ダーウィンズゲーム-千葉事変   作:黒霧 氷

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『シギル』とは?

・ダーウィンズゲームを起動した際、蛇に噛まれたことによって与えられるこのゲームで抗う『進化』で得た力。
誰にも教わらなくても自然に使え、生まれた瞬間傍にあったかの様に操作の技術は肉体に染みている。
万が一、能力で自分自身を傷付けない為にセーフティロックでもあるのだろうか。
それぞれ獣、超人、王、神話とカテゴリーが存在しているとか、していないかもしれない。
また、シギルが存在しないプレイヤーはいない。



game2:『抵抗』

 

「クソッタレ!!」

 

電車から出て、ホームから出て、爆速で追いかけてくるチー〇君から逃げている俺は切符をとっととぶち込んで駆ける。

走らないと死ぬ、いや死ぬから本当は駅の表札なんて飛び越えようとしたけど流石に厄介事とかやだ!

てかなんだよチー〇君!マジで殺す気かよ!俺チー〇君に恨まれる事したか!?してねぇよ!千葉大好きだよ俺!

 

「あれ?今日チー〇君のイベントあったっけ?てかあの男の子誰?」

「さぁ?」

「というかチー〇君かわいー」

 

周りの変な声とか聞く度に“普通におかしいって気付けよ馬鹿野郎!”と思いながら駆け続ける。

脇腹が痛くなるのも時間の問題で、とにかく逃げて逃げ続けなければならない自分に苛立ちを覚える。

ダーウィンズゲーム、サイコパス野郎との戦い、無断欠席している生徒、ダーウィンズゲームからのメール…絶対これは繋がってる!というか、繋がってなきゃ俺は追われてない!

走りながら頭を動かせ、まずは交番に駆け込め!

 

「はぁっ、クソ……!脇腹いてぇ……!」

 

取り敢えず脳内状況整理。

こんな死が待っている中でも冷静な俺、マジで最強。だがまず結論だ。あのゲーム、やはりこんな殺し合いをさせるゲームだとしたらおそらく闇系のサイトかなんかのやつだろ?臓器売買とかで経営を立ててるアラビアかインドネシア系のハッカーキラー集団のサイトとか?

日本語が上手かったから日本側にも関係者が?……

いやそれならもう問題か。じゃあなんだってんだ?

ダークウェブが運営してるゲーム?そりゃ面白いな、早く取り締まれろ。

でなんだ?目的はあれか、やっぱ人間の暗殺?

ターゲット層はスマホを持った人間だと今は断定してるし、おそらくそうなんだろうが……

……高校生を狙っているという事は間違いない。あと!

なんなんだよあのチー〇君は!

 

「着いた……あのー!すいません!」

 

俺が交番に到着すると、すぐに中にいた警察官がたどり着いた。

 

「どうしたのかね君?」

「その、お願いします助けてください!チー〇君の着ぐるみが駅で俺を追いかけてきて……その、駅の監視カメラを見たら分かると思うんですけど!」

「はぁ。君、冗談とかはないんだね?それこそ虚偽の告訴は罪に問われるんだけど……」

「それはそうですけど……あ、これ!鞄なんですけどほら!包丁に刺された痕もありますし!」

 

俺が包丁で突き刺さった痕が残った鞄を見せると、警察官は渋々納得したのか「よし分かった、駅に確認してみよう」という事で話がついた。

本当に良かった、と安心して一息をつく。

……さて、ここなら暫く安全だし考えようか。

俺が追いかけられてる理由がダーウィンズゲームのアプリの仕業だとして。

多くの人間が狙われる可能性が高い、でも俺だけが狙われている理由は……招待か?

