潜在力SSS級の『訳あり美少女たち』を拾ったら懐かれたので、神スキル【運命鑑定】で大陸最強に育成し、俺を追放した連中に『ざまぁ!』します   作:月城 友麻

34 / 185
34. 胸に灯る小さな炎

 そんなレオンの後姿を眺めながら廊下に一人残されたエリナは、自分の頬に手を当てた。

 

(私、何をこんなに怒ってるんだろう……)

 

 自分でも理解できない感情が、胸の中で渦巻いていた。

 

 ルナやシエルがレオンにキスしているのを見て――何故か、胸が締め付けられるように痛かったのだ。

 

(まさか、私も……?)

 

 エリナは首を振って、その考えを追い払おうとする。

 

(私は絶対ほだされたりなんかしないわ! 男なんてクズばっかりなんだから!)

 

 ぎゅっと両手を握り締めた。

 

(ダメ! 私がみんなを守らなきゃ!)

 

 だが、胸の奥に灯った小さな炎はそう簡単には消えそうになかった――――。

 

 

       ◇

 

 

 レオンが個室に戻ると、三人が顔を合わさないようにそっぽを向きながら、黙々と食事をしていた。

 

 空気が――重い。

 

 テーブルの上には湯気の立つシチュー、香ばしく焼かれた肉が並んでいるのに、誰も楽しそうではなかった。ナイフとフォークが皿に当たる音だけが、やけに大きく響く。

 

「あー、ちょっと聞いてほしいんだけど……」

 

 レオンが口を開くと、三人はジト目でレオンを見上げる。その視線は、まるで尋問官のようだった。

 

「みんなの好意はとてもうれしい。ほんとだよ?」

 

 レオンは両手を上げて、誠実さを示そうとする。

 

 三人は続く言葉に不穏な予感を感じながら、無表情にレオンをにらみ続けている。その瞳には、明確な警戒心が宿っていた。

 

「でも、僕はこないだ振られたばっかりなんだよ? すぐに他の娘とどうこうということは考えられないんだ」

 

 レオンの言葉には、本心からの戸惑いが滲んでいた。セリナに裏切られた傷は、まだ生々しく胸に残っている。あの屈辱と絶望の記憶が、まだ消えていないのだ。

 

 三人はプイッとそっぽを向く。その仕草が、可愛らしくもあり、ままならなさも感じさせた。

 

「ボクが今、目指しているのは、みんながそれぞれ自分の才能を存分に花開かせて、アルカナが世界中に認められることなんだ」

 

 レオンの声は、真剣だった。その翠色の瞳には、揺るぎない決意が宿っている。

 

 エリナも個室のドアのところで、静かに聞いている。その黒曜石のような瞳が、鋭くレオンを見つめていた。

 

「それまでは僕は誰とも付き合わない」

 

 レオンの宣言に、少女たちの表情が揺れる。

 

「じゃぁ、世界に認められたら付き合うの?」

 

 ルナが鋭く突っ込んでくる。その緋色の瞳にはかすかな希望の光が見えた。

 

「うん、アルカナの育成が一段落ついたら、その時は恋人……欲しいかな」

 

 レオンの言葉に、少女たちの表情が一斉に明るくなる。

 

「誰にするのよ?」

 

 ミーシャがムッとした顔で聞いてくる。その空色の瞳には、明確な競争心が燃えていた。

 

「それはまだ決めてないよ」

 

「『決めてない』ってことは……三人のうち誰かって……こと?」

 

 シエルが恐る恐る聞く。その碧眼が期待に揺れる。

 

「ちょっと待って! なんで三人なのよ!?」

 

 エリナが慌てて口をはさむ。その顔は、真っ赤になっていた。

 

「あら? エリナも参戦するのかしら?」

 

 ミーシャが意味ありげな笑みを浮かべる。

 

「さ、参戦なんかしないわよ! で、でも……未来のことなんて分からないじゃない!」

 

 エリナは上目遣いでレオンの方をチラッと見る。

 

 その仕草が、妙に色っぽかった。普段の凛とした剣士の面影はどこへやら、今のエリナは恋する乙女そのものだった。

 

「何を調子いいこと言ってんのかしら?」

 

「ぶーーっ!」

 

 ルナとシエルが同時に不満の声を上げる。その表情には、明らかな嫉妬が浮かんでいた。

 

「まぁまぁ。でも、エリナがそうやって距離を保ってくれているというのは、僕にはありがたいんだけどね」

 

 レオンの言葉に、エリナがハッとする。

 

「へ? な、何がよ?」

 

 エリナが少しのけぞった。その黒髪が、ゆらりと揺れた。

 

「だって、全員が僕に惚れちゃってたら、もはやハーレムじゃないか。そんなの不健全だよ。誰かがビシッと言ってくれないと困っちゃうもん」

 

 レオンの言葉に、エリナの目が輝く。

 

「そ、そうよ! 最年長の私が(ただ)れた関係に発展しないように目を光らせるんだわ! うん!」

 

 エリナは力強く宣言する。その表情には、使命感すら浮かんでいた。

 

 少女三人はお互い顔を見合わせながら、無言で肩をすくめた。その表情には、明らかな呆れが浮かんでいる。

 

「ありがとう。さすがエリナ。オーガジェネラル相手に臆せず立ち向かった、まさに剣聖の卵だよね。期待してるよ? ふふっ」

 

 レオンの褒め言葉に、エリナの頬がぱっと赤く染まる。

 

「えっ? いや、ちょっと、やだなぁ、もぅ……うふふ」

 

 エリナは恥ずかしそうにパンパン!とレオンの背中を叩いた。その頬は、紅潮している。喜びと照れが入り混じって、彼女の心は高鳴っていた。

 

「痛い、痛いって……もぅ……」

 

 レオンは苦笑しながら、エリナの手を制する。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。