潜在力SSS級の『訳あり美少女たち』を拾ったら懐かれたので、神スキル【運命鑑定】で大陸最強に育成し、俺を追放した連中に『ざまぁ!』します   作:月城 友麻

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30. 騒がしき英雄譚

「あんた何してんのよ!」「それは無いわ!」「ルナ! 悪いけど降りてくれる?」

 

 三人の叫び声が、同時に響きわたる。

 

「だって、空いてないんだモーン!」

 

 ルナはレオンに背中をあずけていく――――。

 

 ふわっと香る華やかな女の子の香りに、レオンの頭の中が真っ白になった。これは、夢なのだろうか? いや、この感触は紛れもなく現実で――――。

 

「ダメ!」「アウト!」

 

 ミーシャとシエルは力を込めてルナを引きはがそうとする。だが、ルナは必死にレオンにしがみついて離れようとしない。

 

「やーだっ!」

 

「離れなさいよ!」「このぉぉぉ!」

 

「止めてぇぇ!」

 

 二人の怒りのこもった腕力に引き剥がされそうになったルナは、杖の先をガン!と床に叩きつけると、一気に体に赤い魔力を纏わせた。

 

 ゴォッ! と炎の気配が膨れ上がる。

 

「うわぁ! 何すんだよ!」

 

 熱をモロに浴びてレオンは焦った。このままではシャレにならない。

 

「バカ! 何考えてんのよっ!?」

 

 今度はミーシャがロッドをガン!と叩きつけ、黄金色の光を放った。

 

 ミーシャの聖なる魔力が、ルナの炎の魔力と激突する。

 

「うわぁ!」「ひぃぃぃ!」

 

 二つの魔力がぶつかり合い、馬車の中が眩い光に包まれる。赤と金が入り混じり、まるで天界で神々が戦っているかのような光景だった。

 

「ちょっと! あんたたち何やってんの!」

 

 光り輝く馬車に驚いてエリナが中をのぞき、怒鳴った。その黒曜石のような瞳には、呆れを通り越して凄まじい怒りが宿っている。

 

「ルナが!」「ミーシャが!」「ちょっと降りて!」「もぉぉぉ!」

 

 阿鼻叫喚だった。

 

 少女たちの叫び声が馬車の中で反響し、外にまで響き渡る。見送りに来ていた兵士たちが、唖然とした表情で乱痴気騒ぎを見つめていた。

 

 しばらく痴話げんかのような醜い言葉の応酬が続き、結局レオンは床に追いやられた。

 

 渋い顔でクッションを置いて座るレオン――。

 

 席には二人ずつ座ることで落ち着いた。

 

「ふん!」「もぉ!」「へんだ!」

 

 三人の少女たちは不満そうにそっぽを向いた。その表情は、まるで拗ねた子猫たちのように見える。

 

 こんなことで揉めていなければ可愛い少女たちなのだが。

 

 馬車はそんな一行を乗せて動き出す――――。

 

 はぁ……。

 

 レオンは床の振動をモロに受けながらため息をついた。

 

 馬車の席一つでなぜここまでもめるのか? ほとほと疲れ果ててしまう。

 

 だが、これだけ揉めれば好感度はずいぶんと下がったに違いない。そのうち落ち着くだろう。

 

 

 ピロン! 

 

 その時、脳裏に驚くべきメッセージが浮かんだ。

 

【スキルメッセージ】

【好感度状況】

 ミーシャ:120→150【激ラブ】※危険水準

 ルナ:115→150【激ラブ】※危険水準

 シエル:120→150【激ラブ】※危険水準

 エリナ:85→70【軽蔑】

 

 

「……は?」

 

 レオンは思わず目を疑った。

 

 あれだけ揉めてなぜ危険水準にまで好感度が上がっているのだろうか?

 

 女の子は一体何を考えているのだろう?

 

 唯一エリナだけが冷静な反応を示しているが――――。

 

 レオンは限りなく重いため息をついて顔を覆った。

 

 三万の魔物を倒すよりも、この少女たちを御する方がよほど難しいかもしれない――そんな絶望的な予感が、彼の胸をよぎった。

 

 馬車は、英雄たちを乗せて、街へと向かっていく。

 

 だが、その車内は英雄譚とは程遠い、微笑(ほほえ)ましくも騒がしい空間だった。

 

 

       ◇

 

 

「もうすぐ到着ですよー」

 

 御者が眠りこけている五人に声をかけた。

 

「ん?」「へ?」「もう?」

 

 馬車は一面の小麦畑を抜ける一本道を、クーベルノーツへ向けてパッカパッカと順調に進んでいる。

 

 麦畑を抜ける風が黄金の穂を揺らし、まるで大地が呼吸しているかのような壮大な波を描いていた。陽の光を受けて、小麦の海が眩しく輝いている。

 

 窓から顔を出すと、前方に堅牢な城壁が見える。

 

「はぁ、無事に帰って来れたんだなぁ……」

 

 レオンが深い安堵の息を漏らす。

 

「行くときは泣いてたケドね。ふふっ」

 

 エリナが少し意地悪な調子で笑った。だが、その声には温かさが滲んでいる。

 

「それは言わないでよ……」

 

 レオンは苦笑いを浮かべながら肩を落とした。だが、あれだけの想いを込めたからこそ、奇跡を起こせたのかもしれない。

 

 レオンは少し瞳を潤ませながら、徐々に大きくなっていく城門を眺めた。

 

 その時だった――。

 

 ポン! ポンポン!

 

 城門の上で赤青緑の鮮やかな魔法が炸裂し、まるで打ち上げ花火のような盛大な光の軌跡を描いた。光の粒子が、朝の空にキラキラと舞い散る。

 

「え?」「なに?」「どうしたの?」

 

 見れば城門のあたりに、数百、いや千を超える人々が集まっている。

 

 みんな手を振り、拍手をして、馬車を熱狂的に歓迎しているではないか。

 

「ははっ、こりゃぁ凱旋パレードですなぁ! すごい!」

 

 御者は楽しそうに笑った。その顔にも、誇らしさが浮かんでいる。

 

「が、凱旋パレード!?」

 

 五人はその盛大な歓迎に圧倒された。

 

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