潜在力SSS級の『訳あり美少女たち』を拾ったら懐かれたので、神スキル【運命鑑定】で大陸最強に育成し、俺を追放した連中に『ざまぁ!』します   作:月城 友麻

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42. 禁忌の呪具

 全てが――終わった。

 

 長い因縁が、ここに決着を迎えたのだった。

 

 だが――。

 

「馬鹿め! アルカナが勝手に襲ってきたことにしてやる! 俺のパトロンの貴族様が警備隊を派遣するからな! お前らこそ捕まるんだぞ!」

 

 カインが喚く。血まみれの顔で必死に叫んでいた。

 

 その声は、もはや英雄のものではない。あらゆる汚い手を使って陥れようとする姿は、あまりにも惨めで――かつて太陽のように輝いていた男の面影など、微塵も残っていなかった。

 

「それは通らんよ、カイン君」

 

 その時――暗闇から、重厚な声が響いた。

 

 ギルドマスターが、物陰から姿を現す。その表情には、深い失望と、そして静かな怒りが浮かんでいた。灰色の髭を蓄えた老練な冒険者は、まるで裁判官のように厳かにカインを見下ろしていた。

 

「ギ、ギルドマスター……! い、いつから……!?」

 

 カインの顔から血の気が引いた。

 

「事前にレオン君から話を聞いていてね。物陰から様子をうかがっていたんだ」

 

 ギルドマスターは静かに告げる。

 

「全て見ていたよ――キミの醜態を、全てね……」

 

 その声は、氷のように冷たかった。

 

 長年ギルドを支えてきた老冒険者の瞳には、かつてカインに向けていた期待も、信頼も、何もかもが消え失せていた。ただ、深い失望だけが残る。

 

「キミの横暴には、ある程度目をつぶってきた。若さゆえの傲慢さだと思っていたからね」

 

 ギルドマスターは、重々しく言葉を紡ぐ。

 

「だが、もうかばいきれん。いや――かばう価値すらない」

 

 そう言って、彼はカインの罪状を一つ一つ指折り数えた。

 

「レオンたちへの襲撃依頼――暗殺組織『狂月の鴉』への依頼は、すでに確認している。龍の宝玉の不法所持と使用――これだけで冒険者資格の永久剥奪に値する。違法な爆裂魔法の結晶の使用――闇市場との繋がりも調査対象だ。そして……」

 

 ギルドマスターの視線が、セリナに向く。

 

「禁忌の呪具――これは教会法で所持するだけで死罪に値する代物だ」

 

 その言葉に、セリナの体が震えた。老婆のように衰えた顔が、恐怖に歪む。

 

「これらは全て重罪だ。終身刑か、最悪は……死刑になるだろう」

 

 宣告は、静かに、しかし確実に下された。

 

 ギルドマスターが合図すると、物陰から待機していたギルド職員たちが現れ、カインとセリナに駆け寄った。

 

「神妙にしろ!」「確保、確保ぉぉ!」

 

「離せ! 離せぇぇぇっ! 俺は悪くない! 悪いのはレオンだ! レオンが全部悪いんだ!」

 

 カインの叫び声が、夜の闇に響く。

 

 だが、その声はもう誰の心にも届かない。

 

「クズのレオンが俺から全てを奪ったんだ! 俺ははめられたんだぁぁぁ! 全部、全部レオンが……!」

 

 彼は最後まで自分の罪を認めなかった。全てを他人のせいにして、自分だけが被害者だと叫び続ける。

 

 だが――それこそが、彼の本質だった。

 

 自分の過ちを認められず、他者を踏みにじることでしか自尊心を保てなかった、哀れな男。

 

「やめて……お願い……私は、私はただ……」

 

 セリナもまた、涙を流しながら無罪を主張をしていた。だが、その涙に同情する者は誰もいなかった。彼女が流してきた嘘の涙を、皆が知っていたから。

 

 ギルド職員たちが、二人を縄で縛り上げていく。

 

 かつて街の英雄と讃えられた男とその女は、今や犯罪者として引き立てられていった。

 

「俺は悪くない……悪くないんだ……全部、レオンが……」

 

 カインは狂ったように繰り返すばかり。

 

 こうして、カインとセリナは完全なる破滅を迎えた。

 

 嫉妬に狂い、憎悪に溺れ、最後には自らの手で全てを壊した二人。彼らの末路は、あまりにも惨めで、あまりにも自業自得だった。

 

 アルカナという新たな英雄が誕生し、太陽の剣という偽りの英雄は堕ちた。

 

 だが――。

 

 勝利の余韻に浸る間もなく、エリナの悲鳴が響いた。

 

「レオン! レオン、しっかりして!」

 

 彼女の腕の中で、レオンは苦しそうに息をしていた。全身から力が抜け、立つこともままならない。

 

「ぐっ……あぁ……」

 

 レオンの額から、冷や汗が流れ落ちる。

 

 禁忌の呪詛を、その身に受けてしまったのだ。セリナの最後の悪あがきが、確かにレオンを蝕んでいた。

 

「あぁ! レオン、大丈夫……? ミーシャ、早く治療を!」

 

「やってるわよ! でも、これは……」

 

 ミーシャが治癒魔法をかけるが、レオンの容態は改善しない。それどころか――。

 

「スキルが……消えていく……」

 

 レオンが、苦しそうにつぶやく。自分の中でスキルと繋がっている心の回路がどんどん薄らいでいくのを感じていた。

 

 その言葉に、全員が凍りつく。

 

 スキルが、消える――?

 

 そう、セリナが起動した呪具は『スキル破壊の呪具』。対象者のスキルそのものを破壊する恐るべきものだった。一度壊されてしまえば、どんな強力な治癒魔法でも元に戻すことはできない。

 

 レオンの最強の武器――【運命鑑定】が、失われようとしていた。

 

 月のない闇夜。星すら見えない。

 

 勝利の代償は、あまりにも大きかった。

 

 仲間を守るために飛び込んだレオンは、その優しさゆえに――未来を視る力を失ってしまったのだった。

 

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