潜在力SSS級の『訳あり美少女たち』を拾ったら懐かれたので、神スキル【運命鑑定】で大陸最強に育成し、俺を追放した連中に『ざまぁ!』します 作:月城 友麻
「んーとね、天使になりたくない?」
「てんし?」
「なるなるぅ!」
「おもしろそう!」
「キャハァ!」
「え……? ちょ、ちょっと……」
レオンは嫌な予感がして止めようとした。シアンの「面白そう」は、大抵ろくなことにならない。
しかし、遅かった。
「おっけー! そーれっ!」
シアンは何と、四人の幼児を一気に空へと放り投げた。
「あーーーーっっ!」
レオンが絶叫した。
「ひゃぁ!!」
エリナが悲鳴を上げた。
「へ?!」
シエルが目を見開いた。
四人の幼児が、夕暮れの空へと放り投げられていく。三歳児を、まるでボールのように。その光景に、親たちは心臓が止まりそうになった。
しかし――。
「きゃははは!」「ひゃぁ!」「たーのしー!」「まてぇ!」
幼児たちは落ちてくることなく、歓喜に満ちた笑い声を上げる。
そして、その背中には――いつの間にか光る金色の翼が生えていた。
パタパタと、不格好だが一生懸命に羽ばたきながら、四人は楽しそうに空を飛び回っている。夕暮れ空を背景に、金色の翼が輝いている光景は、まるで天使の舞のようだった。
「シアン様! まだ、あの子たちには早いと思うんです!」
レオンは必死にシアンに頼み込んだ。
「早い? じゃぁいつならいいの?」
「えっ?! そ、それは……」
レオンは考え込んだ。
自分の進路を自分で考えられるような歳。それはいつなのだろうか? 十歳? 十五歳? 二十歳? いつがベストだなんてなかなか言い切れない。人生の選択に「適切な年齢」などないのかもしれない。
「
シエルはハラハラしながら、上空を飛び回る娘に手を伸ばした。母親の心配など知らぬげに、
「ままぁ!」
「ああっ!」
シエルは、手を伸ばしたまま固まった。届かない。可愛い我が子は手が届かないところを飛んでいく。
「子供には子供の人生があるのよ?」
シアンは、どこか遠い目をしながら言った。
「親が引いたレールなんて、子供は進まない。それはあなたが良く知ってるんじゃないの? きゃははは!」
「……え?」
シエルは、いきなりの突っ込みに言葉を失った。
そう、自分自身、家出をして冒険者になったのだ。公爵令嬢という立場を捨て、親の敷いたレールから飛び出し、自分の人生をつかみ取った。あの時、母親はどんな気持ちだったのだろうか。今なら、少しだけ分かる気がする。
子供には子供の人生がある。
その当たり前のことをいきなり突き付けられて、シエルはどう答えていいか分からなくなった。
「で、でも三歳はまだ……」
レオンは反論を試みた。
「まぁ、確かに三歳だとちっとまだ早いかな?」
シアンは肩をすくめる。
「次来るまでの間に考えてもらっておいて。ふふっ」
「次……ですか?」
レオンと王妃たちは、いきなりの展開に渋い顔をしながら、夕暮れ空を飛び回る子供たちを見上げていた。
金色の翼を持った四人の幼女が、群青色の空を舞っている。
その姿は美しく、そして切なかった。
いつか、この子たちは本当に飛び立っていくのだろう。親の手の届かない、遠い遠い空へ。
それは喜ばしいことなのか、悲しいことなのか。
レオンには、まだ分からなかった。
◇
エリナがそっとレオンの腕に手を回す――。
「エ、エリナ……どうした?」
いつもの凛とした剣姫の顔ではなかった。どこか幼さすら感じさせる、せつなげな表情で、レオンの瞳をのぞき込んでくる。
「あなた……もう一人……いい?」
その声は、囁くように小さかった。
「え……? 子供はもういいって言ってたじゃないか」
レオンは驚いて聞き返した。
「だって……欲しくなったんだもん……」
エリナは口を尖らせてうつむいた。頬がほんのり赤く染まっている。
だから、もう一人。
まだ手元に置いておける、小さな命が欲しい。
それは、親のエゴかもしれない。しかし、エリナの心は、確かにそう叫んでいた。