潜在力SSS級の『訳あり美少女たち』を拾ったら懐かれたので、神スキル【運命鑑定】で大陸最強に育成し、俺を追放した連中に『ざまぁ!』します   作:月城 友麻

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58. 緊急依頼

 時は少しさかのぼり、少女たちの朝――。

 

 屋敷を出た四人は、誰も口を開かなかった。

 

 いつもなら、ルナが何か文句を言い、ミーシャがからかい、シエルが慌てて仲裁に入り、エリナが呆れたように溜息をつく――そんな賑やかな朝のはずなのに。

 

 今日は、違った。

 

 四人とも――レオンのことを、考えていた。

 

(大丈夫かな……一人で……)

 

 シエルが、ちらりと後ろを振り返る。

 

 もう、屋敷は見えない。

 

 けれど――あそこに、レオンがいる。

 

(……私たちが、しっかりしなきゃ)

 

 シエルは、弓を握る手に力を込めた。

 

       ◇

 

 ギルドの重い扉を開けると喧騒が一行を迎えた。

 

 酒と汗の匂い、武具のぶつかる音、冒険者たちの野太い笑い声。

 

 いつもの光景のはずが、今日はやけに棘を含んでいるように感じられた。

 

 その理由は――すぐに分かった。

 

 カウンターへ向かう彼女たちに、周囲のテーブルから値踏みするような視線と、わざとらしい囁き声が投げかけられる。

 

「おい、見ろよ。『アルカナ』だ。けど、今日はあの軍師様はいないのか?」

 

「へっ、軍師がいなくて大丈夫なのかよ。所詮は男に守られてるだけのお姫様パーティだろ」

 

「違ぇねぇ、ガハハハ!」

 

 下品な笑い声が、ギルドの空気を濁す。

 

 その言葉は――レオンの苦悩を知る彼女たちの心に、鋭い刃となって突き刺さった。

 

 エリナの手が、無意識に剣の柄を握る。

 

 ギリ、と奥歯が音を立てた。

 

(こいつら……レオンがどれだけ苦しんでいるか、知りもしないで……!)

 

 怒りが、胸の奥でふつふつと煮えたぎる。

 

「なっ……! 失礼ね! レオンがいなくたって、あたしたちは大陸最強になるんだから!」

 

 カッと顔を赤らめ、ルナが食ってかかろうとする。

 

 その肩を、ミーシャが優しく、しかし有無を言わせぬ力で制した。

 

「まあまあ、ルナさん。獣の遠吠えに耳を貸す必要はございませんわ」

 

 その聖女の鋭い視線は絶対零度で、野次を飛ばした冒険者たちは思わず背筋を凍らせた。

 

 けれど――ミーシャの心の内は、怒りが煮えたぎっていた。

 

(レオンの戦いを何も知らないくせに……)

 

 だが、それを表に出すことはない。

 

 こんなところで揉めることをレオンは望んでいないとわかるからだ。

 

 

       ◇

 

 

 依頼ボードのところへ来た一行――。

 

 そこには、無数の羊皮紙が貼られている。

 

 魔物討伐、護衛任務、素材採取――。

 

 一行は【上級依頼】のボードの前に建つ。

 

 そこにはどれも、以前の自分たちなら躊躇していたような危険な依頼ばかり。

 

 けれど、今の彼女たちは違う。

 

 スタンピードを乗り越え、カインとの戦いを経て――彼女たちは、確かに強くなっていた。

 

 ルナが「ワイバーン討伐」の依頼書をパンと叩く。

 

「これよ! これくらい派手なのをやれば、あいつらも黙るでしょ!」

 

「却下よ……」

 

 即座に制したのはシエルだった。

 

「今の私たちでは時間がかかりすぎる。それに――」

 

 シエルは、ちらりと仲間たちを見た。

 

「レオンを待たせるわけにはいかない」

 

 その言葉に、ルナは一瞬むっとした表情を見せたが――すぐに、納得したように頷いた。

 

「……そうね。早く帰らないと、あいつ心配するものね」

 

 その素直さに、エリナは少し驚いた。

 

 以前のルナなら、もっと食い下がっていただろう。

 

 けれど――今は違う。

 

 全員が、同じ方向を向いている。

 

 最終的に、エリナが指を置いたのは、一枚の古びた羊皮紙だった。

 

【緊急依頼:腐敗した森のゴブリンロード討伐】

 

 その依頼書を見つめながら、エリナは静かに告げた。

 

「最近、森のゴブリンが妙に凶暴化・組織化しているとの報告がある――。早めに討伐した方がよさそうだわ」

 

 一呼吸置いて――。

 

「これならすぐに終わらせられる……かな?」

 

 エリナは仲間たちの顔を見回した。

 

 ルナの闘志に燃える瞳。

 

 シエルの決意に満ちた瞳。

 

 ミーシャの冷静な瞳。

 

 その全てに――同じ想いが、宿っていた。

 

「オッケー!」「行こう!」「ちゃちゃっと倒してレオンのところへ早く帰りましょう!」

 

 うなずきあう少女たち。

 

 カウンターに依頼書を出すと、受付嬢が心配そうに尋ねてきた。

 

「あの……レオン様は、ご一緒じゃないんですか?」

 

「ええ」

 

 ミーシャが、完璧な聖女の微笑みで答えた。

 

「彼には、もっと重要な任務がございますので」

 

「そ、そうですか……お気をつけて」

 

 受付嬢は、まだ心配そうだったが――。

 

 四人の凛とした表情を見て、それ以上は何も言わなかった。

 

 ギルドを出る時――。

 

 また、誰かの嘲笑が聞こえた。

 

 けれど。

 

 四人は、前を向いたままだった。

 

 言葉で返す必要はない。

 

 結果で――示せばいい。

 

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