能力ランク:超人級
能力:指定した対象の“死角”に転移する。最大距離1km、クールタイムは2秒。
使用者:チーバくん(厚木先生)
比企谷八幡からのコメント:
「……先生がまさかダーウィンズゲームのプレイヤーなんてな。
正直信じられないが、起こった事だからな……
能力は中々、単純ながら恐ろしい。
死角だけに移動できるキング・クリムゾンって所か?」
「…………」
目が覚めると、自分の部屋だった。
あの後どうやって帰ったんだっけ……何も覚えてない訳じゃないが思い出したくないと体が震えている。
しかし昨日の、それもダーウィンズゲームというものに巻き込まれた事実はそう簡単に消えてくれない。
「クソ!なんなんだよこのゲーム」
スマホを布団に叩きつけながら、頭を抑える。
人が死ぬのを間近で見てしまった。
しかも、特に関わりがないとはいえ俺の知り合いでもある学校の教師。そんな存在があの人殺しゲームに参加しているなんて以ての外である。
こんなゲームに参加すれば警察に相談したくなるようなものだが、そんな気も起きなかった。人を殺したという事実が波のように押し付けられているから。
「……」
目を逸らしても映り込むのは、ダーウィンズゲームの入口であるスマホ。
今の若者はスマホなしでは生きられないと言われるほど、俺も結構こいつを使ってきた気がするが……今日この日を本当に恨む、呪う。
このままじゃまた戦いに巻き込まれて、そして無駄に走って、逃げてまた死ぬ……
「(それは嫌だ!……第一、小町を置いて死ねれるかよ……!)」
仕方なく、スマホを手に取ってダーウィンズゲームを開く。
相変わらず見た目だけはブラウザゲームでありそうなソシャゲである。
しかし、見てみれば色々なものがあるとよく分かる。ルールにガチャ、ステータスにポイント、ランキングにバトル……バトルに関しては手を触れないでおこう。
ガチャ……こんなゲームでもガチャなんてあるんだな。
「どんなのがあるんだ?」
ガチャのボタンを押すと、何ともデフォルメされた翼の生えた蛇がこちらを睨む画像とガシャポンの玉が映されたガチャ画面が現れた。レアアイテムをGETしよう、なんて謳い文句すら付いてるのはソシャゲの皮を被ってるのか。
1ポイント……今のポイントが41ポイントか。
まぁこのゲームの事だ、バトル自体とか能力とかは自前なんだろうが……試しに1連引いてみる。
『レアアイテムGET!』
金色の文字と共にでかでかと強調されたのは、銀色のリボルバー。
なんというか、こういうのって単に“リボルバー”とかついてそうだよな。
湿気てるなぁと思いながらも、一旦メニューに戻ろうとした時に扉にノックがかかった。
「お兄ちゃん、なんか荷物届いてるけど?」
「小町か。ちょっと待ってろ」
扉越しでも俺を安心させてくれた声を聞いて、扉を開けるとkonozamaのダンボールを持った俺の妹である小町が扉の前で待っていた。
相変わらず可愛いし凄い天使、命を懸けても守りたくなるキュートな見た目と兄とは似つかない可憐な妹である。
「はいこれ。何買ったの?」
「さぁ?ラノベだと思うが」
「だよねー、お兄ちゃんラノベかゲームしか買わないもん」
「勉強は割と出来るからな。さ、帰った帰った」
「むー、お兄ちゃんのいけず。小町を甘やかしてくれてもいいんだよ?」
「甘やかすと調子乗るからダメだ」
「むぅ」
むすっとした表情をする小町の頭を撫でながら、「後で出かけるついでにプリン買ってやるからそれで我慢しろ」と言ってやると満足したように小町は自分の部屋に戻っていった。
俺は一旦自分の部屋に戻り、鍵を掛けてダンボールの中身を確認することにした。
「何が入ってんだこれ、まぁkonozamaだから普通ラノベ―――」
絶句した。
銀色のリボルバーと弾丸が、丸々このダンボールの中に入っていた。
「(もうやだこのゲーム、なんなんだよ……!)」
一旦このリボルバーと弾丸は、ベットのソファの下に置いておくとして。
ガチャはもうやめておこう、やるとしても外か小町や両親がいない時。ただそろそろ車とか出てきそうだし引くのもよしておこう。
次に、新着情報に触れてみる。
俺のレベルがアップしたとかだとか言っているが、全然意味が分からない。人生のレベルアップってか?