だとすると材木座も同じ目に遭っている可能性は高い、少し連絡してみるか。

俺がスマホを取り出すと、何やらメールボックスに何か入ってるのを確認した。

 

『八幡よ!貴様が体調悪くなったと聞いて我がお前の為に用意した激選の動画であるぞ!By貴様の相棒、材木座』

 

おいこれエロ動画じゃねぇか。こっちはオ〇ニー出来る状況じゃねぇんだよ殺すぞ。

……いや、これくらい普通に送ってくれているからひとまず安全って事かな。

 

「あ、こちら千葉駅前交番の車山です、少しお尋ねしたい事がありまして……はい、実はある男子高校生がチー〇君の着ぐるみに追いかけられたと聞きまして。

…え、チー〇君を見た?しかも無賃乗車……

はい、分かりました」

 

ガチャン、という音と共に受話器が切られる。

 

「……どうでした?」

「チー〇君の着ぐるみが君を追いかけたのと、そのチー〇君の着ぐるみが無賃乗車したのは駅員の人からも聞いたよ。取り敢えず被害届作ろうか」

「分かりました」

 

ふぅ、めちゃくちゃ安心するな。やっぱり警察官がいるって大きい。

それにしても、あいつ何処行った?俺が交番に来てから一向に見かけていない……あいつがいつの間にかいたし、かなり怖いんだよな。薄気味悪いというか。

でもまぁ警官なら警棒とか所持してる拳銃あるし大丈夫だろ。

 

「明日に駅の方で詳しい話を聞いてみて、これからこ事を決めようか。書類作ったら家まで送ろう。君の住所は?」

「あ、…………です」

「ああ、あそこか。そこから近いし保護者の方に来て貰った方がいいかな」

「あ、俺の親夜まで帰ってこなく―――」

 

俺が家族の話を出そうとした瞬間。

トスっという音と共に俺の頬に鮮血が飛び散ってきた。

俺が目線を動かしてそれを見る。鮮血の出処は、目の前の景観からだった。

いつの間にか、赤いチー〇君の着ぐるみは俺の近くにいて、しかもいつの間にか持っていた包丁で警官の首を突き刺していた。

いつ来た?というか足音が無かったよな?マジでどうやって警官に近付いた?俺もいくら話していたとはいえ油断していた?それは……

 

全部意味が無い、しかもチー〇君はこっちを見ている。

包丁を持って、こっちに向かってきた。

 

あ、これ

 

死ぬ―――

 

 

 

「逃げ、ろ」

 

 

パァン!という音と共に現実に引き戻され、目の前に近付いていたチー〇君の人形はよろけて横に倒れる。

俺はあまりの恐怖で速攻に離れていく。

警官の方を見ると、首から血が大量に出ていて今にも死にそうと思うくらいの声音なのに。

拳銃を向けてチー〇君に威嚇している。

 

「君は、逃げ、ろ。私が、コイツを……動くな、動けば撃つ、ぞ、着ぐるみ」

 

警官が必死での抵抗で拳銃を前に向けているが、その腕は今すぐにでも落ちてしまいそうだ。

力が抜けたらすぐにでも死ぬ。でも俺の為に頑張っているのは分かる。

俺はこれを見逃しちゃいけない、恩に報いる事は……出来ない……

 

「……ごめんなさい……!」

 

俺が涙目ながらに、思い切り交番から駆け出していく。

クソ、クソ!本当に何なんだよ!なんで警察官すら殺すんだよ!

あのチー〇君、単なる殺し屋サイコパス野郎かと思ったけど全然違う!ただの殺人鬼だぞ!

それになんだ、俺の意識外から来てたのもおかしい。

なんなんだよホント!

でも……でも、逃げ切らないと。

あの人が時間を稼いでるんだ、俺が逃げないと。

絶対に死にたくないし、あの人の分まで生きないといけない。

 

「(クソ、脇腹痛くなってきた……!)」

 

というか何処に逃げろって言うんだ?周りにはレストランとかパーキングとか……

……パーキング?

