潜在力SSS級の『訳あり美少女たち』を拾ったら懐かれたので、神スキル【運命鑑定】で大陸最強に育成し、俺を追放した連中に『ざまぁ!』します 作:月城 友麻
「へ?」
「え?」
「はぁっ!?」
シエルはパンをポロッと落とし、ミーシャはガン!と立ち上がった。
「あんた! 何やってんのよ!」
ミーシャの声が、部屋に響き渡る。
「え? シチュー舐めとってあげただけよ? 昔は、弟のほっぺもこうやって舐めてたのよ?」
ルナは酔っぱらって、自分が何をしたのか理解していないようだった。
「ガキとレオンは違うでしょーが!!」
ミーシャは目を三角にして怒る。その表情は、聖女のそれではなく、嫉妬に狂った乙女のそれだった。
「まぁまぁ、ちょっと落ち着いて……ね?」
レオンは場を収めようとしたが――――。
「そんなことするなら私だって!」
シエルはレオンにバッと抱き着くと、目をぎゅっとつぶってレオンのほほにチュッとキスした。
その柔らかな唇の感触が、レオンの頬に残る。
「はぁぁぁぁ!?」
怒髪天を衝くミーシャ。
「ふっざけんじゃないわよぉぉぉ!」
ミーシャはパンを思いっきりシエルに投げつけた。
硬いパンがカン!とシエルの銀髪で跳ね返る。
「いったーい! 何すんのよぉ!」
シエルはガタッと立ち上がり、ものすごい剣幕でにらんだ。その碧眼には、明確な敵意が宿っていた。
「ストップ! ストーーーーップ!!」
レオンは慌てて立ち上がり、両手を振って二人を制止する。
「ここはレストラン。こんな大騒ぎしたら迷惑だよ? 落ち着いて……ね?」
レオンの声は、必死だった。
「じゃあ、レオンはここに座って!」
ミーシャは自分の隣の席を指す。
「え?」
「二人だけズルい! 私だってディープに決めてやるんだから!」
もう滅茶苦茶である。
「いや、キスってのは合意じゃなきゃセクハラなんだけど?」
「何よ! こいつらのキスはセクハラじゃないわけ? 何? 合意したの?」
ミーシャの怒りは止まらない。その瞳には、涙すら浮かんでいた。
レオンは深くため息をつくとルナとシエルに怒る。
「キスはダメ! 今度やったらペナルティだぞ!」
「わ、分かったわよ……」「はーい……」
レオンの気迫に二人は小さくなってうつむいた。
「ふんっ!」
ミーシャは険しい目で鼻を鳴らす。
静寂が部屋に広がった――。
いたたまれなくなったレオンは、深くため息をついて席を立った。
「トイレ行ってくる……」
よろよろと個室を出ていくレオンの背中には、疲労と諦めが滲んでいた。
三万の魔物よりも、この少女たちの方がよほど手強い――そんな思いが、彼の心を支配していた。
◇
トイレから出てくると、エリナが腕を組み、ムッとした表情でにらんでいた。
その黒曜石のような瞳には、明確な不満と、そして――どこか傷ついたような色が浮かんでいた。
「ちょっと、あれ、何なの?」
エリナの声は、低く抑えられていたが、その奥には激しい感情が渦巻いていた。
「え? 彼女たちのこと? そんなの僕に聞かれても……」
レオンは困惑した表情を浮かべる。
「あんた、あの子たちに何したの? 彼女たち男嫌いだったのよ?」
エリナの声には、疑念と――そして少しの嫉妬が混じっていた。彼女たちはレオンに出会うまでは男に心を閉ざしていたのだ。それが今では、あんなにもレオンに懐いている。
「僕に何ができるって言うんだよ。僕だって困ってんだからさ」
レオンは本心から言った。好感度が限界突破している状況を、彼自身がコントロールできているわけではないのだ。
「【魅了】とか変なスキルで彼女たちの心をいじったんでしょ!」
エリナは鋭く目を光らせた。
「そんなスキルあったら苦労してないって……」
レオンは疲れたように肩を落とす。
「どうだか!? ふんっ!」
エリナはそっぽを向く。
「そんな怒ってないでさ、エリナからも何か言ってやってよ」
レオンは懇願するように言った。
「何て言うのよ? 『この男はクズだから気を付けろ』って?」
「ク、クズぅ? それは言いすぎなんじゃないの?」
レオンは思わず声が裏返った。
「クズじゃない! 二人からキスされて鼻の下伸ばして……最低!!」
エリナの声が震えていた。それは怒りだけではなく、何か別の感情――自分でもまだ理解しきれていない、複雑な想いが込められていた。
レオンは深くため息をついた。
せっかく女の子たちの覚醒に成功したのに、こんな色恋沙汰で崩壊の危機とか、とても笑えない。
「分かった、分かった。僕からビシッと言ってみるよ」
レオンはジト目でにらんでくるエリナに気おされながら言った。
「……ふん! ちゃんと収拾してよね?」
プイッとそっぽを向き、鼻を鳴らすエリナ。
「わかったよ……」
レオンは大きく息をつくと個室へと戻っていった――――。