潜在力SSS級の『訳あり美少女たち』を拾ったら懐かれたので、神スキル【運命鑑定】で大陸最強に育成し、俺を追放した連中に『ざまぁ!』します 作:月城 友麻
その時――。
ミーシャが優雅に手を口元に当てた。
「それなら、『アルカナ』はいかがでしょう?」
聖女の微笑み。だが今日のそれは、仮面ではない。
「へ?」「アルカナ?」「ほう……」
皆が一斉に振り返る。
「古い言葉で『秘密』『神秘』という意味ですわ」
ミーシャが金髪を優雅にかき上げる。
「タロットでは、運命のカードとも呼ばれています」
空色の瞳が、神秘的な光を宿す。
「まだ誰も知らない、私たちの本当の力……」
ミーシャはエリナを見る。
「隠された才能……」
ルナを見る。
「秘められた可能性……」
シエルを見る。
「そして何より――」
レオンを見つめる。
「自分の運命を、自分の手でめくっていく――まさに、私たちにぴったりではありませんこと? ふふっ」
ミーシャは自信を映す微笑みを見せた。
シエルの碧眼が、子供のように輝く――。
「アルカナ……運命のカード……」
ルナが両手を胸の前で組む。まるで祈るように――。
「願うんじゃなくて、掴むための名前……」
エリナが、しみじみと呟く――。
「『四つ葉のクローバー』は、もう卒業なのね……」
少し寂しそうだが、その瞳には新たな決意が宿っていた。
「いいね! どう?」
レオンが皆を見回す。
四人が、それぞれに頷いた。力強く、確かに――――。
「よし!」
レオンがこぶしをグッと握った。
「僕らは『アルカナ』だ! 輝く未来を、この手で勝ち取ろう!」
「やったぁ!」「いい響きね」「決まりっ!」
「ふふっ、良かった……」
ミーシャが本心から微笑む。
五人は顔を見合わせ、そして同時に楽しそうに笑い出した。
明るい、希望に満ちた笑い声が店内に響く。
『四つ葉のクローバー』という願いは、『アルカナ』という意志へと昇華したのだ。
その瞬間、レオンの視界に文字が浮かんだ。
【スキルメッセージ:運命のカードが切られた】
【新たな物語が始まる】
◇
店を出た一行――――。
「さて、次は各自装備の一新だ!」
レオンの宣言に、ルナは反射的に金貨の包みをキュッと抱きしめた。温もりすら感じる重さ――初めて手にした、本物の成功の証。
「嫌よ! せっかく手にした大金なのに!」
頬を膨らませる姿は、宝物を取り上げられそうな子供のよう。
エリナも黒曜石のような瞳を潤ませながら、小さな拳をぎゅっと握る。
「こ、このお金……全部使えっていうの……?」
震え声には、今まで味わってきた貧困への恐怖が滲んでいた。
レオンは優しくため息をつき、二人の顔を交互に覗き込む。その翠の瞳に、温かな光が宿っていた。
「キミたちは成功したくないのか?」
「そ、それは……」「……」
二人の少女は唇を噛んで俯く。答えは分かっているのに、過去の恐怖が邪魔をする。
シエルも碧眼を曇らせて呟いた。
「でも、全部は……」
「成長したくない、いつまでも底辺でいいなら好きに使えばいい」
レオンの声は厳しくも、その奥に確信が満ちていた。
「でも、少しでも早く栄光をつかみたいなら――ここは悩むところじゃないぞ? ね?」
しかし、三人はうつむいたままだ。
沈黙が流れる中、ミーシャが優雅にくすりと笑った。
「私は買える一番高いホーリーロッドを買うわよ? ふふっ」
金髪を翻し、聖女の仮面の下で本物の期待に瞳を輝かせる。
「さすがだな……。金貨四十枚なんて、これからいくらでも稼げるんだ」
レオンが力強く断言する。
「『アルカナ』を信じてくれ」
その言葉に、何かが弾けた。
エリナ、ルナ、シエル――三人は顔を見合わせる。そして、エリナの黒い瞳に、初めて子供のような輝きが宿った。
「分かったわよ! パーッと行きましょ! パーッと!」
口を尖らせながらも、その声は弾んでいる。復讐に染まっていた少女が、初めて見せた年相応の表情。黒髪を翻して歩き出す背中は、まるで新しい冒険へ飛び出す雛鳥のよう。
「少し足りないくらいなら、いくらでも補填するから――」
「あら? いいの?」
ミーシャが悪戯っぽくレオンの顔を覗き込む。空色の瞳がきらりと光った。
「あ、も、もちろんあくまでも少しだぞ。こっちだって予算が……」
慌てるレオンを尻目に、ルナが突然叫んだ。
「じゃあ、早い者勝ちね? それーっ!」
赤髪を風になびかせ、小さな体で全力で駆け出す。その姿は、魔力暴走の恐怖なんて忘れたかのように軽やかだ。
「あ、ずるーい!」
シエルも銀髪を躍らせて追いかける。
「おいおい! 予算があるんだよぉぉ!」
レオンが慌てて追いかける。でも、その声は喜びに満ちていた。
夕日に赤く染まる石造りの街に、五人の笑い声が響き渡る。
路地裏で泣いていた少女たちが、希望に向かって駆け出す。その姿を見守る夕日は、まるで新しい物語の始まりを祝福するかのように、優しく輝いていた。
『アルカナ』の本当の冒険は、この瞬間から始まったのかもしれない。