潜在力SSS級の『訳あり美少女たち』を拾ったら懐かれたので、神スキル【運命鑑定】で大陸最強に育成し、俺を追放した連中に『ざまぁ!』します 作:月城 友麻
「ちょっと待って! 今晩はあたしの番なんだけど?」
突然、ルナがレオンの腕を引っ張った。緋色の髪が揺れ、吊り目がちの瞳がエリナを睨んでいる。
「いやいやいや、こないだ代わってあげたんだから今晩はボク! いいでしょ?」
シエルがレオンの手を取った。銀髪が月光を受けて輝き、快活な笑顔が――しかし、目は笑っていない。
「何言ってるの? そんな、今晩じゃなくたっていいじゃない!」
ルナが反論した。
「今晩でもいいでしょ!」
シエルは一歩も引かない。
するとミーシャがぬっと横から現れた。
空色の瞳が、妖しく光っている。
「『仲良くできない娘はパス』ってルールがあるわよね?」
聖女の微笑みを浮かべながら、しかしその声には有無を言わせぬ圧がある。
「だから今晩は私なの。うふふふふ……」
そう言ってレオンをグッと自分の方に引っ張った。
「何それズルい!」
ルナが叫んだ。
「ダメよ!」
エリナが抗議した。
「昨晩あなただったじゃない!」
シエルが指摘した。
「あー、聞こえなーい!」
ミーシャは耳を塞ぐふりをしながら、したり顔で宣言した。
「今晩あたり授かりそうな予感がするのよね。女の勘っていうのかしら。ふふっ」
「ダメー!」「そうよ!」「ズルーい!」
ハートに火がついてしまった四人は、レオンを四方から引っ張り合う。
「ちょ、ちょっと待って! 落ち着いて!!」
レオンは悲鳴を上げた。このままでは体が四つに引き裂かれてしまう。
「あらあら、お盛んだこと」
横から見ていたヴィーナが、くすくすと笑った。
「じゃあ、こうしてあげましょう。えいっ!」
そう言って、指をくるっと回した。
ボン!
爆煙が上がり、視界が白く染まった。
「うわっ!」「キャァッ!」「何事!?」「きゃっ!」
四人の王妃たちが、驚いて手を離す。
煙が晴れた時――。
そこには、レオンが四人いた。
「へ?」「へ?」「へ?」「へ?」
白いスーツ姿の同じ格好のレオン四人は、口をポカンと開け、互いを見回した。
自分が四人いる。
同じ顔、同じ体、同じ服。
鏡を見ているようで、しかし鏡ではない。
「明日の朝まで増やしておいたから、仲良くおやり」
ヴィーナは悪戯っぽく笑った。
「「「「こんなのアリですか?」」」」
四人のレオンが、一斉にヴィーナの方を向いて叫んだ。声まで重なっている。
「今晩くらいいいじゃない。明日にはまた一人に戻るから安心なさい」
ヴィーナはグッとサムアップして見せた。神にとっては、人間を増やすことなど造作もないことなのだろう。
「じゃあ、私はこのレオン!」
エリナが一番近くのレオンの腕を取った。
「私はこれ!」
ルナが別のレオンに飛びついた。
「あなたこっち!」
シエルが三人目のレオンの手を引いた。
「うふふっ!」
ミーシャが四人目のレオンを抱きしめた。
四人の王妃が、それぞれのレオンを確保する。その顔には、満足そうな笑みが浮かんでいる。
「あーっ! パパがいっぱい!」
その声に振り返ると、いつの間にか子供たちが降りてきていた。
「わぁ!」「ぱぱぁ!」「やったぁ!」
四人の姫君たちは大喜びで駆け寄り、それぞれのパパにしがみついた。
「パパ抱っこー!」「パパ遊ぼー!」「パパ大好きー!」「パパぁ!」
すると、様子を見ていた他の子どもたちもワラワラとやってくる。
「パパいっぱいだぁ!」「わーい!」「それー!」
レオンたちは互いに目を合わせ、渋い顔をしながら小さく首を振った。
しかし、不思議と嫌ではなかった。
四人の自分が、四人の妻とたくさんの子供たちに囲まれている。
それは、幸せの形の一つなのかもしれない。
「さて、あんたたちはもういいわよ。お家に帰って休みなさい。後は私に任せて。ふふっ」
ヴィーナはニヤリと笑った。その笑みには、悪戯っぽさと、そしてどこか母親のような温かみが同居していた。
「えっ? でも……」
レオンたちは眉を寄せた。
会場にはまだ数十万人の観客が残っている。彼らは今、不安と混乱の中にいるはずだ。
「いいから早くいたわってあげなさい。奥さんたちも、今日は本当に頑張ったんだから。ね?」
その言葉に、レオンたちは顔を見合わせた。
確かに、妻たちは満身創痍だ。シアンと戦い、何度も吹き飛ばされ、それでも立ち上がり続けた。今は気力だけで立っているようなものだ。
「……分かりました。お任せします」
レオンたちは深々と頭を下げ、家族を連れてステージを後にした。
最高神が『任せて』と、言っているのだ。任せる以外ない。
ヴィーナは、その背中を見送りながら微笑んだ。
「さて……盛り上げちゃおうかしら。ふふっ」
そう言うと、パチッと指を鳴らした。