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 

「(勢いで逃げてきちまったけど、どうするか……)」

 

 

俺が発案したものはこうだ。

このタワー式駐車場を利用して時間を稼ぐ。

まずあいつはこっちの居場所を知らないが、数回に一回程度でアプリでのサーチが出来る。それなら俺がいる場所の特定は出来ないし奇襲はウソになる。

なら一旦止まりながら様子を伺う。 おそらくスマホでしかサーチできないと考えればスマホを見るからそこで移動しよう。結局はあのダーウィンズゲームに引っ張られてるじゃねぇかよ、運命のクソ野郎。

俺が隠れながら壁越しに見ると、やはりチー〇君の着ぐるみがこちらのパーキング側までトコトコと歩いてきた。

クソ、もう来たのかよ……でもビンゴだ。あいつはスマホを持っている……

 

「(とにかくサーチしたんなら待機しなくていいから早くどっか行け……!)」

 

そしてチー〇君が周りを見渡し、俺が裏でガッツポーズをしそうになるがすぐにこちらのパーキングを見てきた。

おかしいだろ!チー〇君の見た目が犬だから動物の臭い探知かよ!

……いや待て、取り敢えず落ち着こう。アプリでサーチが出来ると勝手に判断したがもしかしたら本当にサーチしているのかもしれない。

としても俺がやれる事はここまで引き付けて別の車の出入口から逃走、パーキングエリアから出てまた時間稼ぎだ。

何回もサーチを使われるとなると困るだろう。警察署に逃げこめば安全だ。そこを第一に考えよう。

 

『you get a mail!』

 

「(ば、馬鹿野郎!ふざけんなこんな時に!誰だ!?由比ヶ浜とか材木座ならマジで殺す!)」

 

俺が一度相手のチー〇君を見て、気付かれてない事に息をついてメールボックスを見る。

……ん?

“ダーウィンズゲーム公式からのお知らせ”……?

おい、待て。というか公式からのお知らせ!?

公式が知らせてくる案件って何なんだよ、この殺人の首謀者がと思いながらメールの中身を開くと……

“ハルノ”からメッセージが来ています……?

誰だよハルノって。

 

 

『良かったら手助けしてあげようか?ヒキガヤハチマン君?』

 

手助け?という事に妙に寒気がしてきた体を落ち着かせ、一息つく。そもそも誰だよこいつは。

取り敢えず分かるのは、こいつは俺の状況を知っているのは確定だ。こいつから情報を引き出させるしかない。

それにチャットなら……

 

『助けてくれ!変な着ぐるみに襲われてて隠れてるんだよ!』

『貴女はこれについて何か知ってるのか?』

 

俺が答えてくれることを願いながら祈ってると、通知を即座に切ったスマホが震える。

 

『隠れてても勝てないよ?アプリでサーチされて見つかるし』

 

……サーチ!やっぱりか!

予測はしてたけどやっぱりかよ!

 

『位置がバレた!どうしたらいい!?』

『あの着ぐるみ野郎、いつの間にか死角にいるから全く反応できない!』

 

『それがそいつのシギルだね』

『というか、シギルも知らないなら本当に何も知らないんだー』

 

何呑気そうに語ってやがる、俺はただ訳も分からず巻き込まれただけだが!?

無作為にダウンロードした俺も俺だが、材木座に何かあったら俺が困る。

それだけのつもりだったのに……クソ。

 

『なぁ、俺このゲームやる気なんて更々ないんだ』

『頼む、辞める方法を教えてくれ!』

 

俺が答えを待っていると、それはすぐに帰ってきた。

 

『やめる方法は2つ。

このままくたばって死ぬか、ゲームで生き残ってゲームマスターに聞くしかない』

 

……ゲームマスター?このゲームにゲームマスターがいるのか!?

さぞとち狂った奴なんだろうなきっと、俺は絶対に許したくないし生かしておきたくもない。

一回は顔面をぶん殴るつもりだ。

というか最初の奴は最早諦めろって事だろ!誰がくたばるか!

