奈落の底から星を見る   作:エヴォルヴ

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今回ポケモンがカキシルスしか出てこないポケモン二次創作があるらしい。

あと更新速度とクオリティは期待するな。いつものことだ。


アビスと比べたらどの地方も平和

 カロス地方の、結構大きな街。

 比較的裕福な家に生まれ育った僕は、人とポケモンが一緒に暮らしているところを見ているのが好きだった。

 

 形も、大きさも違うけれど、人とポケモンが一緒にいる、というのは愛が必要だ。愛が無ければ信頼関係が生まれることがないだろうから。血の繋がりもない者と絆を紡ぎ、その絆を深めるには愛があってこそだ。

 

 けれど、愛だけでどうにかなるほど、世界は甘くないのが現実。愛があっても、知識がなければ病気や大怪我に見舞られた人やポケモンは助からない。老衰ではなく、怪我や病気で離れ離れになってしまった人とポケモンを、僕は幼い頃からずっと見てきた。だからこそ思った。自分がどんな病気も怪我も治せる医者になろうと。

 

 好きこそものの、とは言うけれど、僕はあまり要領がいい方ではなかった。人間の医者になることだけでも大変なのに、ポケモンの医者にもなろうとしていたのだから当然だけれど。人間は基本的に構造が一緒だ。けれど、ポケモンは違う。種類によっても、タイプによっても────進化しているか否かによっても、構造が全く異なっている。

 

 僕よりも頭のいい幼馴染にも付き合ってもらって、ひいこら言いながら、なんとか単位を取り、資格を取った。僕以上の速度で走っていく幼馴染の背中に追いつくために若干の飛び級もした大学を出て、どこかのポケモンセンターで下積みでもしようかと考えていた頃。気付いたら街を飛び出していた幼馴染からとある場所について話を聞いた。

 

 アビスと呼ばれる、特殊な力場を放ち続ける謎の大穴についてだ。

 

 そこには、姿は同じなのに全くの別物ではないかと思うような進化を遂げたポケモン達が築く独自の生態系や、僕達の知識ではどう足掻いても到達できないような超高度な文明を感じさせる『遺物』と呼ばれるものが眠っている。しかしアビスは潜るならともかく、昇る際に『上昇負荷』と呼ばれるものが付与されるため、生還するのにも一苦労だという。

 

 そんなアビスのポケモンや、遺物を求めて潜っていく命知らずな冒険者達を『探窟家』と呼び、彼らと彼らのポケモンを含めて、重傷を────社会復帰が難しいレベルの怪我を負う、もしくは遺体の状態で帰ってくることが日常茶飯事であると。

 

「アビスの探窟家とポケモンの死傷率。何とかしたいですよね」

 

 だからこそ、僕に話を持ってきたらしい。人間も、ポケモンも治療できる僕に、アビスの探窟家と彼らのポケモンの主治医になってほしいと。

 

 僕としてもその提案は願ってもない提案だった。人も、ポケモンも助けることができるならやらない理由はない。

 

「そうだね。話を聞く限り、いくつかプランは用意できると思う」

 

「素晴らしい。やはり君にこの話を持ってきたのは、間違いではありませんでした」

 

 僕にアビスの話を持ってきた幼馴染に連れられて、希望と絶望が同居しているアビスに訪れた僕は、それはもう死ぬ気で────何度か死ぬかと思った────医者として奔走した。一人でも多く、一匹でも多く探窟家とポケモンを救うために。

 

 幼馴染と、彼が率いる集団が用意してくれた遺物で自分の体を色々弄繰り回してみたり、自分で見つけた遺物を埋め込んでみたりしつつ、提示したプランを実践していった。けれど、足りない。設備も、道具も、人手も、ポケモンも。足りない。足りなすぎる。知識も足りない。技術も足りない。それでも諦められないのは僕が度を越えた馬鹿だからか。

 

