潜在力SSS級の『訳あり美少女たち』を拾ったら懐かれたので、神スキル【運命鑑定】で大陸最強に育成し、俺を追放した連中に『ざまぁ!』します   作:月城 友麻

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84. 陰謀の核心

 その表情は深い絶望に彩られている。唇を噛みしめ、拳を握りしめ、それでも現実を受け入れなければならない者の苦悩が、深い皺となってその顔に刻まれている。

 

「……無駄だ、レオン君」

 

 ギルドマスターの声が、重く、暗く響く。

 

「いや、無駄どころか、むしろ危険ですらある」

 

「ど、どういう……ことですか?」

 

 エリナが一歩前に出た。その声には、不安と、何か嫌な予感が混じっている。

 

 ギルドマスターは深く、まるで全ての重荷を吐き出すかのように息を吐いた――――。

 

 そして重い口を開き、語り始める。それは寄生体の危険性に気づいた後、彼が独自に、そして秘密裏に進めていた調査の結果だった。

 

「魔塔に調査を依頼すると同時に、私は密かに別の調査も続けていた。この寄生体がどこから来たのか、誰が作ったのか、そして……王都の中に、どれだけ敵が潜んでいるのかを」

 

 ギルドマスターの目が、暗く沈んでいく。その瞳には、見てしまった真実の重さが宿っている。

 

「そして分かったことは……絶望的だった」

 

 部屋の空気が、さらに重くなる。誰も息を呑み、次の言葉を待っている。

 

「この数ヶ月で、警備隊の上層部、魔塔の幹部、果ては王宮の文官に至るまで、不自然な人事交代や財産形成が相次いでいる。そして不気味なことに、その全員が、ある時期を境に人格が変わったかのような振る舞いを見せているのだ」

 

 ギルドマスターはテーブルに両手をつき、その重みに耐えるかのようにうつむいた。

 

「やはり……!」

 

 ギルバートの拳が、テーブルを激しく叩いた。ドンッという音が響き、テーブルの上の道具がガタガタと震える。

 

「我が公爵様のように、既に多くの権力者が奴らの『傀儡』と化しているんですね?!」

 

 ギルドマスターは目を静かに閉じ、深く、重く頷いた。

 

「そんな……」「くっ……!」「どうしたら……」

 

 動揺の声が、あちこちから上がる。それはつまり、彼らが信じていた「正義」や「秩序」が、既に内側から腐り落ちていたという事実だった。王国という巨大な組織が見えない寄生虫に蝕まれ、もはや健全な部分がどこにあるのか、誰が味方で誰が敵なのか、まったく分からない状態。

 

「やはり……そうだったのか……」

 

 レオンが震える声で呟いた。その手は小刻みに震え、顔からは血の気が引いている。

 

「じゃあ、あたしたちは……誰を信じればいいの? 誰に助けを求めればいいの?」

 

 ルナが、今にも泣き出しそうな声で尋ねた。

 

「報告すれば、十中八九もみ消される」

 

 ギルドマスターが、冷徹な現実を告げる。

 

「いや、もみ消されるだけならまだいい。最悪の場合、我々の方が『反逆者』『国家転覆を企む危険分子』として、国家権力に追われることになるだろう」

 

 その言葉が、まるで鉛のように重く、全員の肩に圧し掛かってくる。呼吸が苦しくなるほどの重圧。

 

「証拠を出したところで『捏造だ』と一蹴されて終わり。我々は逮捕され、牢に入れられ、最悪の場合……処刑されるか……寄生体を埋め込まれるか……」

 

「そんな……ひどい……あんまりよ!」

 

 シエルが唇を強く噛んだ。その目には怒りと無力感、そして深い絶望が浮かんでいる。

 

「社会とは、往々にしてそういうものだ」

 

 エルウィン博士が、長年の経験から来る苦々しい表情で言った。

 

「力ある者が正義を定義する。真実がどうであろうと、力ある者の言葉が真実になる。そして今、この王国で力を持つ者たちの多くが、敵に操られている。ならば正義は、奴らの側にあるということだ」

 

 我々は巨大な陰謀の核心に触れてしまった。けれど助けを求める先はどこにもない。警備隊も、魔塔も、王宮も、全てが敵かもしれない。いや、敵である可能性が高い。信じられるのは、今この場所にいる仲間だけ。

 

 絶望が、地下室を満たしていく。まるで冷たい霧のように――――。

 

 その時、レオンが動いた。

 

 震える手で涙を拭い、ゆっくりと立ち上がる。その動きは、まるで重い鎖を引きずっているかのようだった。

 

「レオン……」

 

 エリナが、心配そうに眉を寄せる。

 

 レオンは深く息を吸い込んだ。

 

 悲嘆してても事態は悪くなる一方だ。

 

 妹を殺し、仲間を傷つけ、敬愛する主君を操り、この国を蝕む見えざる敵。

 

 個人的な復讐の炎は今、国を救うという大義の炎と重なり、彼の魂の中でかつてないほど激しく燃え上がっていた。

 

 妹のため。仲間のため。この国のため。そして、これ以上誰も失わないために――――。

 

「敵は、この国に巣食う闇……」

 

 レオンの声が、静かに響く。けれどその声には、揺るぎない意志が込められている。

 

 レオンは、仲間たちを一人一人見回した。みんな、疲れている。絶望している。けれど、心はまだ折れていない。その目には、戦う意志が残っている。

 

「――上等だ」

 

 レオンの唇が、僅かに笑みの形を作る。それは悲しみを湛えつつも挑戦的な笑み。

 

「ならば僕たちが、この腐りきった国を、悪意の全てを、ひっくり返してやろう!」

 

 その言葉が、部屋に響き渡った。

 

 

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