潜在力SSS級の『訳あり美少女たち』を拾ったら懐かれたので、神スキル【運命鑑定】で大陸最強に育成し、俺を追放した連中に『ざまぁ!』します   作:月城 友麻

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27. 別の意味での死闘

「も、もうちょっとぉ……」

 

「もう少し休まないと山を下りられませんわ……」

 

 二人はガシッとレオンの身体にしがみつき、まったく放そうとしない。その瞳には、薄っすらと涙すら浮かんでいた。

 

「いや、ちょっと……。こんなぴったりくっついておく必要ないよね?」

 

 レオンは必死に説得しようとする。

 

 このままだと、自分もフェロモンに負けて何をしでかすのか分からなくなっていたのだ。十八歳の男に、これ以上の理性を求めるのは酷というものだった。

 

「くっついたっていいじゃない! レオンが私を守ってくれたんだから!」

 

「なんでそんな逃げようとするのよ! 私は傷つけちゃったあなたを癒さなきゃいけないの!!」

 

 二人はもう言葉が通じなくなっていた。その瞳には、不安と、拒絶への恐怖と、そして抑えがたい想いが渦巻いている。

 

(これは……本当にまずい)

 

 レオンの額に冷や汗が流れる。だが、こんなに必死に求めてくる少女たちを、無下に突き放すこともできなかった。くっついているだけなら害もないだろう。

 

「分かった、分かった、じゃあ少しだけ外の空気を入れよう」

 

 レオンは根負けし、少し上の方へとポジションを移して広くなったところで、観念したように二人に両手を広げた。

 

「おいで」

 

「ふふっ!」

 

「たっぷり癒しますわ……♡」

 

 飛び込んでくる二人を両腕に抱え、レオンはただ、欲望に負けないようにと顔をしかめた。

 

 柔らかな感触と甘い香りに包まれながら、彼は心の中で叫ぶ。

 

(神様……これは何の試練なのですか?!)

 

 朝日が昇り始めた空の下、奇跡的な勝利の余韻の中で、レオンは別の意味での死闘を繰り広げる羽目になってしまったのだった。

 

 

         ◇

 

 

 何とか無事に山を下りて来たレオンたちは、砦で歓迎を受けた。

 

 奇跡を起こし、街を守った男――――。

 

 本来ならば、それは最大級の賛辞でもって迎えられるべきものだった。実際、兵士たちは感謝の言葉を口にし、握手を求めてくる。だが、その表情には、どこかしら腫れ物に触るようなよそよそしい雰囲気が漂っていた。

 

 英雄か、災厄か。

 

 三万の命を一瞬で灰に変えた光景を目の当たりにした彼らは、まだ答えを出せずにいるのだ。

 

 司令官ガルバンに報告した際も、どこか警戒されている色があった。感謝と畏怖が入り混じった、複雑な眼差し――――。

 

 とはいえ、徹夜での命がけのミッションで一行は限界に達していた。

 

 控室に用意された簡易ベッドに倒れ込むように身を投げ出すと、五人は泥のように眠りに落ちた。安堵と疲労が、ようやく彼らを解放したのだ。

 

 

        ◇

 

 

 昼過ぎに目を覚ましたレオンは、シエルが戦っていた監視塔に登って辺りを見回した。

 

 眼下に広がるのは、昨日とは打って変わって灰色の火山灰に覆い尽くされた集落跡だった。

 

 かつて緑豊かだった谷は、今や死の大地へと変貌している。風が吹くたび、灰が舞い上がり、まるで亡霊たちが踊っているかのようだった。生命の気配は微塵もない。ただ、静寂と喪失だけが支配する世界――――。

 

 レオンは唇をキュッと結んだ。

 

 【運命鑑定】が無ければ、誰もこんなことは起こせなかっただろう。そして、今頃街は阿鼻叫喚の地獄絵図になっていたに違いない。

 

 確かにアルカナはやった。見事な逆転劇だった。

 

 十万の命を救い、伝説の一歩を刻んだのだ。

 

 しかし――――。

 

(これで、本当にいいのだろうか……?)

 

 疑念が、心の奥底でくすぶっている。

 

 今回は魔物だったから自業自得ではあるものの、もし人間が攻めて来た時も、これをやるのだろうか? 

 

 きっと【運命鑑定】は、想像を絶する方法で目的を完遂してしまうに違いない。どれだけ多くの命が失われようとも、最適解(こたえ)を示してしまうのだ。

 

 三万の命を奪った。それは憎き魔物であっても、命は命だ。その重さが、レオンの胸にずしりと圧し掛かっていた。

 

『大いなる力には、大いなる責任を伴う』

 

 いつか聞いたそんな言葉が、頭の中で何度も渦巻いた。

 

 風が、レオンの茶色の髪を撫でる。その翠色の瞳には、勝利の喜びではなく、深い憂いが宿っていた。

 

「レオン?」

 

 気が付くとシエルが、音もなく監視塔を登ってきていた。銀髪が風に揺れ、陽の光を受けてキラキラと輝いている。

 

「あ、も、もう起きたんだ」

 

 レオンは慌てて表情を取り繕う。心配をかけたくなかった。

 

「うん、ちょっと興奮してるみたい……」

 

 シエルはさらしを巻いた男装の胸に手を当てて、恥ずかしそうにうつむいた。頬がほんのりと紅潮している。初めて自分の力を認められた喜びと、昨晩から急速に自分の心を占め始めたレオンへの想いが入り混じって、彼女の心は落ち着かないのだ。鼓動が早い。胸が熱い。この感情が何なのか、彼女自身もまだ理解しきれていなかった。

 

 

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