 提示したプランで探窟家とポケモンの死傷率を3割削減できたのは、アビスに来てから1年が経過した頃。僕や幼馴染の組織、アビスに来ている探窟家の実力者達が話し合って作った制度を施行して、どうにかやってみせたけど遅すぎた。もっと早くできていればもっと多くの人やポケモンを救えたはずだ。言っても仕方ないことではあるが、そう思ってしまう。

 

 それからまた1年経過した頃、僕も幼馴染もお酒を飲める年になっていた。

 

「長かったような、短かったような……でも、悪くなかったこの数年間に」

 

「ええ。得難い経験を積むことができた、この数年間に」

 

 遅くなったけどお酒が飲める年になったことを祝って、アビスでは中々手に入らないお酒をグラスに注いで乾杯した僕は、幼馴染と笑う。

 

「ひと段落したとはいえ、やることは山積みだよ」

 

「ええ。未だに笛を持たず、認可を得ることなくアビスに入り、救助される事例が後を絶ちません」

 

「まぁ、気持ちは分からないでもないけどね……」

 

 独自の生態系を築き上げ、しかもとんでもなく強いポケモン達が生息しているアビスという環境は是非とも捕まえたい、自分がどれだけ通用するのか試してみたいと思う気持ちは分からないでもない。ちゃんと許可取って笛を貰うまでには、まあまあ長い期間の講習を受けないといけないから、面倒くさいと思う人や、自分の実力に自信がある人達がこっそりと忍び込む事例が結構ある。基本的には地上の近くに拠点を作っている一団に見つかってそのまま講習行きが多いけど。

 

 稀に見つかることなく下に潜って、大怪我したところを他の探窟家達に発見されて救助される事例もある。正直アビスという環境を舐めているとしか思えないけれど……実力を試したいという気持ちも分からないわけじゃないんだよ。こっそり潜る人達は基本的にバトルタワーみたいな場所である程度勝ち続けてきたような人達が多いから。

 

「ところでボンド」

 

「どうしましたか、カロン」

 

「カロスの話なんだけど……ちょっとヤバいかも」

 

 僕の幼馴染であり、愛を背負い続けている男、ボンドルドの目が光る。

 

「おや……君がそこまで言うとなると、余程のことが起きているようですね」

 

「ミアレシティで野生のポケモンがメガシンカして暴走してる異変が起きてる」

 

「ああ、それは少々気になりますね」

 

「うん。カロスにはあの馬鹿みたいな兵器が眠ってた。あれみたいなのがもう一つあったとは思えないけど……アビスがあるんだ。何があってもおかしくない」

 

 本当に、アビスで過ごしていると、地上でトラブルが発生しても「アビスなんて場所があるくらいだしなぁ」で済ませられるくらいには、アビスという環境は異質すぎる。創造神として語られているアルセウスは何を思ってこのアビスを作ったのやら。

 

「あと増えたポケモンに対してミアレシティが追い付いてない。人も、ポケモンも」

 

 特にポケモンバトルが活発化しているからなのか、ポケモンセンターの人員が全く足りていない。個人でポケモンを回復させることはできるものの、それは体力面の話。ミアレシティの現状を聞く限り、病床が全く足りていないように感じた。今は問題ないのかもしれないが、この先ずっとこのままなんてことは絶対にありえない。

 

「ボンド、僕は一旦地上に戻る。混沌めいているけど、地元だからね。なんとかしたいんだ」

 

「君ならそう言うと思っていましたよ、カロン。なので、こちらでもう手続きをさせてもらいました」

 

「ありがとう、ボンド。ちょっと行ってくるよ」

 

「ええ。君の旅路に、あふれんばかりの呪いと祝福を」

 

「君もね、ボンドルド。君の夜明けに、健やかな生と死の循環を」

 

 入国審査とかはそこまで厳しくないけど、色々申請出しておかないとな。地元に帰るだけなんだけれども、本当に色々あったからなぁ、カロスは。……まぁ、色々あったのは他の地方も同じなんだけどさ。

 

「えーと、請求書……請求書……請求書……嘆願書……請求書……とりあえず嘆願書以外全部一括払いで。ボンド、君にお手紙」

 

