潜在力SSS級の『訳あり美少女たち』を拾ったら懐かれたので、神スキル【運命鑑定】で大陸最強に育成し、俺を追放した連中に『ざまぁ!』します 作:月城 友麻
(みんな……ずるい……)
レオンに一番近いのは、自分のはずだった。
パーティで一番年上で、女の子たちをまとめる立場にある自分。
初めて出会った時、レオンの提案を最初に受け入れようとしたのは自分。
なのに――。
今、レオンの温もりを独占しているのは、他の三人だった。
エリナの拳が、ギュッと握られる。
けれど――次の瞬間、彼女は小さく首を振った。
(……違う。こんなこと、考えちゃ駄目……)
みんな、仲間だ。
レオンを想う気持ちは、きっと同じ。
自分だけが特別だなんて、そんなこと――。
でも。
でも――。
胸の奥の炎は、消えてくれない。
エリナは、音を立てないように、そっとソファの後ろに回り込んだ。
そして――。
眠るレオンの肩に、手を伸ばす。
壊れ物を扱うかのように、そっと。
けれど、確かに。
強く――。
抱きしめた。
レオンの体温が伝わってくる。
彼の首筋に、顔を埋める。
甘いレオンの匂い――――。
エリナは、それを確かめるように、深く、深く息を吸い込んだ。
(……レオンは、私のものよ)
心の中で、囁く。
(誰にも……渡さない……)
黒曜石の瞳が、炎の光を受けて妖しく輝く。
エリナは、そっとレオンの頬に顔を近づけた。
吐息がかかるほどの、近い距離。
唇が、彼の頬に触れそうなほど――。
(あの日……絶望の底にいた私を見つけて、光をくれた時から……)
五年前の、あの悲劇。
殺された家族。焼かれた村。一人生き残った自分。
復讐だけを胸に、孤独に生きてきた。
誰も信じない。誰にも心を開かない。ただ、強くなることだけを考えて――。
そんな自分に、初めて温かな手を差し伸べてくれたのが、レオンだった。
黒曜石の瞳がレオンの唇を見つめる。
この瞬間だけは、レオンは自分だけのものなんだから――。
(ずっと……キミは、私の……)
すっと唇を近づけていく――――。
パチッ!
残り少なくなった薪が、大きくはぜた。
火花が舞い上がり、炎が揺れる。
エリナは、ハッと我に返った。
(……駄目、私、何してるの……)
慌てて体を離す。
頬が、熱い。心臓が、早鐘を打っている。
このままでは――このままでは、本当にキスをしてしまう。
エリナは深呼吸をして、気持ちを落ち着ける。
そして――大きな声で叫んだ。
「はい! みんなこんなところで何やってるのよ!? 風邪を引くわよ!」
パシパシと、三人の肩を順番に叩いて起こしていく。
その手つきは少し乱暴で――自分の気持ちを誤魔化すかのようだった。
「んぅ……?」
ルナが、眠そうに目をこする。
「あと五分……」
シエルが、寝ぼけた声で呟く。
「むにゃむにゃ……レオン……」
ミーシャが、何やら寝言を言っている。
そして――。
レオンも目を覚ました。
ゆっくりと瞼を開け、周囲を見回す。
「あぁ、エリナ……ありがとう」
その表情には――もう、迷いや苦悩の色はなかった。
これまで見せたことのないような、全てが吹っ切れた穏やかな笑顔。
まるで、長い夜を越えて、ようやく朝日を見つけた旅人のような――そんな、清々しい表情だった。
「……みんな、ありがとう」
レオンは、ゆっくりと立ち上がる。
そして――少女たちの前に立った。
一人一人と、真摯に向き合う。
「ルナ」
名前を呼ばれて、ルナがビクッと体を震わせる。
「いつも元気をくれて、ありがとう」
そう言って、レオンはルナを――優しく、しかし力強く抱きしめた。
「え? あ、う、うん……」
予想外の行動に、ルナの顔が真っ赤になる。
レオンの腕の中で、小さな体が硬直している。心臓の音が、レオンにも聞こえるほど激しく打っている。
頭の中が真っ白になり、何も考えられなくなる。
ただ、レオンの温もりと、彼の優しい声だけが、心に染み渡っていく。
「シエル」
次に、レオンはシエルの前に立つ。
「俺を信じてくれて、ありがとう」
そして――シエルを、抱きしめた。
「レ、レオン……」
シエルの碧眼が、涙で潤む。
彼女は、レオンの背中に手を回し――ギュッと、強く抱きしめ返した。
幸せの涙が、一筋、頬を伝って落ちる。
「ミーシャ」
レオンは、次にミーシャの前に立つ。
「素敵なアドバイスを、ありがとう」
そして――ミーシャを、抱きしめた。
「あらあら……うふふ……」
ミーシャは照れくさそうに微笑む。
けれど、その空色の瞳には――涙が浮かんでいた。
(……ずるい、ですわ……こんなの……)
聖女の仮面が、崩れそうになる。
本当の自分を、さらけ出してしまいそうになる。