ふざけんな。
レベルアップの内容は、メール機能が開放されたとかショップとか……
「……そういえば昨日、ハルノって人からメール来てたよな」
ふと、思い出す。
そういえばあの人がサーチのことを教えてくれなかったら間違いなく死んでいた。アプリにサーチ機能があるのは分かったし、シギルとかいう催眠術とかそんなチャチと言えないぐらいの現実をぶっ壊すスキルみたいなのが存在することを教えてくれたのだ。
ダーウィンズゲームの新着情報から辿ると、ハルノと書かれた名前にリンクが埋め込まれていた。軽くタッチすると、戦績やら何やらが見えた。
「……はぁ!?」
ハルノのステータスは衝撃的なものだった。
ランクA4、10戦10勝。無敗だった。
つまりこんな人に俺は助けられてなんならおちょくられた訳だ。
「くそ、からかわれてんのか俺……ただこのなら色々知ってんだろうな。
仕方ない。メッセージでも送ってみるか」
ステータス画面のメッセージからハルノに対してメッセージを打ち込んで送ってみる。
意外とポイント消費とかはなかった。ありがたい限りだが……
『昨日は助けてくれて本当に助かった。もしよければ、色々と教えてくれないか?このアプリの情報だけじゃ分からない事が多くて聞きたいことがあるんだ。
ハルノさんの都合のいい時に返信してくれ。無視してくれても構わない』
「……こんな感じでいいんだよな」
ろくにメールを奉仕部以外とかで使わないから、なんだか他人にメール送るのは結構新鮮味を感じた。
そうして、やれる事をやり尽くした俺はベットに寝転んでスマホの電源を切った。正直疲労とかで手一杯だ。
「(……頼むから、夢であってくれよ)」
――――――――――――――――――――――――――――
そんな一方。
とあるプレイヤーの新規参入は上位プレイヤー……A級ランカー達にとっては少しの騒ぎになっていた。
少なくとも、千葉の都市街の中の少女の1人にとっては。
「あれ、陽乃さん?」
「あ、めぐりんじゃん。どうしたの?」
「試験勉強帰りに買い物ですね」
「いいね〜、私も着いていっていいかな?」
「全然大丈夫ですよ!陽乃さんとなら」
「ありがと〜」
少女は百点満点の仮面の笑顔を浮かべながら、自身の携帯を開く。すると、少女が“最も楽しみにしている”存在からのメールが入っている事に気付いた。
仮面越しに、本心から笑みが浮かべそうになったがそれを抑えてメールを確認する為に“ダーウィンズゲーム”を開いた。
『昨日は助けてくれて本当に助かった。もしよければ、色々と教えてくれないか?このアプリの情報だけじゃ分からない事が多くて聞きたいことがあるんだ。
ハルノさんの都合のいい時に返信してくれ。無視してくれても構わない』
「(へぇ、怪しいのに私に頼るんだ。まぁ何も分からずこのまま死にに行くより私に頼るのは正解だね)」
『それなら、ゲームについて教えてあげようかな。
でもメールで語る気はないんだよね。君のシギルも気になるし、今日の夜22時にこの住所まで来てね〜
千葉県○○市△△△✕✕-✕✕✕』
「これでよし……と」
少女はメールの送信ボタンを押してから携帯を上着のポケットの中に放り込んだ。
少女の気分は、今の上辺を繕う為のお出掛けの気分から幾分から気が楽になった。
「誰からの電話ですか?」
「最近知り合った子かなー、なんというか後輩みたいで可愛いんだよねー」
「あ、もしかして彼氏ですか!?」
「え〜?またまたー、そんな訳ないって。本当のお気に入りだったら教えないよ」
あはは、と軽く笑って少女は今夜の楽しみの為の適当にあしらって準備しに行こうと足速に目的地に向かうのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――
you get a mail!
「ん……」
つい寝てしまった。正直目を向けたくない現実に対して心が疲れていたのかもしれない。
だがスマホの着信音がつい意識を覚ましてしまった。
憂鬱な心持ちで、携帯に届いたメールを確認すると……ダーウィンズゲームからのメールだった。
「今度は……返信かよ」
メールの内容は、教えてやってもいいが俺のシギル?も知りたいし会って見てみたいから今日の22時に千葉県のこの住所まで来いと……
アイコンの見た目、可愛らしい女性だがネカマの可能性もあるし警戒はしておいた方がいいよな……それに。
「こんなクソみたいなデスゲームのプロプレイヤー、頭おかしい奴じゃない筈がない」
材木座やそのクラスメイトを巻き込んで殺していたあの厚木先生もそうだか、このゲームは人を狂わせてしまう可能性もある。
だが、最も怖いのはこのゲームをやめる方法なんて知らないしシギル?とかいう超能力で俺はともかく小町や奉仕部のアイツらに何かあったら……
小町は絶対に守りたい。ついでに、アイツらにも迷惑掛けたらうるさそうではある。
つまり、この話は乗るしかない。乗って様々な事を確認して……今後に対策する。
覚悟は決めた。後は、向かうしかない……
「何を持っていくべきか……」
一番の候補は、今日ガチャで手に入れたリボルバー。
銃の射撃技術なんてゲーセンでよくあるゾンビを撃ち殺す射撃ゲームくらいしかないが、それでもあるだけマシだ。構えてたら勝手に死んでくれねぇかな……
後はガムテープとか、それくらいか。ガムテープで何ができるんだよって話だが……
すぐに準備を整えて、財布を持って部屋から出た。階段を降りながら携帯を確認すると夜の20時。
ナビを見たが40分程度だ。一旦買い物に出かけてもいいかもしれない。
それに……出かけた時に、小町にプリンを買ってやると言ったしな。
だから、本気で生き残ってやる。
死にたくもないし、小町を死なせたくない。
危険になるなら俺一人でいい。孤高のぼっちは危険も慣れっ子だ。
覚悟を決め、家を出ると共に自転車を使って目的地に向かい始めた。
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