 

「死ぬ訳には、いかねぇだろ……」

 

ふぅと一息つく。

ああなんか、ため息が多くなってきた。まぁ当たり前だよな……こんな事になってるのだから。

俺が思い付く辺り、まず逃走し続ければ勝ちだ。あいつのシギル?とやらが死角に接近するものだとして。

ん?それならシギルって超能力って事なのか?

おいふざけんなよ!どうなってんだよそれ!この世界はリアル重視じゃなかったのか!?

そんな超加速とか催眠術とかそんなチャチなものじゃなければそんな事出来るか!

……でも、実際やられる。あの警官も俺もそれを体験した。俺は斬られてないけどあの警官は斬られたから。

じゃあシギルの効果範囲を考えろ。サーチがアプリの機能ならシギルの効果は多種多様だ。

だが俺達の死角から出てきたのが引っかかる。

シギルが“対象の死角に移動する”なら辻褄が合うし、俺達より前の交番の扉の近くにいても死角ならテレポーテーション出来たんだろうな。

……この線で行くしかない。まずはあいつを振り切らないと。

 

 

“隠れてても勝てないよ?”

 

 

……分かってる。

だが俺はサーチの方法なんて分からないし自分のシギルも知らない。

だから隠れても勝つ方法がある。

騙すだけだ。

 

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 

トコ、と足元を少なめに立てながら上に登っていく。

クソが。あの警官に腹と足を打たれた所が痛むな……

 

「(さっきのサーチ結果を見ても、ここの近くに逃げ込んでるのは間違いない…)」

「どこだァ!どこにいやがる!」

 

俺が声を荒らげながら周りに叫び散らかすが出てくる気配はない。

残り時間も少ねぇし、ど素人と一回戦目なのに渋てぇ野郎だ。

しかも、ヒキガヤとはな……

何の縁かは知らねぇがお前には死んでもらうぞ。

 

「(隠れるとすると、トイレか上の階……)」

 

クソが。なんでこんなに俺が手こずってる?

“新人殺し”の俺がこんなガキに手こずるとか最悪だろ。

楽して大金稼いで強くなるのがダーウィンズゲームの醍醐味だろうが!

あのガキが無駄に粘るせいか、一銭も稼げなかったし拳銃で足と腹を撃ち抜かれるわ、クソガキが!クソ!

……これもあれも全部あの女が生むストレスのせいだ。

 

 

『それじゃあ、お前は平塚先生と仕事を頼むぞ』

『分かりました。よろしくお願いします』

 

 

あの時から変なんだよ!なんだよあの女教師は!

スタイルがいいし若いからって何でもかんでも俺と一緒に仕事を放り投げてきやがって!

……そのせいで俺は仕事のストレスからキャバクラに通う様になっていった。

酒は好きだったし、

そこで運命の出会いに会ったんだよ!

 

『―――あら、………さんって先生なんですか?』

『そうなんですよこいつ!

体育教師なんですけど熱血系で、昭和バカとか言われてますし……』

『あら、カッコイイじゃないですか!私もカッコイイ先生に授業を教えて欲しかったなぁ。

今度も是非生徒の事とか教えて欲しいです!』

『は、はい……!喜んで、リカさん!』

 

本当にあの人……リカさんは可愛かった!

運命の出会いかってくらいの美人で、あの平塚より可愛げもスタイルも良かったんだよ!

……でもキャバクラって高ぇし、給料日前に平塚のヤツで溜まったストレスが大きくなってくるに連れてキャバクラに行く頻度も高くなっていった。

若手にうるさくするとパワハラだって言われるし、酒を飲んでリカさんと話してねぇとやってられねぇ!

 

『いやー、………さんは公務員でいらっしゃいましたか。公務員の方なら審査の方、まず問題ありませんよー』

 

少しだけ、少しだけ借りていくだけ。

ちゃんと返せばまたリカさんと喋るし酒も飲める!