「ああ、それは私ではなく不動卿宛てですね」

 

「ん、じゃあ戻る時に渡してくるよ」

 

 なんで不動卿宛ての手紙が深界五層に来てるんだろうというツッコミは、しない方が吉というものだろう。そういうこともある。

 

「カキシルス」

 

「ん? やあワラギク。今日も元気そうで何より」

 

 ボンドの手持ちの一体であるチオンジェンのワラギクがボンドのサインが欲しい書類を運んできた。

 

「カキシルス」

 

「ええ、僕の分もあるのかい? 数年後まで終わらせてるはずなんだけど……」

 

「カキシルス」

 

「あ、医薬品か。それは僕の管轄だし必要だね。えーと引継ぎ書類だから……ここと、ここと、ここにサイン、っと……」

 

 地上に帰る手続きはボンドが色々やってくれたみたいだけど、僕の管轄だったところには手を付けていなかったようだ。そこら辺がキッチリしているから組織のリーダーを務めているわけだけど。

 ……あ、度し難い犯罪者の臓器とか仕入れてたな。犯罪者のくせに健康的な臓器だから保存して移植するために購入したんだった。膵臓とか腎臓とかは相も変わらず貴重だからね。手に入れる機会があるなら手に入れておきたいよね。

 

「カキシルス」

 

「ん、これで終わりならいいや。ありがとうワラギク」

 

 ワラギクにポフィンをあげて、今度こそミアレシティに向けて歩き出す。ここから地上までに喰らう上昇負荷は……回復封じとポケモンのステータスの二段階ランダムダウンだったっけ。他にもあった気がするけど、それは人間にかかるものだし問題ない。その程度で死にかけていたら僕は白笛になっていないわけだし。

 

「あ、拠点をどうするか決めてなかったなぁ……家はもう取り潰されただろうし……」

 

 その辺りもボンドルド達がやってくれていると嬉しいんだけれど、と思いつつアビスを上へ上へと進んでいく。磁力か磁気か何かをあれこれして見えなくしたラスターカノンも、一極集中極細はかいこうせんも飛んでこない平和なアビスは久しぶりだ。

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 アビスから地上に来て、ミアレシティ行きの船に乗り込んで大体4日。アビスはどこの地方から出ても、3日から4日くらいかかるから仕方ないけれど、海風にも飽きてきた頃にようやく到着したミアレシティ。

 

 市庁舎で仕事用のパスポートとビザ、諸々の書類を確認してもらって、すっかり夜になってしまったわけだが……

 

「うん、とりあえず君達、予防接種からね」

 

 ボンドから借りている装備の一つ、月に触れる(ファーカレス)で捕まえたポケモン達に次々と注射を開始する。なんでミアレシティに来て初日からワクチン注射が始まるのかな……しかも野生のポケモンじゃなくてトレーナーがいるポケモンの。

 

「ポケモンは頑丈だから、ワクチンの1つや2つって軽視する人多いけどさ、大事だよ。健康診断とかもね」

 

「「「ずびばぜんでじだ」」」

 

「うん。泥棒はカートリッジの始まりだよ。気をつけてね」

 

 本当に治安が悪くなっちゃったなぁ、ミアレシティ。




最後のトレーナー達
ポケモンの健康診断やワクチンを疎かにした上、カロンからスリをしようとしてバチボコに説教食らった。

アビスがあっても違和感がないポケモン世界が悪い。そしてポケモンがチオンジェンしか出てないのおかしいだろこの作品。

【戻冥卿】蘇りのカロン
アビス の 探掘家でも 数名しか いない 白笛。
ポケモン と 人間の 両方を 治療できる 稀有な ドクター。
いつも 着ている 白衣と スーツは 彼の 友達から もらったもの。
背負っている フラスコと 試験管からは いつも 薬が 作られている。
皆から 「寝ている ところを 見たことが 無い」 と 言われているが 隙間を 見つけて しっかり 寝ている。
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