖いが、逃げるわけにはいかない。この熾天使(セラフ)に認めてもらわなければ、この国に未来はないのだ。

 

 しかし、何と言えばいいのか分からなかった。「もっと頑張ります」と言っても、シアンの求める「頑張り」と自分の「頑張り」は違う。「他の国を征服します」とも言えない。それは、自分の信念に反する。

 

 嫌な沈黙が続くかと思われたその時――。

 

 

       ◇

 

 

「きゃーーっ!」「キャハハハ!」「あたしが先ー!」「まってぇ!」

 

 ドタドタと、小動物の群れのような小さな足音が響いてきた。

 

 その音は、緊張感を一気に吹き飛ばすような、無邪気で愛らしいものだった。

 

 金髪、銀髪、赤い髪、黒い髪。

 

 四人の幼い少女たちが、一目散にこちらへ走ってくる。

 

 レオンの娘たち――四人の姫君たちだった。

 

 三歳になったばかりの彼女たちは、ママたちの言いつけを守らず、突っ込んでくる。子供の好奇心は止められないのだ。

 

 一番乗りで到着した黒髪の(りん)は、迷うことなくシアンの元へ走り、その脚にガシッとしがみついた。

 

「ケンカはダメーっ!」

 

 その声は、三歳児とは思えないほど真剣だった。エリナ譲りの黒曜石のような瞳が、まっすぐにシアンを見上げている。

 

 銀髪の星羅(せいら)も、もう一方の脚にしがみつく。シエル譲りの快活さで、ぎゅっとシアンの脚を抱きしめた。

 

「仲良くしてーっ!」

 

「いや、喧嘩じゃなくてね?」

 

 シアンは渋い顔で説得を試みた。

 

 しかし、相手は三歳児だ。「理想の世界づくり」についての意見の相違など理解させるのは難しい。

 

 彼女たちにとっては、争っているという事実だけが大ごとなのだ。

 

 赤毛の緋奈(ひな)は、ルナ譲りの大きな瞳でシアンを見上げながら、小首をかしげた。

 

「仲良くするのが一番いいんだよ?」

 

 その純真な言葉に、シアンは言葉に詰まった。

 

 世界を滅ぼす力を持つ熾天使(セラフ)が、三歳児の問いかけに戸惑う。その光景は、どこか滑稽でもあり、そこに深い真理が潜んでいるかのようでもあった。

 

 金髪の璃愛(りあ)も、ミーシャ譲りの空色の瞳をきらきらさせながら、こくこくと頷いた。

 

「いい子にしてたらお菓子もらえるよ?」

 

「お、お菓子……ね」

 

「そうよ? お姉ちゃんはいい子?」

 

「……んん――それは……」

 

 シアンは苦笑した。

 

 いい子かどうかと問われれば、答えに窮する。さっきまで、この国を滅ぼそうとしていたのだから――。

 

 宇宙最強の熾天使(セラフ)が、三歳児たちに完全に圧されている。

 

 そんな光景を見ながら、レオンは不思議な感慨を覚えていた。

 

 神族ですら、子供の純真さには敵わないのかもしれない。

 

「ははっ! そうよ、仲良くしなさい」

 

 ヴィーナは嬉しそうに笑う。その笑顔には、母親のような温かみがあった。

 

「子供たちの言うことは正しいわ。少なくともこの星では『喧嘩より仲良く』してちょうだい」

 

 レオンは、この好機を逃すまいと、深々と頭を下げた。

 

「まだ至らぬところはあると思いますが、僕らなりに頑張っているので、温かい目で見守っていただけると……」

 

 もう少しだけ時間が欲しい。もう少しだけ、この国を育てる機会が欲しい。そして何より、この子たちが大きくなるまでは、平和を前提に話を進めたい。

 

 シアンは、しばらく黙っていた。

 

 四人の幼児たちが、期待を込めた目で見上げている。

 

 その純心な八つの瞳に、シアンは何を思っただろうか。

 

「……うーん、分かったわよ」

 

 シアンはそう言うと、ニカッと笑った。

 

 さっきまでの不機嫌さは消え、そこにはどこか照れくさそうな笑顔があった。負けを認めたわけではない。ただ、この子たちの願いを聞いてやりたくなった。それだけだ。

 

「仲良くするわよ? ふふっ」

 

 そう言いながら、シアンは四人の幼児を一気に抱き上げた。

 

「やったぁ!」「なかよし!」「わーい!」「きゃははは!」

 

 四人は大喜びで歓声を上げ、シアンの首に抱きついた。小さな手が、シアンの青い髪を掴み、柔らかな頬が、シアンの肩に押し付けられる。

 

 シアンは幼児たちのぷにぷにのほっぺたに頬ずりをしながら、幸せそうに目を細めた。

 

「あんたたち、いい子ね……」

 

「ふふふ……」「くすぐったいぃ」

 

 その光景は、まるで絵画のようだった。ステージのライトの中で、熾天使と子供たちが抱き合っている。破壊と創造を司る存在が、小さな命に心を溶かされている。

 

 しかし、次の瞬間――。

 

「そうだ! あんたたち、僕の弟子になりなさい!」

 

 シアンはニヤリと笑うと、とんでもない提案をしてきた。

 

「僕にシマエナガをけしかけてきたり、なかなかない芯の強さがある。適正あって面白そう!」

 

「んん?」「でし?」

 

 幼児たちには弟子という言葉の意味が分からない。小首を傾げて、不思議そうにシアンを見上げている。

 

 

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