高ぇけどキャバクラだからな。

だけどよ……

 

『もしもし?………さん!今月分のお家賃まだなんだけど!』

『す、すいません。ちょっと振込み忘れてまして……明日まで待っていただきたいです……』

 

クソが!一月分支払いが送れたくらいで文句言うな!

あの時はホントキツかったな、金がなかったしあの

平塚が変な部活を作るわ!

本当に禿げる思いだったし、金もどんどん少なくなって行った。

街金ももう借りれる所がないし……そんな時に出会ったのが!

ダーウィンズゲームだよ!

俺の知り合いの先生仲間がリカさんの店を進めてくれたのは嬉しいが、そいつを俺を殺しにかかってきたんだよ!

まぁダーウィンズゲームのメールアドレスを送ってくれたのは最高だったな。

ヤベェんだよ!1ポイント10万が簡単に振り込まれてる!これならリカさんとも飲みに行けるし!

金がありゃ何でも出来る!金はなくなるけどまたポイントを稼げばいい!

 

 

「だからこそ―――本当にガキには感謝してるぞ」

 

勝手に言わせてもらうが、ポイントを稼ぐ為に先生である俺がガキを殺すのは少々いただけないが……

 

「サーチ使って……やっぱここにいるかぁ!出てこいよォ腰抜ぇ!」

 

すまんな、ガキ!警官の拳銃を奪ってホント痛くて殺してしまうのが悲しいなぁ!

カチと拳銃を引くと、腕に響く振動と共に銃撃で俺の着ぐるみ越しでも閃光が飛んでくる。

……あークソ、銃弾を使い切っちまった。

 

「さて、ポイント確認―――」

 

 

「うぉぉぉぉおお!!!!!!!」

 

「なっ」

 

この声!あのガキか!?なんで生きて……

しかもなんだ!着ぐるみの前なのに一切怯んでない!

 

 

「これでも喰らえ、クソ野郎!」

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 

作戦にハマりやがったな!

スマホをトイレの所に置いて、そしてそれがサーチ源なら背後を取れると踏んだが……本当に正解だったな。

そして何より、お前のあっかいその見た目を何とかしてやる!

消火栓の粉はかなり白い。それも相手に大きな痕を付けるくらいに。粉は簡単に落ちない。

 

「これでも喰らえ、チー〇君もどき!」

 

思い切り消火栓の角を使ってチー〇君の頭に向けてぶん殴る。

めり込みと共に中々のクリーンヒット。思い切り打ち放つ。

消化器はそのまま持って、そしてしっかり後退する。だが視界の周りにはいる。あいつは視覚から移動するから死角を潰すエリアにいる。

さぁどうする……

 

「クソ、ふざけんな!ガキが調子に乗りやがって!」

「うるせぇ!…………あ?」

 

なんだ、この声?聞いた覚えが……

 

「“死角なき殺人鬼”!」

「!」

 

消えた!?

いや焦るな!絶対に近くにいる……足音、数歩前。

ゆっくりと近付いて……後ろ!

 

「そこだろ!」

「がぁっ!?」

「オラッもう1回!」

 

ブジャァッと共に消化器を粉ぶっかける。

よし、効いてる!後は少し……何か……

 

「!?」

 

また消えた!?

 

「がっ―――」

 

後ろ、から!?

思い切り頭に衝撃が走ると共に吹っ飛ぶ。めちゃくちゃ痛い……!

シギルの待機時間とかねぇのかよクソ!

片腕を先に出して振り向くと、少し離れているチー〇君の着ぐるみを俺は見る。

次は確実に殺される。マジでクソ野郎だ。

こんな事話している暇なんてねぇのに!

 

「ふざけんな!汚ぇぞ!」

「うるせぇクソガキ!このままぶっ殺してやる!」

 

だがチー〇野郎はこっちに向かってくる気配もない。

ゆっくりとこちらに迫ってくる。

いつから死角から出てくるか分からない……けどこんな所で死ぬ気はない!

俺は―――

 

 

 

 

「―――え」

 

 

 

ダァン!という音と共にチー〇君の着ぐるみ野郎がぶっ飛んでいく。

俺がその現況に視線を向けると、何も知らなさそうな男子と女子のイケたカップルがスポーツカーでチー〇野郎を轢いたようだ。

 

「や、やっべ!おいなんか轢いたって!」

「ちょっと!?というか別に死体とかないし良くない!?」

「そ、それもそうか……どうせいるの高校生のガキだけだし……」

 

ブーンと走り出していくスポーツカーを見ながら、えぇ……と思いながらチー〇野郎を探す。

すると思いの外すぐに見つかって、近くの車の影にまでぶっ飛ばされていた様だ。

俺は自分の腰のベルトを外して、手に持っていた包丁を蹴り飛ばす。そして腕を縛り上げてはい完了。

 

「……てかこいつ誰だ?」

 

俺がチー〇野郎の頭の着ぐるみを外すと、なんとそこにいたのは―――

 

 

「厚木先生!?……ど、どうなってんだよ!?」

 

 

チー〇野郎の正体は厚木先生だ。

えマジで!?ていうか、最初に声を聞いたことがあるような感じはしてたから……無意識に気付いてたのか?

てかなんだよ!自分の学校の生徒を殺してるなんて……

待て、もしかして俺があの時何もしなければ材木座が?

……胸糞悪い話だ。想定したくもないな。

材木座は調子に乗るやつだが、悪いヤツじゃない。

男気は多くないがやる意思はしっかりある。だからこそ、なんかまぁ見過ごせないのもあるな。

 

「う、うぅ……」

「起きたか……厚木先生」

「ひ、比企谷か……」

「お前の顔は知ってるし声も聞いた。包丁は遠くだ。腕も縛ったしこれ以上何もするな」

「く、くそ……」

 

悔しそうな顔を見せながら何とか抗おうとする厚木先生に対して俺は質問を吹っかける。

 

「おい、厚木先生―――お前これまで生徒を手を掛けたってなら教えろ。

あんた自分の生徒にも手を掛けたのか?」

「……あ、ああ、だって金を稼がねぇといけなかったから!全部あのクソ女のせいだ!」

「クソ女……?」

 

俺が疑問に思いながら答えを探そうとすると。

 

 

『Congratulation!!!』

 

 

スマホから愉快な音が流れると共に、俺はスマホを取り出すとそこには“ヒキガヤハチマンの勝利です”と書かれた文字がダーウィンズゲームのアプリ内に出ていた。

何やら色々と出されていたが、取り敢えず勝ったらしい。

 

「あ、ぁ、ウソだ、俺がお前なんかに……ポイントが……全部」

「ポイント?」

「嫌だ、嫌だぁぁぁ!死にたくない!助けて、助けてくれよ!ポイント全損したら俺は―――」

 

そして、バチンという音と共に厚木先生の腕が鋭い刃物で切られたかの様に断面が見え、腕が消失する。

 

「は、はぁ!?」

「た、たすけ」

 

バチン、バチンと連続で音を立てながらどんどんと消えていく厚木先生を見ながら俺は言葉を失ってしまってどんどん後ろに下がっていく。

何よりも恐ろしいのは、バチンという音と共に相手の肉体が消えていくと、そこから断面が見えるという事。

あまりにもグロテスクで、気持ち悪い。

吐きそうにはなった、でもそれより恐怖が勝った。

 

 

「…………」

 

 

最終的に、四角い断面が人がそこにいたかの様に痕を残して厚木先生は消えてしまった。

俺も最終的に、恐怖が勝った体を制御出来ず。

まるで人を殺した様に走り去ってしまった。

 

 

…………そして、俺はこの時知らなかったが。

 

 

「あれ、ヒキガヤ君シギル使わないで倒しちゃった。すっごーい〜」

 

 

“この世で最も厄介な存在”に目をつけられていたという事に。






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